船橋二和病院(レジデントノート Vol.4 No.8掲載)
病院・医局紹介

船橋二和病院

1981年,千葉県船橋市で32年間の民主的医療運動に支えられて開院. 船橋市北部に位置し,北部地域の拠点病院として, 予防からリハビリテーションまで一貫した総合的な医療を追及. 病院内外で医療と社会保障について健康友の会, 患者会などと共同した活動, 出張検診を始め保健予防活動を地域の中で積極的に進めている. 2002年4月,厚生労働省の臨床研修指定病院の指定を受ける.

診療科:内/消化器/呼吸器/循環器/小児/外/整形外/心臓血管外/小児外/泌尿器/産婦人/リハビリテーション/精神/肛門/皮膚/眼/耳鼻咽喉/病理
病床数:285床
初期研修中の医師数(2002年度):4人

船橋二和病院

〒274-8506
千葉県船橋市二和東5-1-1
047-448-7111(代表)

病院の紹介

船橋二和病院の歴史と特徴

船橋二和病院の開院は1981年.以来20年間,地域の人々とともに一から手作りで,医療を行ってきた.それを支えてきたのは「健康友の会」の活動であったという.

岡本氏「千葉民医連の病院,診療所の患者さんが“自分たちの病院が欲しい,自分たちの病院を作ろう”という気持ちで集まり,『健康友の会』が発足しました。その方々が,私たちと一緒になってこの病院を作って今日まで支え発展に力を尽してくれています.医師へ向けて声を発してくれることで,良い病院ができあがり,地域に必要とされる良い医師が育つ環境ができたのだと思っています」

岡本氏
岡本氏
佐藤医師
佐藤医師

佐藤医師「地域に必要とされる病院であることが,この病院の大きな特徴だといえます.当院はこの地域の基幹病院です.病床数に比べると,外来患者さんの方が多いですね.軽症の患者さんから重症の患者さんまで,また年齢層も幅広く,子供から高齢の方までいらっしゃいます.このあたりは東京まで通勤されている方も多い地域ですので,子供の数も比較的多いと思います.また,基本的にどのような患者さんも断らないというのが当院の方針です.自分の専門にかかわらず,すべての患者さんを診る,そういう医師がこの地域で必要とされているのです」


臨床研修の概要

船橋二和病院の研修は,各科および病院間のローテート研修である.約300床の二和病院,100床の千葉健生病院,さらに診療所での研修も組み込まれている.同じ内科を研修するのにも,専門分化した大きな病院と,専門分化していない比較的小さな病院では,初期対応のしかたも変わるためだ.こうして多様なニーズに応えられる,医師養成を目指している.

病院設立当初は内科,外科,小児科のローテート研修だった.その後,産婦人科,診療所研修が加わったということだ.

研修医の出身大学は全国各地だが,千葉県出身の人が地元に帰ってくることが多いらしい.

小児科研修

「プライマリケアをやるからには,小児科を研修すべきである」ということで,スーパーローテート研修に2~3カ月の小児科研修が組み込まれている.

佐藤医師「小児科研修の主な内容としては,病棟で主治医になってもらうことです.一番の目的は子供に慣れてもらうことです.当院には小児科の常勤医が,半分小児科医のような医師を含め,4人います.研修医は外来の救急当直もするのですが,そこで困った場合には,病棟当直している経験のある上級医に相談することができます.そこで解決できればよいですし,もし小児の専門の問題が起こってしまったら,小児科医の当番が待機していますので,その医師に相談することもできます」

二和病院の医局は単一医局で40人もの医師が1つの医局で机を並べている.普段から他科の医師とのコミュニケーションがとりやすく,いざというときのコンサルトもスムーズにできるそうだ.また,専門医へコンサルトした患者さんについても,研修医へフィードバックもされやすい.カンファレンスも活発に行われているそうで,これは,壁(垣根)のない医局の利点といえるだろう.

佐藤医師「たいていの施設で夜間の患者さんの半分強は小児なんですが,それに見合うだけの数の小児科医はいません.だから,小児科医でなくてもだれでも一次診療できることが望ましいのです」

小児一次診療のできる医師が不足しているといわれているが,二和病院ではこのようにして小児診療のできる医師の育成ができている.もちろん上級医も皆小児一次診療ができるので,医師全員での受け入れ体制ができあがっている.これは,20年以上にわたってこの病院で培われてきたものだという.

