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芝医師:来年度からの研修制度改革によって,私たちはますますプライマリ・ケア重視の研修プログラムをつくりやすい環境ができたと思っています.当院ではこれまでもスーパーローテート研修を行ってきました.少しずつ改良を重ねると同時に,来年度からの必修化にあわせた厚生労働省の目標案に合致した内容の研修カリキュラムを,本年度から採用しています(図を参照). これまでになかった点としては,整形外科,脳神経外科を必修としたこと,小児科が従来2カ月と短かったところを3カ月に延ばしたこと,産婦人科についても必修とし,これまで1カ月だったところを2カ月に延ばしたことがあげられます.また精神科ではコンサルテーション・リエゾンに加えて,貴重な精神科救急の経験ができます. 自由選択の4カ月は,研修医の進路にあわせて研修内容が選択できるようになっています.できれば,それまでのローテート研修の中身を充実してもらうように使ってもらいたいと思います. |
![]() 臨床研修委員長の芝医師 |
ストレート研修のミニ版を繋ぎあわせればスーパーローテートになる,と勘違いされている方もおられるようですが,ぜんぜん違います.各科を横断的にみることこそが重要です.専門診療の良い面と,横断的な面をお互い補完できるようにと,コアカリキュラムを厚生労働省でまとめています.つまり,縦割りの診療科と,横断的にみるコアの2本立てなのです.
このプログラムによって,2年間を通して各診療科の枠にとらわれない,核となる医療の知識,技能,態度を修得していただきます(表を参照).
昨年の12月,当院に「東京ER・府中」が開設されました.ここで1次,2次救急の経験を積むことができますし,ここでの指導体制には自信があります.指導医がいっしょに診療し,さらに研修医がERで診た症例をフィードバックして教育する環境ができています.症例も豊富にありますので,これがなによりの環境だと思います.ERの内科,外科では,専門診療科の医師が兼務して交代で担当しています.
| 図◆研修スケジュール一の例 | |
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プライマリ・ケア的診療能力を維持するため,研修の間,1週間に1回のER当直診療が義務づけられており,多くの症例を経験できるという.自由選択の期間は,希望の進路の専門科を研修することもできるし,それまでの研修の補完にあてることもできる. |
この地域で,連携のできる医療施設に協力いただいて,研修医には診療所などで1カ月間の研修をしてもらいます.病院のとりくみとしての医療連携では,形態的にネットワーク,パイプは作れますが,そのパイプを太く,機能させていくためには,実際に患者さんとのやりとりを積極的に行うことが不可欠です.ターミナル期の患者さんの自宅で行われる在宅医療を経験します.この研修をとおして,患者さんの真のQOLというのは医療者が考えるものだけではないということに気づいてほしいと思います.
難しいのは,限られた期間内に,到達目標の80%,ないしは70%をカバーする必要があるということです.当院では,内科に関していえばストレート研修で6カ月かかる内容を,あえて2カ月のカリキュラムの中に入れています.しかし,2カ月では到底無理です.ではどうするか.その補完として,「ER内科研修」をしていただきます.ER当直を週に1回,月に4回,年間とおせば48回の当直になります.そうしますとかなりの数の症例を経験できます.この中には救急を含め,common diseaseも多いので,あらゆる疾患に出合うことになります. |
表◆コアカリキュラムの研修項目![]() |
また,眼科,耳鼻科など,なかなか到達できない科については,「ワンポイントセミナー」にて補完しています.その内容は,臨床ですぐ役に立つ簡単なクルズスを30分くらいかけてやるものですが,各診療科の指導医に年間約60テーマを用意してもらっています.具体的には単純X線の読み方,抗生物質の使い方,火傷のみかた,日常遭遇しやすい皮膚疾患のみかた,夏に多い眼科疾患などといったものです.実践で役に立つことを生涯学習していく,医療人として必要な態度を身に付けることも,一般目標となっています.
