2004年1-2月号(Vol.4 No.1)
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2004年1-2月号(Vol.4 No.1)

発売日:2003年12月19日,, ISBN:4-89706-155-5,A4変型判,112ページ


本誌に登場するキーワード


■ 特 集

第1特集 人工タンパク質・ペプチドの威力
創薬,再生医療,バイオナノテクノロジー・・・,
実用化ヘ向けた最新研究に迫る!

芝 清隆〔(財)癌研究会癌研究所〕/企画

●<序>使える人工タンパク質をめざして/芝 清隆

「人工タンパク質」というネーミングがいつ頃から使われだしたのか定かでないが,そこには「狙った機能や性質をもつタンパク質を遺伝子レベルで自由自在にデザイン・創製できるようになりたい」といった生物学者の願いが込められている.1970年代に入ってDNAの化学合成法や変異導入法が確立し,タンパク質を遺伝子レベルで改変し,その影響を調べる実験が本格化した.同時にX線結晶構造解析によるタンパク質の立体構造決定も軌道に乗り始め,このような背景に支えられ1983年の「タンパク質工学」宣言が発表されることになる.タンパク質工学では,天然タンパク質の解析的研究から得られる知識をベースとして,合理的に狙った構造や機能をもったタンパク質をde novoにデザイン・創製することが究極のゴールとして設定された.

●バイオナノテクノロジー
 〜人工タンパク質/人工ペプチド研究のナノ材料分野への応用〜/松井 宏

ここ数年バイオテクノロジーとナノテクノロジーを融合したバイオナノテクノロジーという新しい研究の領域が開発され始めている.これには大きく分けて2つのアプローチがある.1つはナノ材料をメディカルイメージングやイムノアッセイなどのバイオテクノロジーに応用するアプローチ(ナノテクノロジー→バイオテクノロジー)で,すでにいくつものナノ材料がこのような応用に対して商品化されており,多くのベンチャー企業がこの開発をしている.

●人工タンパク質・人工ペプチド研究の再生医療分野への応用/山岡哲二 北川達哉

治癒が不可能なほど大きな損傷を受けた器官や臓器は,人工臓器や臓器移植によって治療が試みられてきたが,長期の代替が困難であったり,ドナー不足や拒絶反応など多くの問題が残っている.そこで,生体や細胞が備えている増殖・再生能力を活用することでその修復をめざす再生医療が注目を集め,精力的に研究されている.再生医療の1つの手法である再生医工学は,生体吸収性スキャホールドと細胞を2大要素とした治療法である.

●創薬に向けた人工タンパク質研究の展開/齊藤博英 芝 清隆

今世紀初頭に達成されたヒトゲノムのドラフトシークエンスの解読と相まって,現在,新規有用遺伝子の探索,タンパク質の機能解析が大規模に進行しつつある.今後数年の間に,さまざまな疾病にかかわる原因遺伝子やその翻訳産物であるタンパク質の性質が解析され,創薬分野に大きな影響を与えることは疑いようもない.本稿では,タンパク質工学から始まる人工タンパク質研究が,現在までどのように創薬分野に貢献してきたかについて概説し,さらに,ゲノム時代における人工タンパク質研究の創薬分野への展開を,われわれが進めている新しいタイプの機能性人工タンパク質創製技術を交えながら紹介したい.

第2特集 大学は見られている!
「実力と個性」を見極める,これからの大学評価

●学生や教員にとって役に立つ大学評価とは
 〜九州大学における調査をふまえて〜 /林 衛

大学院の量的拡大が目標に掲げられた1987年の臨時教育審議会答申以降,大学設置基準の自由化,大学院重点化,自己点検評価・外部評価の導入,競争的研究費へのシフト,21世紀COE,国公立大学の法人化といった一連の「改革」のとりあえずの終着駅として,2004年の春には政府が認証した機関による大学の第三者評価制度が始まる.評価と資金配分が強く結びつくという特徴など,さまざまな問題があるものの,日本の大学評価制度の枠組みができあがる.

