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RNA新大陸の発見!
〜トランスクリプトーム解析が導いた non-coding RNAの新機能

林崎良英
林崎良英(Yoshihide Hayashizaki)
理化学研究所ゲノム科学総合研究センター(GSC)

1986年大阪大学医学部大学院博士課程内科系修了.医学博士.1998年より理化学研究所ゲノム科学総合研究センター遺伝子構造・機能研究グループプロジェクトディレクター.Mouse Encyclopedia Project,FANTOM(Functional Annotation of Mouse cDNA),ゲノムネットワークプロジェクトを推進し,トランスクリプトームの総合的解析から遺伝子ネットワークの解明,RNA機能の解明を進めている.

本年9月2日,バイオサイエンス研究に新たな局面をもたらす知見が全世界に発信された.同日のScience誌において,今まで2%しか機能しないと考えられていたゲノムの約70%もの領域が,RNAを転写して重要な機能を果たしているという報告がなされたのである.non-coding RNAの機能解明に拍車をかける研究成果といえる.本インタビューでは,プロジェクトの中核で研究を推進している理化学研究所の林崎良英氏に,トランスクリプトームの総合的解析による本研究の経緯とバイオサイエンスに与えたインパクト,そして今後のRNA研究の展望をご紹介いただいた.(編集部 一戸敦子)

● RNA新大陸の発見とは?

―本研究は「RNA新大陸の発見」と称されていますが,その意味合いをお教えください.

まずはじめに,これまでの考え方を説明します.ヒトゲノムはAGCT4種類の塩基が鎖状に30億個連なったものです.2004年10月,国際ヒトゲノムコンソーシアムがゲノム配列の予測から,RNAに転写される部分,いわゆる「遺伝子」を22,000個と報告しました.これはゲノム全体の約2%にあたるため,ヒトの生命に役立つのはゲノムのわずか2%で,それ以外は不要な部分と考えられたのです.つまり,長いゲノムの中にオアシスのように遺伝子がポツポツと散在しているイメージでした.

しかし今回の研究によって,今まで不要と考えられていた部分が,じつは何らかの重要な働きをすることがわかりました.全ゲノムの約7割がRNAに転写されていたのです.また,その中の5割を超えるRNAがタンパク質をつくらず(non-coding RNA:ncRNA),独自に機能を果たしている可能性があることを発見しました.これまでのイメージを根幹からくつがえし,「RNA新大陸」の存在を学術的に立証したわけです.

● 新知見を導き出したストラテジー

―今までの概念をくつがえした原動力はどこにあったのでしょうか?

今回のポイントは,大規模なトランスクリプトーム解析によって,莫大な数のRNAをチェックしたことにあります.マウスの完全長cDNAを約200万個単離し,さらには転写物の末端の配列を約250万個解読しました.RNAの総数では,約450万個のスクリーニングを行った計算になります.この技術を支えたのが,理化学研究所(理研)を中心にしたプロジェクトです.

1995年,Mouse Encyclopedia Projectがスタートしました.完全長cDNA技術や高速シークエンシングシステムなどの新技術の開発を行い,完全長cDNAクローンバンクやデータベース,マッピング情報や発現プロファイル,タンパク質相互作用などに関するあらゆる情報を収集しました.cDNAクローンを頒布するための新しい技術として,DNAブックが開発されたことは記憶に新しいと思います.

そして,ここから出てきたデータに網羅的に機能注釈付けをするためにできた組織が,FANTOM(Functional Annotation of Mouse cDNA)です.これは,理研を中心に結成された国際的研究コンソーシアムで,全世界の11カ国,45カ所の研究機関等が参加しています.FANTOM1,FANTOM2を経て,現在のFANTOM3の活動により,マウスゲノムにおけるncRNAの存在とRNA新大陸が証明されました.しかし,やはりヒトにもncRNAが多数存在することを証明しなければならない.そこで,文部科学省のプロジェクトである「ゲノムネットワークプロジェクト」と密接な連携プレーを行ったのです.

―密接な連携とは,具体的には?

マウスで言えることはヒトでも言えるということを確認するために,ゲノムネットワークプロジェクトと連携してヒトの解析も行いました.先ほどの約200万個のマウス完全長cDNAを分類分けして10万3,000個のマウス完全長cDNAを決定し,ヒトでは約6万個を見つけました.

続きは本誌でご覧下さい


バイオテクノロジー ジャーナル2005年11-12月号掲載
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