急な下腹部痛で来院した80歳代女性1 85歳女性.午前中より急な下腹部痛を訴え午後に病院を受診した. 外科指導医は手術中で対応できず,看護師より「待てそうな患者さんです」との情報をもらったため,まず研修医が診るように言われ診察することとなった. ① 13時30分…看護師の測定したバイタルサインを確認.血圧120/50 mmHg,脈拍数100回/分,体温38.0℃,SpO2 97%(room air)とのこと. ② 13時50分…研修医接触時,患者さんは車椅子上でJCS1.顔面蒼白・冷汗あり・苦悶様.橈骨動脈はかろうじて触知.すぐにベッドに横にしバイタルサイン再測定,血圧80/50 mmHg,脈拍数120回/分,SpO2 97%(room air).下肢挙上しつつ末梢ルート確保の準備を指示. ③ 14時00分…ルート確保終了,補液を全開で投与しつつ診察を開始.下腹部の全体的な痛みを訴える.腹部は板状硬・筋性防御あり.最終排便は3日前,便秘気味とのこと. ④ 14時20分…急速輸液後血圧120/60 mmHg,脈拍数90回/分となったため腹部CTを施行,腹腔内にfree airを認め,ダグラス窩に液体貯留を認めた.その他血管・臓器とも見える範囲で有意な所見はなし.以上より消化管穿孔・ショック状態(現在改善傾向)と判断. ⑤ 14時30分…患者さん・家族へ診断を伝え,緊急手術の説明を行った. ⓑ ②の後 消化管穿孔の症例でした.看護師さんの接触時のバイタルサインと研修医接触時のバイタルサインに変化がみられています.ショック症状に気づきバイタルサインを再測定,その後も適切に対応しショック状態を離脱させた研修医は素晴らしいですね. さて,コンサルテーションのタイミングはどこが適切だったのでしょう? 研修医の力量・指導医との信頼関係もありますので一概には言えませんが,答えは②でショックと気づいた段階でコンサルテーションです.結果的にバイタルサインは安定しましたが,このまま崩れた際は意識レベル低下,心肺停止にもなりかねない状態であり,その際には人手を要することもあります. 指導医としては看護師さんから「待てる患者」という情報しか入っていなかったため,研修医に初診を任せたのかもしれません.はじめからショックであれば別な対応をとったと思います.ゆえに「ショックです」という緊急状態を,より早く指導医に伝えるべきです. (2020/05/25公開) 戻る この"ドリル"の掲載書をご紹介します レジデントノート 2020年6月号 Vol.22 No.4コンサルトドリル身近な症例から学ぶ、情報の的確な集め方・伝え方 宗像源之,山中克郎/編 定価:2,000円+税 在庫:あり 月刊レジデントノート 最新号 次号案内 バックナンバー 連載一覧 掲載広告一覧 定期購読案内 定期購読WEB版サービス 定期購読申込状況 レジデントノート増刊 最新号 次号案内 バックナンバー 定期購読案内 residentnote @Yodosha_RN その他の羊土社のページ ウェブGノート 実験医学online 教科書・サブテキスト 広告出稿をお考えの方へ 広告出稿の案内