実験医学 2006年2月号 Vol.24 No.3

いま明かされる

ゲノム損傷応答システム

修復因子のダイナミクスと疾患発症のメカニズム

  • 花岡文雄/企画
  • 2006年01月20日発行
  • B5判
  • 111ページ
  • ISBN 978-4-7581-0108-0
  • 定価:1,800円+税
  • 在庫:なし
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《企画者のことば》生物は,ゲノムの損傷に応答してさまざまな経路を発動し,遺伝情報を保持する機構を備えている.もしそれらがなかったら,生物は現存しないと言っても過言ではない.近年,ゲノム損傷に応答するしくみと損傷修復の分子メカニズムの解明が進み,これらの機構の癌化,老化をはじめとする高次生命現象へのかかわりが明らかになりつつある.本特集では,分子レベルから個体レベルに至るまで,こうした研究の最前線を第一線の研究者にわかりやすく解説していただく.

※本書の正誤表はこちらをご参照下さい.

細胞死や癌,老化につながる「ゲノムDNA損傷」に対する細胞応答メカニズムの解明が進んでいます.分子イメージングや構造解析から見えてきた修復因子の働きや疾患・老化との関わりまで,最新知見をご紹介します.

目次

特集

いま明かされる
ゲノム損傷応答システム
修復因子のダイナミクスと疾患発症のメカニズム
企画/花岡 文雄
概論〜ゲノム損傷応答の分子メカニズムと高次生命現象へのかかわり【花岡文雄】
生物は,ゲノムの損傷に応答してさまざまな経路を発動し,遺伝情報を保持する機構を備えている.もしそれらがなかったら,生物は現存しないと言っても過言ではない.近年,ゲノム損傷に応答するしくみと損傷修復の分子メカニズムの解明が進み,これらの機構の癌化,老化をはじめとする高次生命現象へのかかわりが明らかになりつつある.本特集では,分子レベルから個体レベルに至るまで,こうした研究の最前線を第一線の研究者にわかりやすく解説していただく.
チェックポイント活性化のメカニズムと細胞周期〜CDKがチェックポイントを活性化する?【持田 悟/柳田充弘】
チェックポイントはDNAの異常が修復されるまでの間,細胞周期進行を一時的に止めるシステムとして発見されて以来,これにかかわるタンパク質や最終的な標的であるCDKの活性制御に至るシグナル伝達経路が解明されてきた.最近になってこの経路の最上流域,つまりこれらのタンパク質が具体的にどのような DNA—クロマチン構造を認識しているのか,さらにDSB(double-strand break,DNA二重鎖切断)によるチェックポイント活性化がCDK活性を中心とした細胞周期と密接に関連があることが提唱された.本稿では特にDSB が起こってからチェックポイント因子がそれを感知するまでに焦点を置き,最近の知見を取り上げて考察したい.
転写を阻害するDNA損傷の修復機構と早期老化【田中亀代次】
紫外線や化学変異原によるDNA損傷,あるいは酸化的DNA損傷のあるものはRNAポリメラーゼIIによる転写を阻害し,細胞死を誘発し,神経学的異常や早期老化の原因となる.しかし,細胞はこれらのDNA損傷を特異的に認識し,修復する「転写と共役した修復(transcription-coupled repair:TCR)」機構をもち,細胞死を防いでいる.コケイン症候群(Cockayne syndrome:CS)は,早期老化,身体発育不全,神経学的異常,日光過敏性を特徴とするヒト遺伝疾患であり,TCR機構を選択的に欠損している.CSの原因遺伝子としてA群およびB群CS(CSA,CSB)が知られている.また,B,D,G群色素性乾皮症(XP-B,XP-D,XP-G)患者のなかにはCS症状を合併する患者がいる.本稿では,これらのCS原因遺伝子のTCRにおける機能や,それらの異常がいかにCSの分子病態をもたらすのかを解説する.
結晶構造から損傷乗り越えDNA合成を解き明かす【Wei Yang】
YファミリーDNAポリメラーゼは,損傷をもたないDNAに対する忠実度は低いが,損傷乗り越えDNA合成ができるという特徴をもつ.このファミリーに属する酵素もよく知られている複製型DNAポリメラーゼと同様に,右手のような形をした触媒コアをもち,finger,thumb,palmドメインから構成されていることが結晶構造解析によって示された.Yファミリーポリメラーゼの活性部位は広く開いた構造となっており,そのためにさまざまなDNA損傷だけでなくミスマッチ塩基対も受け入れることができる.また,Yファミリーポリメラーゼは他のファミリーに属するDNAポリメラーゼにはないlittle fingerドメインをもつ.このドメインはDNAとの結合や触媒効率に関与し,さらには他の補助因子との相互作用に関与している可能性がある.正常な DNA,あるいは損傷をもつDNAとYファミリーポリメラーゼとの複合体についての構造学的あるいは速度論的研究によって,大きな活性部位はさまざまな損傷DNAを収容しうることが確認されただけでなく,個々のポリメラーゼは独特の活性部位の配置と,また金属イオンの助けにより特異的な基質選択性をもつことが示唆された.
ヌクレオチド除去修復における損傷認識機構とユビキチン化の役割【菅澤 薫】
われわれが環境から受けるDNA損傷のなかでも,紫外線が引き起こす塩基損傷は日常的に発生する可能性が最も高いものの1つである.長大なゲノムDNA全体を監視して紫外線損傷を効率よく見つけだし,これを修復するメカニズムは特に皮膚癌の発生を防ぐうえできわめて重要である.この修復を担うヌクレオチド除去修復機構において,複数の損傷認識因子が協調的に働くことによって効率的な紫外線損傷の検出を可能にしていること,またその過程でタンパク質のユビキチン化が重要な役割を果たしていることが明らかになってきた.
in situ解析からみえてきた細胞の中でのDNA損傷応答機構【蘭 利/中嶋 敏/安井 明】
細胞内のDNAに生じた損傷に細胞がどのように応答するかを知ることは,ゲノムの不安定性や細胞死,癌や遺伝病あるいは老化の原因を理解するうえできわめて重要である.これまでの研究は主に試験管の中での解析であったが,最近,実際の細胞の核の一部にレーザーや紫外線で局所的に損傷を導入し,抗体や,発現させておいたGFP融合タンパク質を用いて,それらの損傷に対するタンパク質の集積を可視化して解析することが行われている.われわれは活性酸素で生じる主なゲノム損傷である単鎖切断や塩基損傷あるいは二重鎖切断をヒト細胞核に局所的に作製し,集積するタンパク質を解析して細胞内でのそれぞれの損傷に対する応答機構を解析している.本稿では細胞内でのDNA単鎖切断に対する細胞応答の解析結果とこの方法の今後の展望について述べる.
DNA損傷応答におけるファンコニ貧血原因遺伝子の役割【石合正道/高田 穣】
この数年のファンコニ貧血原因遺伝子研究の進展はめざましい.本稿ではDNA損傷応答におけるFANCD2タンパク質を中心としたファンコニ経路の概要を解説し,われわれのデータからはFANCD2のモノユビキチン化の意義やコア複合体の役割について紹介する.さらに,昨年一気に発表された新しいFA遺伝子FANCJとFANCMの発見によって,より具体的にみえてきた相同組換えと停止複製フォーク再開始におけるファンコニ経路の機能について議論したい.