●岐路に立つ大学発ベンチャー
 〜数から質を競う時代へ〜/菊本 虔

これまで,各大学の産学連携の活動を把握するために文部科学省などで主として使われてきた指標は,(1)共同研究,(2)受託研究,および(3)奨学寄附金の件数・金額などである.しかし,ここ数年これらの産学連携の活動の状況を示す指標に加えて,具体的な技術移転の実績を表わす指標として大学発ベンチャーの動向が注目を集めるようになってきた.大学から産業界への技術移転の有力な方法として,また,21世紀日本のイノベーションの主要な担い手として,大学発ベンチャーに関心が集まり,その重要性が広く認識されるようになってきたからである.

●国際「競争」化が進む大学評価の世界/米澤彰純

大学評価の世界では,教育と研究の両面で国際連携・競争が進んでいる.筑波大学の加藤毅氏によれば,日本の理学系教員の29%,工学系教員の18%が外国でのポスドクを経験,過去に外国での研究経験をもたないものは理学系で12%,工学系で17%にとどまる.個人による経験の量や質の差はあれ,日本以外の大学や研究所などでの研究・教育に触れることはすでに日常的なことである.日本に限らず各国の大学関係者たちが,優秀な人材確保,よりよい教育・研究環境を求めてしのぎを削っている.

●論文の引用動向からみる日本の研究機関ランキング/宮入暢子

2003年9月末,トムソンISIでは学術論文の引用動向からみたノーベル賞の有力候補者を発表した.医学・生理学,物理学,化学,経済学の4分野それぞれに3組ずつ,合計23名が「2003年以降にノーベル賞受賞の可能性の高い研究者」として挙げられた.このうち,Robert F. EngleとClive W. J. Grangerの2名が,経済統計の時系列分析手法に関する功績を認められ,実際にノーベル経済学賞を受賞した.昨年のDaniel Kahneman(経済学賞)に続いて,2年連続で弊社の候補リストから実際の受賞者が出たことになる.

●大学の産業貢献度と経済的還元度
 〜リコンビナントキャピタル社のデータベース分析〜/出上聡美

30年余りの米国バイオベンチャーの歴史,その成果を考える際,産学連携の枠組みの果たした役割をぬきにして語ることはできない.1980年以降,バイ・ドール法,スティーブンソン・ワイドラー技術革新法などの法律の整備により,政府助成下で行われた発明について,知的所有権が大学に帰属する枠組みが確立され,技術移転政策は各方面で成果が表れている.なかでもとりわけ,医薬品開発,バイオテクノロジー分野では,より活発化した産学間の知的財産移転が米国の競争力に著しく貢献した.


新連載

IPOまでの道のり
第1回 起業するのにいくらお金がかかるの ?!
【坂井知倫】

東京大学医科学研究所の教授である中村祐輔氏が取締役を務める「オンコセラピー・サイエンス株式会社」が平成15年10月31日に東京証券取引所マザーズへ上場承認されました.同社は,平成13年4月6日に設立された株式会社であり,IPOまで約2年半という短期間で株式公開を果たしたことになります.今後も研究者の研究成果を事業化することを目的とした会社が短期間で株式公開を果たす可能性があります.では,研究者が自分の研究成果によって会社を設立し,株式公開を果たすためには,どのような道のりがあるのでしょうか?このコラムでは「IPOまでの道のり」と題して,会社設立の手続きから株式公開までを6回のシリーズによって連載していきます.

シリコンバレー転職騒動
Vol.1 突然のレイオフ
【赤間 勉】

私は2001年に,日本からシリコンバレーのバイオベンチャーに転職しました.ところがその後1年半ほどたったところで,レイオフに遭ってしまいました.世の中の景気の悪化に伴いある程度予想されたこととはいえ,それまでの「明日は我が身」的な雰囲気から一転,本当に「わが身」のことになってしまったわけです.そこから始まったシリコンバレーでの転職活動は初めてのことばかりで,驚くこともたくさんありました.そして多少の不安のなかにも新しい経験を楽しんでいる自分を発見し,日々の行動を記録することにしたのです.そんな転職活動の顛末に加え,それに伴って感じたことなどを,これから1年間に渡り紹介させていただく予定です!

