黄疸,腰痛,腹部膨満感を訴える55歳女性3 既往歴 糖尿病 嗜好歴 喫煙:なし,飲酒:ビール1,000 mL/日(30年以上) アレルギー歴 なし 家族歴 なし 内服歴 ロキソプロフェン 現病歴 20年程前に肝機能障害の指摘をされたが,特に医療機関は受診していなかった.半年前から体重が減少傾向であった.また,1カ月ほど前から腰痛が出現したため,ロキソプロフェンを内服するようになったが,その後,黄疸と腹部膨満感が出現したため,当院の救急外来を受診しそのまま入院した. 入院時現症 身長 154 cm.体重 64 kg.体温 36.4℃.脈拍数 100回/分.血圧 107 mmHg.皮膚に黄染あり.眼瞼結膜に黄疸あり.頸部リンパ節は触知しない.肺音に異常はない.心音に異常はない.腹部は膨満,軟,圧痛はない.両下腿浮腫あり. ⓔ 抗がん剤投与 Q3…次の治療のなかで行うべきではないものはどれか? ⓐ中心静脈栄養 半年前から体重が減少傾向であった. 食事摂取量によっては必要はないかもしれないが不十分な状態が続くなら早めに中心静脈栄養を検討する. 本症例では半年前から体重が減少傾向であること,また腹水貯留を疑わせる所見があることから低栄養状態であることが想定される.そのため治療上の選択肢にはなり得ると思われる. ⓑ利尿薬の投与 身体所見上は腹水貯留が疑われる. 腹水治療の基本は利尿薬の調整であり本症例でも投与する可能性はある. できれば腹水の試験穿刺により性状を評価し,そのうえで利尿薬の調整を行うのがよいが血管内脱水や電解質異常には注意が必要である. 利尿薬でコントロール不十分な場合には腹水ドレナージを行う. ⓒ鎮痛薬の投与,ⓓ放射線照射 悪性腫瘍の存在を疑うような腰痛を訴えている. 【鎮痛薬の投与】 まずはADL の改善や検査を滞りなく進めていくうえで疼痛コントロールが大事である. がん性疼痛が疑われる場合は早めにオピオイドを導入してコントロールを行うべきであり本 症例も該当する. 悪性腫瘍が原因の可能性が高そうな場合はまずはNSAIDs やアセトアミノフェンを試し,効果が乏しければ積極的にオピオイドを導入していくことが望ましい. 【放射線照射】 悪性腫瘍の骨転移を生じた患者のADL 改善(症状緩和)に非常に有用である.なお,骨転移に対する疼痛コントロールには鎮痛薬+放射線照射が基本である. ⓔ抗がん剤投与 T-Bil が10.5 mg/dL である. 肝生検と同様に,T-Bil が3 mg/dL 以上の場合には合併症のリスクが高くなるので,抗がん剤投与をはじめとした積極的な治療は原則行わない.黄疸が改善したら投与を検討する.改善が乏しければ緩和治療に治療方針を転換する必要がある. (2021/05/06公開) 戻る この"ドリル"の掲載書をご紹介します 検査値ドリル基礎・応用問題から鍛える、診断につながるポイントを見抜く力 神田善伸/編 定価:4,730円(本体4,300円+税) 在庫:あり 月刊レジデントノート 最新号 次号案内 バックナンバー 連載一覧 掲載広告一覧 定期購読案内 定期購読WEB版サービス 定期購読申込状況 レジデントノート増刊 最新号 次号案内 バックナンバー 定期購読案内 residentnote @Yodosha_RN その他の羊土社のページ ウェブGノート 実験医学online 教科書・サブテキスト 広告出稿をお考えの方へ 広告出稿の案内