第3回 地球から細胞が生まれた2 1.細胞膜というもの [分子生物学講義Web中継~生物の多様性と進化の驚異]

本WEB連載を元にした単行本が8月下旬発行予定です!詳細はコチラです.

  • [SHARE]
  • Tweet this
  • Send to Facebook
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

第3回 地球から細胞が生まれた2

  • 実はRNAタンパク質ワールドだった?
  • 初期の細胞は遺伝子がごちゃ混ぜだった?
  • ・・・など,驚きの視点が満載.

1.細胞膜というもの

脂質による細胞膜の形成

現在の真核細胞の細胞膜は,グリセロ脂質やスフィンゴ脂質のほか,動物細胞ではコレステロールを含むなど,さまざまな脂質成分を含んでいますが,主成分は,グリセロール-3-リン酸に長い炭化水素分子がエステル結合したグリセロリン脂質です.真正細菌も同様です.古細菌はイソプレノイドという枝分かれのある炭化水素分子がエーテル結合したグリセロリン脂質です.このような脂質分子を非生物的に合成することは,アミノ酸やタンパク質に比べて難しく,生命が誕生するまでのプロセスで,いつ頃どのように作られたかの理解は実は不十分です.

グリセロリン脂質の構造は,一方の端に親水性の高いリン酸があります.実際には,リン酸の先にさらにコリンやセリンや糖など親水性分子がついているのが普通です.分子の他方には,炭化水素の長い鎖の部分があり,ここは水との親和性がない(疎水性であり親油性である)構造をもっています.親水基と疎水基の両方をもつ分子が水中にあると,親水性部分は水となじみますが,疎水性部分は水を避けようとするために,疎水性部分同士が集まって集合し,自然に小胞ができるわけです.原始的ではあるものの,細胞の原型ができたともいえます.細胞の内側と外側という環境の違いを生み出す,最初のしくみを用意したことになります.

細胞膜機能の進展

脂質でできた細胞膜は疎水性の層をもっているため,親水性の物質を通しにくい性質があります.主要な生体成分であるアミノ酸も糖もヌクレオチドも親水性物質なので,現在のすべての細胞の細胞膜には,それらを輸送する特異的な輸送タンパク質があって,エネルギーを使って積極的に細胞内へ運び込んでいます.NaやK,Ca2+,H,Clなどについても,それぞれのイオンを専門に輸送するタンパク質があります.現在の細胞膜と違って,誕生したばかりの小胞には,十分に機能する輸送タンパク質が組み込まれてはいなかったでしょうが,内部にあった有機化合物が消費されて濃度が下がると,外から膜を浸み通って少しずつ入ってくる受動的なプロセスはあったに違いありません.消費というのは,分解して消失するようなケースもあるでしょうし,重合して高分子になることで低分子有機化合物の濃度が下がるというケースもあるはずです.やがてどこかの時点では,膜に組み込まれるタンパク質が作られ,タンパク質による輸送機能をもった膜ができたと考えられています.

  • [SHARE]
  • Tweet this
  • Send to Facebook
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

123>Page1/3


WEB連載大好評につき、単行本化決定! 地球誕生から46億年の軌跡を一冊に凝縮!原始の細胞からヒトが生まれるまで,生物の試行錯誤が面白くってたまらない! 豊富なイラストと親しみやすい解説で,生物が大好きな人にお勧めです.

分子生物学講義中継 番外編 生物の多様性と進化の驚異

分子生物学講義中継 番外編生物の多様性と進化の驚異

井出利憲/著

定価 4,800円+税, 2010年8月発行

詳細 購入

プロフィール

井出先生 写真
井出 利憲(Toshinori Ide)
東京で生まれて35年間東京で過ごし,昭和53年から平成18年まで広島大学医学部(大学院医歯薬学総合研究科)に勤め,その後2年間を広島国際大学薬学部で過ごし,平成20年からは愛媛県立医療技術大学にいます.講義録をもとにして平成14年から『分子生物学講義中継』シリーズを刊行し,最初のPart1は現在11刷に,5冊目の一番新しいPart0上巻も4刷になっています.今,シリーズ最後(多分)の,私の一番書きたかったところを執筆中です.

おすすめ書籍

  • 分子生物学講義中継 Part1
    詳細購入
  • 分子生物学講義中継 Part2
    詳細購入
  • 分子生物学講義中継 Part3
    詳細購入
  • 分子生物学講義中継 Part0上
    詳細購入
  • 分子生物学講義中継 Part0下
    詳細購入