実験医学 2009年12月号 Vol.27 No.19

genetics/epigeneticsから見えてきた

ゲノム機能の進化

トランスポゾン・生存環境によるゲノム構造変化から,発生分化を司るエピゲノム機構まで

石野史敏/企画
定価 1,800円+税 2009年11月 発行
B5判 133ページ ISBN 978-4-7581-0054-0


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外来配列・生存環境によるゲノム機能の改変が,エピジェネティクスを制御し,生物進化を推進するダイナミズムに迫る!生殖様式に関わるインプリンティング機構から,化学受容体遺伝子ファミリーの進化系譜まで.

《企画者のことば》

生物進化 (系統発生) の問題を解く鍵は,個体発生のメカニズムにある.多様な生物がみせる個体発生の特徴は,その生物のもつゲノム機能に基づいている.そのような生物を特徴づける新規のゲノム機能はどのように獲得されるのか? 生物進化をゲノム構造と機能の変化ととらえることにより,この偶然と必然がおりなす歴史的現象の謎にどこまで迫れるのか? ジェネティクス・エピジェネティクスを統合したゲノム機能科学の可能性を試したい.

特集

genetics/epigeneticsから見えてきた
ゲノム機能の進化
トランスポゾン・生存環境によるゲノム構造変化から,発生分化を司るエピゲノム機構まで
企画/石野史敏
概論:「ゲノム機能」からみた生物進化のダイナミクス―生物が進化するときゲノムに何が起きるのか?【石野史敏】
生物進化 (系統発生) の問題を解く鍵は,個体発生のメカニズムにある.多様な生物がみせる個体発生の特徴は,その生物のもつゲノム機能に基づいている.そのような生物を特徴づける新規のゲノム機能はどのように獲得されるのか? 生物進化をゲノム構造と機能の変化ととらえることにより,この偶然と必然がおりなす歴史的現象の謎にどこまで迫れるのか? ジェネティクス・エピジェネティクスを統合したゲノム機能科学の可能性を試したい.
クロマチン修飾による発生遺伝子系の異時性進化【長谷部光泰/宮崎さおり/岡野陽介】
発生過程の進化において,似たような遺伝子ネットワークを使い回すことによって複雑な発生過程が生じてきたことがわかってきた.従来,動植物ともに転写因子ネットワークの進化によってこのような進化が生じてきたことが知られている.一方,クロマチン修飾はヒストンを化学修飾することにより,多くの遺伝子の発現を同時に制御している.本稿では,陸上植物の発生進化において,クロマチン修飾を担うポリコーム抑制複合体2の発現変化が果たしてきた役割について概説する.
シロイヌナズナにおけるDNAメチル化とトランスポゾン制御―半数体世代での制御とゲノム機能進化【角谷徹仁/河邊 昭】
近年のシロイヌナズナでの「エピゲノミクス」の進展にともない,次世代に継承されない組織である胚乳や花粉の栄養核で大規模なDNAメチル化の変化が起こることが報告された.さらに,これらの組織におけるトランスポゾンの脱抑制が,small RNAの移行を介して,生殖細胞系列でのトランスポゾンの抑制を引き起こすという興味深い仮説が提案されている.また,胚乳でのトランスポゾンの脱抑制は,インプリンティングの進化につながっている可能性がある.本稿では,植物のゲノム機能の進化をエピジェネティクスとトランスポゾン制御の文脈で紹介したい.
哺乳類における胎生の進化とレトロトランスポゾン【金児-石野 知子/石野史敏】
哺乳類を構成する3つのグループは,単孔類が卵生/有袋類と真獣類が胎生という異なる生殖様式を採用し,胎生の有袋類と真獣類の間にも胎盤機能の差に起因する異なる生殖戦略が存在している.また,有袋類と真獣類にのみゲノムインプリンティングというエピジェネティクス機構が存在している.最近のゲノム機能科学研究は,これら哺乳類のグループ間の異なる特徴が,進化の過程で獲得したレトロトランスポゾン由来の新規遺伝子群により決定づけられた可能性を示唆している.
ヒトとチンパンジーの比較からゲノム機能を解明する【黒木陽子/藤山秋佐夫】
ヒトとチンパンジーの比較ゲノム解析は,両者で共通な部分と互いに異なる部分を明らかにし,種特異的な表現型や種分化にかかわるゲノムの構造変化を科学的に説明することを目指して,2000年初頭から研究が進められている.ヒトとチンパンジーのゲノム構造の相違が明らかになってきた今,「ヒト」をヒトたらしめるものは何か,という大きな問いに対する科学的な解を得ることを目的として,ゲノムの構造から遺伝子制御機構にわたるさまざまな切り口から研究が進められている.本稿では,これらの研究の現状について概説する.
嗅覚受容体遺伝子ファミリーの進化ダイナミクス ゲノムと環境の相互作用【新村芳人】
環境中の多様な匂い分子は,嗅覚受容体(OR)によって検出される.全ゲノム配列を用いた網羅的な解析の結果,OR遺伝子の数は,哺乳類で数百~千個,魚類で十~百個と生物種によって大きく異なることが明らかになった.OR遺伝子は,多数の遺伝子重複と消失を繰り返しながら,それぞれの種の生存環境に応じてダイナミックに変化してきた.例えば,視覚が発達した高等霊長類では多くのOR遺伝子が偽遺伝子化し,四足動物の系統では,陸上生活への適応の際に2つのグループの遺伝子が急激に数を増やした.OR遺伝子の起源は脊索動物の共通祖先にまで遡ることができるが,昆虫や線虫は異なる遺伝子を化学受容体として用いており,化学受容体は何度も独立に進化したと考えられる.

トピックス

カレントトピックス
ミトコンドリア分裂因子Drp1はマウス胚の生育とシナプス形成に必須である【三原勝芳】
軸索間相互作用による神経地図形成【今井 猛/山?崇裕/坂野 仁】
脈絡膜血管新生におけるケモカイン受容体CCR3の役割と臨床応用の可能性【武田篤信/石橋達朗/Jayakrishna Ambati】
タンパク質キナーゼCK2による哺乳類概日リズム制御機構【土谷佳樹/明石 真/西田栄介】
News & Hot Paper Digest
~2009年 ノーベル賞紹介~
ノーベル医学生理学賞:染色体の末端を護るしくみ
ノーベル化学賞:2009年ノーベル化学賞,苦渋の結論
IL-17の新たなソースγδT細胞 (自然免疫からのTH17誘導)
「非マウス」 遺伝子改変動物
神経伝達物質の放出過程を単一のシナプスレベルで可視化
慢性疲労症候群患者の67%でγレトロウイルス,XMRVを同定

連載

【最終回】バイオ研究者がちゃんと知っておきたい化学
第3回 分子構造からわかる反応性【齋藤勝裕】
The Future of Cancer Genomics
第3回 癌の法則を解明して個別化医療につなげるため【Timothy J. Ley】
Editor’s Report 第3回 「トランスレーショナルリサーチ」 から考えたこと,感じたこと【実験医学編集部】
クローズアップ実験法
生体吸収性ハイドロゲルを用いた動物個体への核酸導入【松井倫子/田畑泰彦】
難治疾患
IGF-Ⅰ/IGF-Ⅰ受容体異常による低身長【神崎 晋/鞁嶋有紀/西村 玲/長石純一/花木啓一】
Campus & Conference探訪記
Achievements and Legacy of Saburo Hanafusa 癌研究の草分け,花房秀三郎先生【大内 徹】

関連情報

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