実験医学2022年1月号 特集「夜明けを迎えたヒト免疫学〜臨床検体からヒトの免疫応答機構の実態を知り、疾患制御に挑む」

生体ライブイメージング技術から展開する新たなヒト免疫学

宮本 佑,菊田順一,石井 優
特集

夜明けを迎えたヒト免疫学

生体ライブイメージング技術から
展開する新たなヒト免疫学
宮本 佑,菊田順一,石井 優
近年,光学顕微鏡技術が急速に発展し,生きた動物の体内で起こる多彩な生命現象を直接観ることができるよう
になった.これにより,従来の解析方法では知ることのできなかった生命現象の新発見が相次いでいる.特に免
疫学分野においては,各種免疫細胞がみせる動態からその生理・病理学的な意味の解明がめざましく進んでいる.
本稿ではまず,免疫学分野における生体イメージング研究の有用性を解説する.そして,ヒト生体イメージング
研究の現状とヒト病態解析への応用についてわれわれの研究事例をとりあげながら概説する.
キーワード

生体イメージング,細胞動態,多光子励起顕微鏡,ラベルフリー可視化,病理解析

はじめに

め,細胞の動態に関する情報を得ることができ,さら
にそれぞれの細胞が実際にどのように活動しているの

これまでのヒト免疫学研究では,主にフローサイト

かを知ることができる.これが生体イメージング技術

メトリーを用いた細胞解析や,固定組織標本を用いた

の最も大きな利点である.本稿では,細胞動態解析が

組織学的解析が行われてきた.これらの解析手法だけ

免疫学研究にもたらす好影響,そしてヒト生体イメー

でも,細胞の種類,分子発現,局在,形態的特徴など

ジング研究の現状について概説する.

さまざまな情報が得られる.これらに加えて,近年で
は,シングルセル遺伝子解析技術が飛躍的に進歩を遂
げたことにより,組織を単一細胞に分散さえできれば,

1 生体イメージングによる細胞動態解析から
解明された生体防御システム

組織に存在する細胞の全容を詳細に調べることができ
るようになってきた.しかし,以上の解析では基本的

細胞動態は非常に多くの,かつ重要な情報を含んで

に任意の 1 点のタイムポイントで取得したサンプルを

いる.特に,免疫細胞は生体内を活発に動きまわるダ

解析に供してしまうため,時間軸情報をもった細胞の

イナミックな細胞であるため,細胞動態研究は免疫学

変化 ,つまり細胞動態の情報が得られない .加えて ,

分野において非常に重要な知見を与えてきた.以下に,

これらの実験技術だけでは,
“仮説の通りに生命現象が

生体イメージングを活用して細胞動態から読みとるこ

実際の生体組織内で本当に起こっているのか?”といっ

とができた免疫システムの実態について紹介する.

た疑問が残ってしまう.これらの課題を解決するには

皮膚の表皮と真皮の間には,T リンパ球(厳密には

生体イメージング技術が必要不可欠である.生体イメー

CD8 陽性メモリー T 細胞)が存在し,絶えず組織内を

ジングでは,組織を生かした状態で,組織内のありの

動き回っている.Ariotti らは,皮膚組織の生体イメー

ままの状態を一定期間観察・解析することが可能なた

ジングにより,この T リンパ球の動きの生理的意味を

Elucidation of human immune system using live imaging technologies

Yu Miyamoto/Junichi Kikuta/Masaru Ishii:Department of Immunology and Cell Biology, Graduate School of Medicine and
Frontier Biosciences, Osaka University(大阪大学大学院医学系研究科 / 生命機能研究科・免疫細胞生物学)

実験医学 Vol. 40 No. 1(1 月号)2022

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この記事の掲載号

実験医学2022年1月号
夜明けを迎えたヒト免疫学

上野英樹/企画