実験医学 2010年6月号 Vol.28 No.9

代謝制御の鍵を握る

膵β細胞

インスリン分泌の新機構と実現化する細胞再生

  • 清野 進/企画
  • 2010年05月20日発行
  • B5判
  • 135ページ
  • ISBN 978-4-7581-0060-1
  • 定価:1,800円+税
  • 在庫:なし
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《企画者のことば》

19世紀の半ば過ぎPaul Langerhansによって膵臓に点在する島状の小器官が発見され,その後,それらの小器官はislet of Langerhans(膵ランゲルハンス島:膵島)と名付けられた.糖・脂質・タンパク質の代謝制御の中心となるインスリンは膵島内β細胞でつくられ,分泌される.β細胞は糖尿病の発症や進展に密接にかかわっていると同時に糖尿病の最も重要な治療標的細胞である.近年,さまざまな技術の導入によりβ細胞についての理解が格段に深まりつつある.本特集では,β細胞の研究の最近のトピックをとりあげ,それらの成果の臨床応用の可能性について議論する.

糖尿病発症の鍵となる膵β細胞.インスリン分泌の分子機構から最新のイメージング解析,それらの知見を元に展開する再生・移植医療まで,基礎研究と臨床応用が理想的に連携された最前線を紹介.

目次

特集

代謝制御の鍵を握る
膵β細胞
インスリン分泌の新機構と実現化する細胞再生
企画/清野 進
概論—膵β細胞研究の新展開—基礎研究から臨床へのトランスレーション【清野 進】
19世紀の半ば過ぎPaul Langerhansによって膵臓に点在する島状の小器官が発見され,その後,それらの小器官はislet of Langerhans(膵ランゲルハンス島:膵島)と名付けられた.糖・脂質・タンパク質の代謝制御の中心となるインスリンは膵島内β細胞でつくられ,分泌される.β細胞は糖尿病の発症や進展に密接にかかわっていると同時に糖尿病の最も重要な治療標的細胞である.近年,さまざまな技術の導入によりβ細胞についての理解が格段に深まりつつある.本特集では,β細胞の研究の最近のトピックをとりあげ,それらの成果の臨床応用の可能性について議論する.
インスリン分泌におけるcAMPセンサーの役割【柴崎忠雄/張 長亮/清野 進】
cAMPはインスリン分泌を増強するきわめて重要な膵β細胞シグナルである.膵β細胞のcAMPシグナルを惹起する生理的因子として,インクレチンとよばれる消化管ホルモンが知られており,その作用を利用して新たな糖尿病治療薬が開発されている.cAMPセンサーEpac2(cAMP-GEFII)はcAMPによるインスリン分泌増強作用に重要な役割を果たしているが,最近Epac2が糖尿病治療薬であるスルホニル尿素(SU)薬の標的分子であることが明らかにされ,臨床的にも注目されている.
インスリン顆粒の開口分泌様式【高橋倫子/岸本拓哉/大野光代/河西春郎】
組織深部の生体現象を実時間で可視化する画像法を用いることにより,分泌現象の時空間的分布の解析が可能となった.インスリンを分泌する膵ランゲルハンス島に,水溶性色素による還流法と2光子励起法を応用した結果,融合細孔の動態や開口放出の様式が明らかになり,他の組織と異なる特性のあることが判明した.
膵外組織からのシグナルによる膵β細胞制御機構【今井淳太/片桐秀樹】
近年,臓器間連関による全身の代謝制御の重要性が認識されてきており,代謝にかかわる肝臓,筋肉,脂肪組織,中枢神経などの臓器間においてさまざまな代謝情報がやりとりされて,全身の恒常性を維持していることが明らかになってきた.膵β細胞においても消化管からのインクレチンや脂肪組織からの栄養素,あるいはアディポサイトカインなどの液性因子による制御機構が知られていたが,最近の研究によってこれまであまり想定されていなかった,神経シグナルによる他臓器からの膵β細胞増殖,あるいはインスリン分泌の制御機構が存在することがわかってきた.
膵β細胞in vivoイメージングの現状と展望【豊田健太郎/稲垣暢也】
糖尿病は,膵β細胞に備わる代償能の機能的あるいは量的な破綻によって発症すると考えられるが,その過程における膵島量の推移は不明である.また,インクレチン関連薬のように膵β細胞を保護し,増加させる可能性のある薬剤も登場した.このような背景から,糖尿病発症・進展の病態,さらには治療薬選択や効果の理解のために膵β細胞量を定量するin vivoイメージング技術の開発が強く求められている.本稿では,膵β細胞量の検知を目的としたin vivoイメージング法開発の現状と今後の展望について概説する.
膵β細胞分化誘導研究が発生学に与えるインパクト【樋口裕一郎/白木伸明/粂 昭苑】
ES,iPS細胞を作製する技術が確立されて以来,多くのグループがそれらをもとに膵β細胞を作製し,糖尿病の治療を行うという青写真を描いて研究を行ってきた.その臨床応用については未だ多くの課題が残されているものの,その研究過程で明らかになった初期の内胚葉,膵臓形成メカニズムは発生生物学の観点においても,非常に重要な意味をもつと考えられる.本稿では膵β細胞研究の推移と,その成果が発生学に与えたインパクトについて,当研究室の知見を交えて紹介する.
膵外分泌細胞からインスリン分泌細胞への誘導【南 幸太郎/清野 進】
インスリンを分泌する細胞を作製して移植することができれば糖尿病の根治が期待される.その意味から多くの研究者によってインスリン分泌細胞(膵β細胞)再生の試みがなされている.インスリン分泌細胞の再生誘導のアプローチとしては,ES細胞,iPS細胞などのいわゆる幹細胞を利用したものだけではなく,膵β細胞自体の増殖や組織幹/前駆細胞を用いた方法などさまざまな可能性が考えられる.本稿ではこのうち膵外分泌細胞を用いたインスリン分泌細胞の誘導に着目し,われわれ自身の成果も含めて,現状と展望について概説したい.
膵島移植の現状と新たな展開【松本慎一】
1型糖尿病の治療として,膵島移植が世界的に普及しつつある.最新のデータでは,膵島移植後70%の患者がインスリン離脱している.一方で,インスリン離脱の長期維持が難しいこと,膵島分離の成功率が低いこと,複数の移植が必要なことなどの課題がある.ただし,これらの課題は解決しつつあり標準治療に向けて着実に進んでおり,米国では膵島を薬剤とみなし第三相治験が開始された.膵島移植が標準治療になると,ドナーの不足が問題になる.この問題を解決すべく,ブタを用いた異種膵島移植の治験がニュージーランドで開始されている.

