実験医学 2008年10月号 Vol.26 No.16

異常タンパク質蓄積とアルツハイマー病の治療戦略

Proteolysis機構の解明と,バイオマーカーによる診断法確立への挑戦

岩坪威/企画
定価 1,800円+税 2008年9月 発行
B5判 125ページ ISBN 978-4-7581-0040-3


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アミロイドβやタウなどの異常タンパク質の蓄積・凝集・分解・除去のメカニズムから,神経変性疾患発症までの機構とバイオマーカーやイメージングを駆使したアルツハイマー病診断・治療への取組みの最前線をご紹介!

《企画者のことば》
アルツハイマー病は,高齢者から,その尊厳と生存の基盤となる認知機能を奪う難病である.過去四半世紀の病理生化学,分子遺伝学の進歩により,アルツハイマー病の病因における異常凝集タンパク質―特にβアミロイド―の意義が確立され,その発症カスケードが明らかにされた.そしてβアミロイドの産生・代謝機構を標的として,根本的治療薬の臨床治験が試みられる時代が到来した.本特集ではアルツハイマー病の病態メカニズムと治療について,βアミロイドの産生・代謝・毒性機構を中心に,画像・バイオマーカーとしての意義をも含めて,多面的に議論を深めたい.

特集

異常タンパク質蓄積とアルツハイマー病の治療戦略

Proteolysis機構の解明と,バイオマーカーによる診断法確立への挑戦
企画/岩坪 威
企画者の言葉【岩坪 威】
アルツハイマー病は,高齢者から,その尊厳と生存の基盤となる認知機能を奪う難病である.過去四半世紀の病理生化学,分子遺伝学の進歩により,アルツハイマー病の病因における異常凝集タンパク質―特にβアミロイド―の意義が確立され,その発症カスケードが明らかにされた.そしてβアミロイドの産生・代謝機構を標的として,根本的治療薬の臨床治験が試みられる時代が到来した.本特集ではアルツハイマー病の病態メカニズムと治療について,βアミロイドの産生・代謝・毒性機構を中心に,画像・バイオマーカーとしての意義をも含めて,多面的に議論を深めたい.
γセクレターゼ:膜内タンパク質分解と治療【富田泰輔】
γセクレターゼは,A P P の膜内配列を切断することでA β 産生に関与する,重要なアルツハイマー病創薬標的分子である.そこで現在では,このAβ の産生や蓄積の阻害をターゲットとした原因療法的なAD 治療・予防法の開発が多くの製薬企業によって進められており,最近それらの成果が報告されるようになった.特に基質を複数カ所で切断するという性質から,単純なγ セクレターゼ阻害剤のみならず,切断活性を調節するモジュレーターも治療薬となりうる可能性が提示されている.さらに疎水性環境に存在するペプチド鎖を加水分解するという類例のない特徴についても,構造生物学的解析を含めて徐々に明らかにされつつある.本稿においてはγ セクレターゼ活性の制御によるアルツハイマー病治療薬の可能性についてまとめてみたい.
可溶性アミロイドβオリゴマーの毒性とアルツハイマー病【山本圭一/富山貴美/森 啓】
アルツハイマー病は可溶性Aβオリゴマーによるシナプス機能障害ではじまると考えられている.オリゴマーにはいくつかの形態があるが,12 量体以上のオリゴマーには,シナプス抑制ばかりでなく,神経細胞死を引き起こす作用もある.われわれは最近,家族性アルツハイマー病患者から新しいAPP 変異(E693Δ)を同定したが,この変異はオリゴマー仮説を支持する興味深い性質を有していた.オリゴマー仮説に基づいたアルツハイマー病の新しい診断・治療法の開発が期待される.
アミロイドβ 分解を標的とするアルツハイマー病の予防・治療戦略【斉藤貴志/岩田修永/津吹 聡/西道隆臣】
アルツハイマー病(A D)は,脳内でのアミロイドβ ペプチド(A β)の蓄積を発症の引き金にしていると考えられている.脳内Aβ の蓄積は,認知機能障害を呈するはるか以前からはじまっており,現在Aβ の産生抑制・分解促進法・凝集抑制法が,A D の予防・治療法の標的とされている.本稿では,A β の分解促進法の探索に着目し,特に脳内Aβ 分解に携わる主要プロテアーゼであるネプリライシンの活性制御機構について,最新の知見を取り上げたい.また,Aβ が受ける翻訳後修飾等によって,その分解耐性に変化が生じる機構についても紹介したい.
アミロイドβ 免疫療法:メカニズムと臨床応用【松岡康治】
アミロイドβ(Aβ)は,アルツハイマー病の病理学的特徴の1つである老人斑の主要構成成分である.したがって,Aβ を低下させることは,有効な治療戦略の1つと考えられている.抗Aβ 抗体は,脳内Aβ を顕著に低下させ,認知機能を改善することがアルツハイマー病モデルマウスで示され,そのメカニズムの解析が進んでいる.同時に,臨床応用をめざした臨床開発も進められている.本稿では,発見から現在に至るメカニズムの解析ならびに臨床応用の試みを概説する.
細胞内異常タンパク質蓄積と神経変性(TDP-43 とタウ)【野中 隆/新井哲明/長谷川成人】
多くの神経変性疾患では,疾患特異的な特定のタンパク質の凝集体が神経細胞内に認められ,その形成と神経細胞死の関連が注目されている.タウ,α シヌクレインやTDP-43 などの凝集体の主要構成タンパク質の多くは,通常,細胞内では可溶性タンパク質として存在するが,何らかのきっかけにより異常性を獲得し,長い時間の経過とともに細胞内で凝集すると考えられている.これらの蓄積したタンパク質の多くが,リン酸化,ユビキチン化や断片化などの翻訳後修飾を受けていることが判明した.このような翻訳後修飾は,神経変性疾患に特異的な凝集体に蓄積するさまざまなタンパク質に共通にみられる現象であり,このことは,発症に至る共通のメカニズムが存在する可能性を示唆する.
脳イメージングとバイオマーカーによるアルツハイマー病の臨床評価【樋口真人】
アルツハイマー病のバイオマーカーは発症機構を含めた病態理解,診断法確立,治療薬開発のいずれにおいても有用であることが求められる.中核病理に関連するマーカーとしてはアミロイド原性分子蓄積の脳脊髄液ELISA定量および脳イメージングによる可視化が実現しているが,上記の要請に対応するためにはバイオマーカーの変化やイメージング所見が生体のどのような病態に対応するのかを把握する必要がある.病態上の結び付きが明らかになれば,脳イメージングプローブと末梢バイオマーカーの両者を並行して開発できると期待される.