佐藤医師「研修医が小児の診療をする際,医療行為自体は間違っていなくても,説明が足りなかったなどで,あとで親御さんからクレームがくるケースがたまにあります.医学的知識は頭のなかにあるのだけれども,必要十分な情報を患者さんやご家族に与えることが,研修医にとってはまだ難しいのかもしれません.
しかし,小児研修を終えた研修医からは,それまでは当直のときに子供がくると恐かったが,そういう漠然とした恐さがなくなった,診療するのにもいろいろ見通しをもつことができるようになった,子供に対する不安,特に理由のない不安がなくなった,という声を聞きます」

診療所を含めた地域のネットワーク

船橋二和病院の医療には,診療所を含めた地域のネットワークの力,また,バイタリティーある医師らの存在が大きいようだ.

岡本氏「現副院長は外科医ですが,かまがや診療所で各科の患者さん,子供さんからお年寄りまで診療しています.また千葉健生病院で10年間外科医として勤めた先生が,いちはら診療所の所長をしています.外科医なのに,地域の方から『今度の先生は優秀な小児科医だね~』と言われたという話もあります(笑).専門科に関係なく,地域の診療所の医師としてやれる力が,私たちの研修で自然に培われているのだと思います.診療所に行きたいという若い先生も多く,そういう力はすごいことだと思います.
この地域のネットワークにおいて,当院は拠点病院の役割をもっています.拠点病院は大変です.しかし,やる気のある医師,友の会をはじめとする地域の方々,みんなの力がこの病院,この地域の医療を作ってきたのです.付け焼き刃ではできません.やはり積み重ねだと思います.この度,臨床研修の必修化にあたり,厚生労働省から打ち出された研修目標の内容などは,私どもとしてはこれまでずっと行ってきたことでしたから,全く違和感のないものですね」


これからの展望

佐藤医師「当院の医療は,今の学生さん,若い方の求めている方向に合致していると思います.まだ弱い部分もありますが,これから先大事になっていくだろうところを強化していこうと努力しています.病院として研修の目安はありますが,研修医各個人の到達状況や希望も受け入れて,ある程度フレキシブルに研修できる形になっています.ですから,自分の要求に近い研修ができると思います」


最後に

佐藤医師「いろいろ研修の整備はされてきているのですが,すべて整いすぎてしまうと自主的な研修の妨げになってしまう場合もあります.いろいろな環境で患者さんに接しながら成長することもありますが,患者さんにとって不利益なことが起こってはいけません.ですから,研修の間は指導医が目を光らせています.また,臨床研修のテキストにあたる「臨床医マニュアル」(近藤克則ほか 編著,第2版,医歯薬出版,11月出版予定)なども,指導医で準備しています.一方,私たちは主体的な研修を行えるための最低限の手伝いをしようと思っています.ですから,研修医自身の熱意や目標が高いほど,良い研修ができるのです.
研修医に望むこととしては,責任をもって主治医になれるような研修をしてほしいと思います.患者さんに対して責任をもつというのが一番だと思います.多様化した今の医療内容の中のすべてを自分でやるわけにはいきませんが,自分がもっている力のなかで,責任をもつということです.医師の側では一人前の医師になるための研修ということですが,患者さんにとっては,研修医でも普通の医師と変わりはありませんからね」

お開院以来積み重ねられてきた医療や臨床研修は,今後求められる臨床研修の形を先どりしたものであった.少子化・核家族化の時代に,地域に密着した医療への努力を続ける,エネルギッシュなスタッフの手で,今後も良い医師が育っていくことだろう.2002年4月,船橋二和病院は厚生労働省の臨床研修病院の指定を受けた.ますますの発展を期待するものである. (編集部 久本容子 保坂早苗)


研修医にインタビュー

今回編集部が船橋二和病院を取材するきっかけとなったのは,医学教育学会大会での松岡角英先生による「中規模市中病院におけるプライマリ・ケア小児科研修」の発表でした.松岡先生は研修2年めの内科医です.二和病院の特徴のひとつともいえる小児科研修を中心に,お話を伺いました.

●二和病院を選んだ理由
「子供の患者さんをちゃんと診たい」

この病院で研修をしようと決めたのは,子供を診られる医者になりたいと思っているからです.臓器を特定しないで幅広く診られる内科の医師になりたいという思いと,自分自身が家庭を築いたときに自分の子供をちゃんと診たい,同じように地域の子供の患者さんもちゃんと診たいという思いをもっているのです.
二和病院は,内科・外科に加え,ほかの病院の研修では欠けてしまうことの多い産婦人科や小児科の研修が充実しており,0歳から100歳まですべての患者に対応できるようなバランスのとれた研修ができるということで選びました.
この病院に継続して勤めていれば,赤ちゃんのときに診た子が成長して大人になるまでみていけるのです.