製品特集

次世代の細胞解析を可能にする最新テクノロジー
<概論>生命現象の新たな一面を定量する細胞解析【古屋智子/池本健三/佐々木功典】
協賛企業記事  ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社/株式会社パーキンエルマージャパン

トピックス

カレントトピックス
内因性カンナビノイドの甘味増強作用【吉田竜介/大栗弾宏/重村憲徳/二ノ宮裕三】
ヒストン遺伝子はなぜS期特異的に転写制御されるのか?【髙山優子/登田 隆/齋藤成昭】
O-マンノシル型糖鎖のリン酸化がジストログリカンのラミニン結合型修飾に必須である【吉田-森口 貴子/Kevin P. Campbell】
Nemo-like kinaseはNotch転写複合体の形成を阻害し,神経細胞形成を促進する【石谷 太/松本邦弘/伊藤素行】
News & Hot Paper Digest
生体組織の機械特性を再構築する【津田行子】
Hsp90変異個体で形態異常が噴出する分子機構に新説【田口英樹】
マクロファージの貪食作用におけるTRPV2チャネルの役割【神崎 展】
細胞膜に係留された神経ペプチド毒素によるシナプス伝達の遮断【平井宏和】
全身デリバリーによるRNAiの研究が大きく進展【MSA Partners】

連載

【新連載】私のメンター 〜受け継がれる研究の心〜
第1回 Alfred L. Goldberg【田中啓二】
【新Series】次n世代シークエンス技術がもたらす「津波」
第1回 シークエンス技術開発の歴史といま,そして未来【宋 碩林/一戸敦子/菅野純夫】
クローズアップ実験法
3C法による核内DNAの位置関係の解析【三浦 尚/Jennifer Crutchley】
バイオ研究 耳よりツール
マウス・ラットの胚/精子の凍結保存とそれら系統の配布サービス【中潟直己】
ラボレポート〜独立編〜
夢見る頃を過ぎても—Department of Biochemistry University of Leicester【田仲加代子】

関連情報

特集 Online Supplemental Data

本号特集「代謝制御の鍵を握る膵β細胞」のSupplemental DataをオンラインコンテンツとしてPodcast配信しています.以下よりダウンロードして誌面と併せてご覧ください.

副腎髄質内カテコラミン分泌の動画
  • [1] 副腎髄質内カテコラミン分泌の動画
  • 高橋倫子

2010年5月20日公開
本誌1349ページ,図1関連動画
Kishimoto, T. et al.:EMBO J., 25:673-682, 2006

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膵島内インスリン分泌の動画
  • [1] 膵島内インスリン分泌の動画
  • 高橋倫子

2010年5月20日公開
本誌1349ページ,図1関連動画
Takahashi, N. et al.:Science, 297:1349-1352, 2002

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実験医学6月号関係

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  • 【本書名】実験医学:代謝制御の鍵を握る 膵β細胞〜インスリン分泌の新機構と実現化する細胞再生
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