ウェット&ドライ〜もっと活用!バイオインフォマティクス
その1 一歩進んだ配列類似性検索
【坊農秀雅】

バイオインフォマティクスを生物学の世界とは別の世界のものだと意識して腫れ物に触るように扱ってはいないだろうか? ブラックボックスとして扱って利用するところから一歩進んで中身をわかる範囲で理解し自分の研究に役立てる,そんなスタンスでバイオインフォマティクスに接してみてはどうだろう.その水先案内としてこの連載がきっかけになれば,と思う.今回はその第1回目として,日常的によく用いられる配列類似性検索に関して触れてみたい.


インタビュー

Bio venture interview
タンパク質試薬でチャンスを掴む!
【Jim Chamberlain(BioSource社創設者),文/荒川 力】

Jim Chamberlain氏はBioSource社を立ち上げた初代社長である.彼との付き合いは私がAmgen社に入社した1984年に遡る.社長の地位を降りてからすでに2年程になる.BioSource社の立ち上げの話を伺うためにBioSource社まで来ていただいた.話を始める前に私なりの日本におけるバイオ,試薬ビジネスの状況,日本政府がベンチャー育成に力を入れだしたこと,それを背景にしてBioベンチャー誌が創刊されたことなどを説明をすると,Jim Chamberlain氏は強い関心を示された.


ニュース&レポート

技術経営の人材育成をめざすMOTプログラム,プレスクールでお目見え
【編集部】

基礎研究で新しい発見がうまれたとしても,それを製品化するには適切なプロセスを経なければならない.開発の長い道のりにおいて,技術に対する理解はもちろん,ファイナンス・アカウンティング・マーケティング・IPに関する広範な知識と経験をもった人材がリーダーとしてプロジェクトを管理する必要がある.たとえば基礎研究の結果,薬になりそうな化合物が見つかったとしても,これを薬剤として販売するには,開発から臨床試験までの10年にもおよぶ事業計画を立て,特許取得,資金調達,契約,認可などをアレンジする必要がある.

EU UPDATE
Vol.6 「BIOTECHNICA 2003〜国際化の波に乗る〜&化学製品に関するEU新規制」
【Fred Elgersma】

2003年10月7日から9日までの3日間,国際バイオテクロノジーメッセであるBIOTECHNICA 2003(標語は“Biotech Meets Business”)がドイツ・ハノーバーで開催された.BIOTECHNICAの最近のキーワードは国際化であった.バイオテクセクタで進行中の整理・統合の動きを受けて,本年のBIOTECHNICAは30カ国から12,000人の来場者を集める盛況であった(前回2001年度は13,167人).来場者の22%がドイツ国外からであり,前回(18%)に比べて国際化が進んだといえよう.


リサーチ&テクノロジー

テクノ・トレンド

金ナノ粒子を用いた遺伝子診断法の開発【佐藤香枝/前田瑞夫】

ナノメートルサイズの金コロイド粒子を用いて,目視による簡便明瞭なDNAの一塩基変異検出法を開発した.一本鎖DNAで金ナノ粒子を修飾すると粒子はNaCl水溶液中でも安定に分散するが,このDNA金ナノ粒子の分散液に相補的な検体DNAを添加して粒子表面で二本鎖を形成させると,DNA金ナノ粒子が自発的に凝集して系は速やかに青色に変化し次第に沈殿が生じる.