トピックス

カレントトピックス
歯の本数決定・歯尖パターン形成を制御する新しいBMPアンタゴニスト:ectodin【葛西義明/伊藤信行】
ヒトゲノム遺伝子砂漠内での哺乳動物に共通な大規模ゲノム重複の発見【伊藤武彦/服部正平】
リンパ球ホーミングのしくみ:細胞表面糖鎖の硫酸化はローリング速度を規定する【内村健治】
News & Hot Paper Digest
定説の実証・定説への反証〜FRETによる挑戦〜【水野一也】
カルシウム透過性チャネルPolycystin-2による転写と細胞増殖の制御【神崎 展】
RNAiによるDNAのメチル化機構【佐倉和久/村山明子/柳澤 純】
始動する先端医療の新たな研究開発拠点【編集部】

連載

Update Review
癌幹細胞の単離と制御シグナル〜真の癌幹細胞分離へのアプローチ【近藤 亨】
クローズアップ実験法
3色可視化細胞の動態観察 2)ライブセルイメージングの実際【杉本憲治】
バイオ実験ピンチ脱出法
第2回 大腸菌のカラーセレクションをし忘れたときの解決法 〜大腸菌コロニーはテンテンと〜【小笠原道生】
疾患解明Overview
第19回 ナルコレプシー研究の現状【内山 真】
私が名付けた遺伝子
第14回 satori 〜煩悩を授けた遺伝子への賛歌〜【山元大輔】
ラボレポート−留学編−
ロンドン大学,Steve Wilsonラボでの研究生活〜University College London【工藤哲大】
学会・シンポジウム見聞録
International Symposium on“Life of Proteins”〜潮風とうず潮と人形浄瑠璃とサイエンスに乾杯!!【河野憲二】

関連情報

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  • 【本書名】実験医学:いま明かされる ゲノム損傷応答システム〜修復因子のダイナミクスと疾患発症のメカニズム
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