松岡角英医師
松岡角英医師
「主治医として研修するので,必死に小児科医のように振る舞います. 小児科で受け持った患者さんのご家族が僕を小児科の医師だと思いこんでいて, ほかの科に移ったあとでも,通り掛かりに相談されることがあります」

●小児科研修の内容
「2年間すべてが小児科研修」

研修は6カ月の内科導入期研修から始まります.その後は,ほかの研修医の状況などをみながらローテーションを組みます.まわるのは,内科(6カ月×2回)・外科(4~5カ月)・小児科(2~3カ月)・産婦人科(2カ月)の各病棟,および診療所(3カ月)です.
小児科病棟では,主治医として患者を受け持ちます.当然知識も技術も足りないので,指導医に手取り足取り支えてもらいながら,実践で格闘して能力を身につけていくのです.患者さんからご家族に「主治医の松岡先生」と紹介されるのが一番嬉しいですね.
病棟での研修のほかに,研修を始めて2カ月目からは夜間当直(月6回),半年ほど経ってからは昼間の一般外来(週数回)を行うようになります.ここでは,科を限らず,子供の患者さんや外科の患者さんも受けるので,当直や一般の外来における小児科一次診療を担える能力も身につくのです.
初期研修2年間のうちに,小児科病棟で研修をするのは2~3カ月ですが,その期間だけではなく,2年間すべてが小児科研修であるとわれわれは考えています.
また,外来と病棟の研修だけでなく,乳幼児健診や予防接種を見学するなどして,予防医学,育児支援の重要性を学ぶようにしています.さらに,喘息教室などの患者教育も経験します.

●小児科研修の獲得目標
「子供の具合が悪くなっても僕は平気」

このように行われる小児科研修では以下の4つの獲得目標を掲げています.

  1. 夜間休日における小児科一次診療を担える外来診療能力の習得
  2. 乳幼児の点滴ライン確保,採血などの手技の習得
  3. 患児の重症度を判断する能力および専門医への的確なコンサルテーション能力の習得
  4. 患児とその母親とのコミュニケーション能力の習得

これらを目標にして,小児科研修をすることができたので,夜間に来られるような子供の患者さんにはほとんど対応できます.そのうえ,将来自分が子供をもったときに,子供の具合が悪くなっても僕は平気だと自信をもつことができ,よい研修をさせてもらったと思っています.

●読者へメッセージ
「家庭医になりたい方こそ」

二和病院は,コアカリキュラムの各病棟を必ず回り,外来ばかりの診療所も経験する,一次予防もやる,外来もやる,入院患者も診られる,しかも研修医にとって非常に適した症例を経験できるということで大変よい研修施設なのではないでしょうか.小児科を含め,すべての科の患者さんを受け入れて初期対応をすることが可能になるような研修ができるので,家庭医になりたい人こそ,ぜひここで研修してほしいですね.


第1回地域医療サマーセミナー

二和病院は2002年4月に厚生労働省の臨床研修指定病院となった.そこで,学生に二和病院で行われている地域医療の実践を見てもらい,進路として考えてもらおうということで,2002年8月23日,24日,第1回 地域医療サマーセミナーが開催された(実行委員長は松岡先生).地域医療に関心のある学生が参加し,記念講演やグループワークなど,2日間盛り沢山の内容で行われた.
非常に実践的であったのは,往診実習である.参加した学生たちは地域に飛び出す経験をし,見てきたことを報告しあった.医療には各家庭の事情が大きく影響するということや,家では患者さんの本音がでやすいことなど,往診ならではの発見があり,地域ぐるみ家庭ぐるみの医療の実際を感じられたようであった.
また,シンポジウムでは,かつて二和病院で研修し,現在,地域医療に熱心に取り組まれている5人のユニークな先生方が集まり,地域に根ざした医療の醍醐味についてディスカッションを行った.なぜ二和病院(民医連)を選んだのか,何にこだわっているのか,など思いのたけを語られ,学生たちの意識を鼓舞したことだろう.
地域医療を実践する仲間を増やしたいという思いで行われたこの企画.二和病院の皆さん,実行委員長の松岡先生の地域医療に対する強い思いが伝わってきた.