多彩な老化現象の解明をめざす老化研究には,さまざまな老化の捉え方と研究の切り口があります.老化研究は,今,どこまで進んでいるのか? 近年,臨床研究,老化疾患,老化モデル動物,テロメア短縮や活性酸素などの加齢因子,カロリー代謝の研究などから,進化的な共通性も含めた老化のメカニズムが浮かび上がってきました.『基本編』で,種々の老化のとらえ方による研究の切り口から「老化とは何か」を考え,さらに『トピックス編』でゲノム医科学や脳科学,再生医学から,寿命制御や寿命延長の可能性を探ります.研究分野の全体像がわかると大好評の【わかる実験医学シリーズ】第7弾です!
概 論
老化と寿命の謎を追う (井出 利憲)
1.個体の寿命と体細胞の寿命
2.生物の老化の多様さ
3.ヒトの老化をめぐる研究
基本編
【I.老化とは何かを考える】
第1章 臨床の立場からみた老化 (大内 尉義)
1.老化の概念と老化学説
2.細胞老化と個体老化,老化と寿命
3.老化の制御
4.生理的老化と病的老化の区別
5.老年医学の研究課題
第2章 klotho遺伝子研究から個体老化へ−生物の営みと老化 (鍋島 陽一)
1.Klothoと生体恒常性の維持,加齢疾患
2.Klothoタンパクの作用機構
3.カルシウムホメオスタシスの制御
4.antagonistic pleiotropismとklotho遺伝子
5.新たな模索の時
第3章 テロメアからみたヒトの老化 (井出 利憲)
1.細胞老化のプログラム
2.分裂時計と個体の老化
第4章 進化的に共通した老化・寿命のメカニズム (今井 眞一郎)
1.老化・寿命の進化的共通性と特異性を考える
2.新たなる老化・寿命制御因子Sir2
3.栄養制限による寿命延長・老化遅延のメカニズム
4.老化・寿命の分子メカニズムにおける進化的共通項
5.老化の表現型をもたらすメカニズム
【II.老化研究の切り口 】
第1章 早老症と老化抑制遺伝子 (杉本 正信 古市 泰宏)
1.出発点:WRN遺伝子変異
2.ゲノムの不安定化
3.下流の変化の謎
4.ノックアウトマウスの謎
5.結論:WRNとRTSからみた老化への筋道
第2章 活性酸素の増減による老化・延命効果 (鈴木 敬一郎 谷口 直之)
1.活性酸素種の生成と生体成分の傷害
2.ミトコンドリアにおける活性酸素生成と老化
3.摂取カロリーと寿命
4.老化とタンパク質の修飾:オキシデーションとグリケーション
5.抗酸化酵素による寿命の延長
6.今後の研究の展開
第3章 DNAの損傷と老化 (小野 哲也 上原 芳彦)
1.放射線による寿命短縮
2.老化に伴うDNA損傷の蓄積
3.突然変異の蓄積
4.DNA修復遺伝子欠損マウスでの老化
第4章 線虫の老化 (石井 直明)
1.C. elegansの老化の特徴
2.寿命が変化する突然変異体
3.線虫から学ぶ老化
トピックス編
1 遺伝子多型と老年医学 (名倉 潤 三木 哲郎)
1.遺伝子多型から老化の個体差をさぐる
2.老年病関連遺伝子研究の現状
3.ヒト長寿遺伝子の解析
4.老年病関連遺伝子研究の今後
2 超長寿命者の遺伝素因 −百寿者調査から (広瀬 信義 新井 康通 山村 憲)
1.超高齢者の死亡率
2.百寿者のphenotype
3.百寿者の遺伝素因の検討
4.今後の研究の動向
3 脳の老化と寿命制御 (森 望)
1.個体の統御系としての脳と生物の個体寿命
2.脳の老化をどう解するか?
3.寿命遺伝子シグナルの進化的共通性
4.Shc遺伝子と老化
5.寿命制御へのシナリオ
4 細胞不死化・臓器再生・置換から寿命延長の可能性をさぐる (梅澤 明弘)
1.再生医療の供給源となる細胞の寿命
2.臓器の大きさと細胞移植
3.骨髄移植と間質細胞
4.不死化と腫瘍化の微妙なところ
5.研究対象としての不死化した細胞
6.不死化ヒト細胞を移植した場合の腫瘍化の可能性