総合診療能力を維持する目的の後期研修総合診療能力を落とさないまま,専門医としてのたしなみをもつ臨床医となってもらいたいと思うので,初期研修後はシニアレジデント(専門臨床研修医)として当院に残っていただくのを歓迎しています. 最初から総合診療能力を維持しつつ,専門医の資格をとりたいと思って来られる方,またまだ自分の進路が決まらないが,その間自分に足りないスーパーローテート研修を続けたいと思われる方,そして最近増えてきたのは,専門医の資格をすでにもちながら,開業する前に自分の総合診療能力を確認したいという方など,シニアレジデントにはさまざまな方がいらっしゃいます. |
![]() ◆東京ER・府中 2002年12月,墨東病院(2001年11月),広尾病院(2002年7月)に続き,「東京ER・府中」が開設された |
総合診療能力を生涯もち続けることの重要性を理解している方に,強いていうなら,ERを含めて救急で必要度の高い,小児科,内科などの領域を将来やりたいと思っておられる方にはうってつけの環境です.向上心をもって医療に取り組む姿勢のある人であれば,ぜひ一緒に働きたいと思います.
研修新制度のため,多くの病院で困っているのは「どの科で研修を行うか」ということだと思います.「どの科で」ではなく,「どこの科でもできる」,これを指導医側が心得ていないために戸惑いが生じてしまうのでしょう. 今回の改革は,私たちはある意味チャンスだと思っています.そしてこの改革では今日の医療に必要な,縦割りでなく横断的に診ることのできる,患者さんの求める医療の姿がみえてきています.この機会を利用して,より良い研修環境をつくっていきたいと思っているのです. マッチングに参加することの意義マッチングにはいろいろ意見が分かれるところですが,参加することによって,病院のカリキュラムだとか,研修の状況とかを,全国水準でガラス貼りで見られて,場合によっては第三者機関で評価されて,自分たちの研修のやり方を批判をしていただくことにより,大いに改善,向上することができると思うのです.当院はマッチングには,積極的に参加しようと決めています. |
![]() ◆ERカンファレンスの様子 週に1回,スタッフルームにて行われる.救急で診た患者さんをフォローしていくと違う診断となったという症例,またとても勉強になったという症例などを,ここで発表し検討する.ジュニアレジデントはだいたい参加.シニアレジデントは診療の都合があるが,7〜8割の人は参加している. |
学生さんが一番困っておられるのは,相談できる人が身近にいないことではないでしょうか.いるにはいるんですが,縦割りの専門診療をやっている大学病院,ある意味では特殊な病気の診療をやってきた先輩が相談にのっているのでは,言葉としてはプライマリ・ケアを使うことができたとしても,プライマリ・ケアが何であるのかよく理解されていないかもしれないのです.それを自分の目で確かめるためにも,母校を離れて,地域の基幹病院へでも見学にいって,とにかく話を聞かれることをおすすめします. 当院も今年は大幅に見学者が増えています.
自分の研修する場は,自分で確かめてみつけていかない限りは,良い研修はできません.また,どんなに良いシステムが用意されていようが,自ら有効に時間を使って貪欲に学ぼうという姿勢でいなければ,良い研修はできません.その逆もあり,研修のシステムは完全でなくとも,患者さんの症例にとりくむ研修医や指導医のモチベーションの高さによって,かなり中身のある研修になるのです.
2年間という期間でやれることに限りがあるとすれば,専門を早くもつより,広い視野をもって,プライマリ・ケア能力を高めるようにしっかり勉強してほしいと思います.これがしっかりできる医師であれば,どこへ行っても活躍できる医師であるはずです.そして,主治医とは何か,自分で考えてください.研修医の時期は時間で区切ることのない診療をして,臨終にも立ち会ってください.看とることも,患者さん,患者さんの家族の満足という観点で重要です.医療者がやるべきことはまだまだたくさんあります.このことをぜひ考えてほしいと思います.
お話のなかでは一貫して,総合診療(プライマリ・ケア)能力の重要性を強調されていました.研修医,指導医が頭を寄せ合っての,アットホームな雰囲気のカンファレンスから,この病院での充実した研修環境(指導体制)を感じることができました.取材にご協力いただきました先生方,この度は誠にありがとうございました. (編集部 久本容子)