Kyota Ko,Simon Gillett(東京工業大学英語コミュニケーションプログラム 講師/ベルリッツ・ジャパン)
本コンテンツは,実験医学同名コーナーからの転載,2014年11月に発行された単行本「理系英会話アクティブラーニング」シリーズ(発表・懇親会・ラボツアー編,スピーチ・議論・座長編)からのスピンアウトとなります.イギリス留学中のテツヤが実験医学onlineにも登場!
テツヤです.2年もいると留学生活にも慣れてきて,最近は研究所以外の現地の人とも少しずつ接点が持ててきた気がします.僕がイギリスに来てからしばらく戸惑っていたこと.それはチップ! 最初はお焼香の順番待ちのときのように,慣れている人を観察してお手本にしようと姑息なことを考えていたんですが…
同僚2人とちょっとお高いレストランで食べたときのことです.90ポンドのお会計の10%をチップとして出すために,いわれるがままに一人3ポンドを出しました.ここまではわかります.でも研究所のすぐ近くの町の定食屋さんみたいなところで食べたら,1ポンドをテーブルに置いたり置かなかったり.
もうわけがわからなくなって,ついに同僚に聞いちゃいました.
Exactly when are you supposed to tip?
チップはいったいいつあげる決まりなの?
そしたら理系の僕には一番いやな答えが返ってきました.
You tip when you want to tip.
チップはあげたい時にあげるんだよ.
それがわからないんだよ!
同僚の話によると,どうやらチップがほぼ義務化されているアメリカと違って,イギリスではチップを必ず渡さなければいけない,というルールはないそうです.レストランで受けたサービスが本当に好印象だった場合,純粋に好意として1~2ポンド置いておく,という感覚だそうな.ただしホテルや一部のレストランのようなフォーマルな場では,チップは必須のようなので注意.
How do you know whether it's a formal place or not?
フォーマルな場かどうかなんてどうやってわかるの?
白黒はっきりつけたい僕は詰め寄ります.
Well, if they address you as Sir or Madam, it's probably a formal occasion.
まあ,サーかマダムって呼ばれたら,それはたぶんフォーマルな場ってことじゃない.
なるほどー.
アメリカ人の同僚によると,アメリカのウェイターやウェイトレスの基本給は安くチップで生活をしているようなものなんだそうです.お客さんからもらうお会計の15%ほどのチップが頼りなんですって.だからチップがもらえなかったら死活問題! 一方でイギリスの接客業はチップを期待しない.基本給で食べていけるんですね.
なんでこの話をするかというと,イギリスのカジュアルレストランのサービスは,本当にピンキリだからです.こっちの店には明るくハキハキしているウェイトレスさんがいたと思えば,あっちの店には愛想を振りまく気配が完全にゼロの死んだ目をしたウェイターさんが.チップはあげたい時にあげる.その意味がはっきりわかりました.アメリカでは基本的にみんな愛想はいいそうです.生活がかかってますから!
ところで,イギリス人の同僚が興味深いことをいっていました.
Bad service isn't all that bad. You get a story to share. Did I tell you about the waiter at Phil's Buffet? He is the worst nightmare you can ever imagine!
質の低いサービスを受けるのは悪いことばかりじゃないよ.だって話のタネになるじゃないか.フィルズビュッフェのウェイターの話はしたっけ? あいつは想像しうる最悪の悪夢だよ!
悪いサービスのレストランには,面白半分にあえて行くこともあるそうです…さすがイギリス,ここまでくるとある意味ポジティブです.僕も面白い話が切り出せるように,フィルズビュッフェに入り浸ろうかな.