感染対策に関する問題 初めての夏休み,初期研修医のあなたは昨日東南アジア旅行から帰国したばかりだ.旅行先の現地では食べるものになるべく気をつけていたが,屋台で飲んだジュースに氷が入っていたかもしれない.明日から始まる内科ローテートに,あなたは少し不安な気分でいる.翌日の勤務に備え床につこうとしたところ,急な腹痛を覚え下痢になってしまった.下痢は水様で,体も少し熱っぽい.夜も何度かトイレに向かいながら朝を迎えたが,下痢は治まる気配がない. ⓒ職場に電話し,症状を説明してお休みをいただく.受診についても相談する ■ 勤務すべきでない症状を知っておこう われわれには周囲の患者さんと同僚の健康を守る義務があります.初期研修医であろうと指導医であろうと,感染性のある体調不良がある場合にはきちんと休まなければいけません. 1)どんな症状に気をつけたらよいだろう 発熱とともに,消化器症状(嘔吐・水様性下痢・血便),呼吸器症状(鼻汁・咽頭痛,くしゃみ・咳嗽,喀痰),皮膚症状があれば出勤の可否を検討する必要があります1).また,結膜充血や眼脂といった結膜炎の症状がある場合,感染性が高い流行性角結膜炎の可能性があり慎重な対応が必要です1).いわゆる風邪(ウイルス性上気道炎)であっても患者さんや同僚に広めては大変ですし,インフルエンザであればなおさらです.医療施設におけるインフルエンザ様疾患の流行では,スタッフと患者がともに感染することはよく知られています2).周囲への気兼ねや担当患者さんへの責任感はもちろんあるかと思いますが,より大きな事態につながってしまう危険があることから,休む必要性があるかきちんと相談することも社会人としての責任です. 2)具体的にはどうしたらよいだろう まずは職場に連絡しましょう.状態の報告,受診すべきか否かなど相談できると思います.また,海外帰りであれば受診が必要な輸入感染症を考える場合もあります. 引用文献 「感染予防、そしてコントロールのマニュアル」(Damani N/原著,岩田健太郎/監修,岡 秀昭/監訳),メディカル・サイエンス・インターナショナル,2013 ↑感染制御の話題について詳細にまとめられたマニュアル. Yip JLY, et al:Outbreaks of influenza-like illness in care homes in the East of England: impact of variations in neuraminidase inhibitor provision. Public Health, 162:98-103, 2018 ↑イングランドの介護施設におけるインフルエンザ様疾患の流行を記述した疫学研究. (2020/3/17公開) 戻る