トピックス

  • ◆ジーンディスカバリー
    バイオインフォマティクスによる新規生理活性ペプチド,サリューシンの発見
     【七里眞義】

    ◆ナノテク
    自己組織化単分子膜
     【古川一暁】

    ◆バイオインフォマティクス
    かいぎより始めよ
     【有田正規】

    ◆工学
    1000$ゲノム解析への道(1)
     【養王田正文】

    ◆環境
    免疫化学測定法(ELISA)
    抗原・抗体反応に基づく環境汚染物質の測定法
     【大川秀郎】

    ◆パテント
    再生医療等関連技術が特許権付与の対象に特許庁,審査基準の改訂へ
     【森本久規】

レクチャー

大学法人化前夜の技術マネジメント講座
第3回 歳出・歳入の世界から収入・支出の世界へ
〜多様な連携モデルで企業・地域との信頼確立を〜
【谷口邦彦】

この講座では,「国立大学法人化は大学のValueを高めていくチャンスへの挑戦」と位置づけて,法人化の概要,知的財産への取り組みについて述べてきた.2004年度の「国立大学法人化」に向けて2003年10月1日には,大学改革の一環として10大学が統合によりそれぞれの歴史を閉じて新たな大学として再出発し,第2回講座で紹介した「大学知的財産本部整備事業」に基づく本部が事業採択を受けた大学で発足している.また,2003年10月には文部科学省の要請に基づき来年度からの大学運営の中期目標が提出されるなど国立大学法人化に向けた準備は着実に進められている.今回はこのなかで資金の確保,とりわけ技術マネジメントにかかわる研究資金の確保について考えることとしたい.

特別レクチャー
医療行為の特許性について
【廣瀬隆行】

医療行為に特許が与えられるかどうかについて,特許法には何ら規定されていません.従来,医療行為は,審査基準に基づいて「産業上利用できる発明」(29条1項柱書)に該当しないとして特許されませんでした.しかしながら,平成14年4月の東京高裁判決注をきっかけに,医療業は産業に該当するのではないかという議論が起こりました.このような事情のなか,平成15年8月に医療行為の特許性に関する審査基準が改訂され,特許される対象が広がりました.この審査基準は,平成15年8月7日以降に審査される出願に適用されます.以下では,改正された医療行為に関する審査基準を説明します.

Biopreneur バイオ起業家論
第3回 マーケティング,ニッチマーケティング,科学者の異業種参入
【Ryan Baidya Miyuki Shiratani】

起業家としてのマーケティングはバイオベンチャーの成功に不可欠である.そして大学で基礎研究をスタートさせた研究者は,日常的にマーケティングを行っている.すなわち,興味をそそる研究課題について教授と交渉したり,学会やセミナー発表で同業者へ応対したり,資金調達や奨学金を得るために助成金交付機関を説得する際に,自身の才能,知識,技量,人柄を売り込みの材料にしている.研究者が行うマーケティングは,その専門分野に特化した製品(研究結果)をきわめて精通した顧客(高度な知識をもった同業者など)相手にと,はっきり限定される.バイオビジネスで有効なマーケティング手法を“ニッチマーケティング”という.さらに,バイオベンチャーにおけるマーケティングとは,異なる規範から成り立つ学界とバイオビジネスの自然な異業種交流といえよう.

コラム

アメリカン・スピリット
Vol.7 米国と日本の政府援助資金(後編)
【勝山 巖/荒川 力】

今回は,米国と日本の公的補助金制度に関する話の後編である.米国の事例と比較して日本の公的補助金制度の長所や短所などについて,最近の制度改革の話題などを交えて紹介することにしたい.
 勝山がかかわった経済産業省の補助金には,米国のSBIRとは違い個人では応募できない(この個人というのは会社内の個人で,その会社が個人のプロジェクトを遂行する体制をもっていることが前提である.個人がSBIR資金をもとに会社をゼロから始めることはできない).対象は会社である.おそらく日本で個人に対して出る補助金は,文部科学省,厚生労働省の大学教官と非営利団体職員を対象とした科研費,厚生研究費だけだろう.

投資対象としてのバイオ産業 〜日本のバイオの現状は〜
勉強頭脳と研究頭脳(後編)
【坂口謙吾】

勉強頭脳と研究頭脳は,1つの尺度で規定できるような能力ではなく,別物であると考えた方がよいこと,そして,職業的には,両者がいつも同時に要求される分野と,主としてどちらか片方の頭脳が要求される分野に大別されることなどを「勉強頭脳と研究頭脳」(前編)で述べた.バイオビジネスにおける新製品の開発は,主として研究頭脳の持ち主の能力に依存しているが,過去40年の右肩上がりの高度成長のおかげで,選別が簡単な勉強頭脳的な能力ばかりがもてはやされ,このような研究頭脳の要求される分野が日本では衰亡してしまっていることが問題である.


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