実験医学2022年1月号 カレントトピックス

SARS-CoV-2に対する自然免疫系RNAセンサーの新たな抗ウイルス機能

山田大翔,髙岡晃教
Yamada T, et al: Nat Immunol, 22: 820-828, 2021

SARS-CoV-2 に対する自然免疫系 RNAセンサー
の新たな抗ウイルス機能
山田大翔,髙岡晃教
自然免疫系の細胞質 RNA センサーとして知られる RIG-I が,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の
原因ウイルスである重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV-2)の感染初期においてウイルス
RNA ゲノムと会合し,従来の下流シグナル伝達を伴わない新たな認識様式で,直接的な抗ウイルス作用を担
うことを初代培養ヒト肺胞・気管支上皮細胞で見出した.

外来微生物に対する宿主の自然免疫系による感染防

ダプター分子である MAVS/IPS-1 と相互作用し,下流

御応答は ,微生物の構成成分に特有な分子パターン

へのシグナル伝達によって転写因子を活性化し ,Ⅰ型

(PAMPs)を宿主の遺伝子にコードされるパターン認

およびⅢ型インターフェロン(IFNs)や炎症性サイト

識受容体(PRRs)が認識することで開始する.RNA

カイン等の遺伝子発現を行うことで,間接的に抗ウイ

ウイルスの感染認識に働く代表的な PRR としては,細

(図 1).
ルス防御を誘導することが知られていた 1)

胞質型のRIG-I(retinoic acid-inducible gene-I)様受

これまでコロナウイルスに分類される MERS-CoV

容体(RIG-I-like receptors,RLRs)ファミリーであ

やマウスコロナウイルスであるマウス肝炎ウイルス

る RIG-I や MDA5(melanoma differentiation-associ-

(MHV)の認識には RIG-I,MDA5,TLR7 が関与し,

ated gene 5),膜結合型の TLR(Toll-like receptor)

SARS-CoV に対しては TLR3/7 が認識することで自然

3/7/8 などがあげられる .

免疫サイトカインを誘導することが報告されていた 2).

1)

RIG-I は,ウイルス由来のゲノムやその複製中間体

SARS-CoV-2 は特に SARS-CoV と高い相同性を示し,

である,5 ′末端が三リン酸修飾された一本鎖 R N A や

約 3 万塩基のプラス鎖の一本鎖 RNA〔(+)gRNA〕をゲ

短い二本鎖 RNA を認識し,さまざまな種類の RNA ウ

ノムにもつウイルスであり,その認識には前記の RNA

イルスの認識にかかわる .その構造はその N 末端側

センサーの関与が予想はされていたが,その詳細は十

から CARD,ヘリカーゼドメイン(HD)
,C 末端ドメ

分に明らかにされていなかった.

1)

イン(CTD)の大きく 3 つのドメインから構成される.
ウイルス感染の際,通常 RIG-I は,ウイルス由来のRNA
をCTD で結合して認識すると,HD 内に有するATPase
依存的な構造変化に伴って CARD が露出し,その後ア
A novel function of an innate RNA sensor against SARS-CoV-2 infection

Taisho Yamada 1)2)/Akinori Takaoka1)2):Division of Signaling in Cancer and Immunology, Institute for Genetic Medicine,
Hokkaido University1)/Molecular Medical Biochemistry Unit, Biological Chemistry and Engineering Course, Graduate School
(北海道大学遺伝子病制御研究所分子生体防御分野 1)/ 北海道大
of Chemical Sciences and Engineering, Hokkaido University 2)
学大学院総合化学院分子医化学講座分子生体防御分野 2))
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実験医学 Vol. 40 No. 1(1 月号)2022
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この記事の掲載号

実験医学2022年1月号
夜明けを迎えたヒト免疫学

上野英樹/企画