トピックス

カレントトピックス
分裂酵母Pot1-Tpp1による染色体末端保護とテロメア長制御【三好知一郎/石川冬木】
細胞間接着によるアンジオポエチン1/Tie2系の空間的・機能的制御【福原茂朋/望月直樹】
新規核小体複合体eNoSC によるエピジェネティックなrRNA転写制御機構【村山明子/大森一二/柳澤 純】
リポソーム内に再構成された細菌の分裂装置“Z-リング”【大澤正輝】
News & Hot Paper Digest
PPAR δとAMP キナーゼを活性化する薬剤は運動効果をもたらす
一錠で二度おいしいエノキサシン
フィルム状の外科手術用癒着防止材料
高脂血症治療薬Vytorinの新試験結果
自分のDNAが見えたよ!

連載

クローズアップ実験法
酵母を用いた真核生物膜タンパク質の発現と精製【伊藤圭祐/白石充典/菅原大嗣/田中里枝/岩田 想】
論文英語ライティング
第3回 主語―動詞の骨格のつくり方【河本 健】
疾患解明 Overview
大動脈瘤の分子病態と研究の可能性【青木浩樹/吉村耕一/松崎益徳】
私の発見体験記
グラニュフィリン発見の体験記【泉 哲郎】
プロフェッショナル根性論【最終回】
第10回 プロフェッショナルへの成長の道【島岡 要】
ラボレポート留学編
Hot Research in the Hottest City in the World―Skirball Institute of Biomolecular Medicine【栄川 健】

関連情報

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