症例:全身に皮疹が出現した高齢女性1 症例 73歳の女性.夕食にトマトを食べた10分後から全身に皮疹が出現した.しだいに息苦しくなったため,救急要請した.既往歴に心房細動があり,DOACとβ遮断薬を内服中であった.今までにアナフィラキシーを起こしたことはなかった. ※クリック/タップで拡大します ⓑ 筋骨格症状 問題の解説:アナフィラキシーの診断基準 アナフィラキシーとはアレルゲンへの暴露により,複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され,生命に危機を与えうる過敏反応と定義されます.また血圧低下や意識障害などショックを伴う場合にアナフィラキシーショックといいます.アナフィラキシーは早期治療介入が必要であり,そのためには早期認識が重要です.アナフィラキシーは臨床的に認識することが必ずしも容易ではなく,標的臓器の関与のパターンはさまざまであり,個人間でも異なる可能性があることに注意が必要です.また,原因曝露がないことから疾患を除外することはできません. 特に皮膚症状は20%しか認識されていないとの報告もあり,注意が必要です1).患者がH1抗ヒスタミン薬を服用している場合は,皮膚症状および徴候がみられないことがあります.また小児の食物アレルギーや蜂毒でも皮膚症状がないことがあります.さらに喘息,慢性呼吸器疾患,心血管疾患,肥満細胞腫,重度のアトピー性疾患,上気道狭窄病変などの併存疾患がある患者やアンジオテンシン変換酵素阻害薬内服,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬内服,アルコール摂取がある場合には重症になりやすいです2). 診断に際しては日本アレルギー学会アナフィラキシーガイドラインの診断基準が参考になります3).臨床的には皮膚粘膜症状(Skin)が急速(数分から数時間)に出現し,気道(Airway),呼吸(Breathing),循環(Circulation)のいずれか1症状以上を伴った場合は,アナフィラキシーと診断します.アナフィラキシーの症例の80%以上がこの基準を満たすと考えられています. また他の診断基準として,誘因となりうる物質への曝露後,気道,呼吸,循環,消化器(Diarrhea),皮膚のいずれか2症状が急速(数分~数時間)に出現するというのも提案されています4). 引用文献 Simons FE:Anaphylaxis, killer allergy: long-term management in the community. J Allergy Clin Immunol, 117:367-377, 2006(PMID:16461138) González-Pérez A, et al:Anaphylaxis epidemiology in patients with and patients without asthma: a United Kingdom database review. J Allergy Clin Immunol, 125:1098-1104.e1, 2010(PMID:20392483) 日本アレルギー学会:アナフィラキシーガイドライン第1 版.2014 Dr.林の当直裏御法度― ER 問題解決の極上Tips90 第2版(林 寛之/ 著)三輪書店,2018. (2021/09/06公開) 戻る この"ドリル"の掲載書をご紹介します 救急外来ドリル 熱血指導!「ニガテ症候」を解決するエキスパートの思考回路を身につける 坂本 壮/編 定価:4,400円(本体4,000円+税) 在庫:あり 月刊レジデントノート 最新号 次号案内 バックナンバー 連載一覧 掲載広告一覧 定期購読案内 定期購読WEB版サービス 定期購読申込状況 レジデントノート増刊 最新号 次号案内 バックナンバー 定期購読案内 residentnote @Yodosha_RN その他の羊土社のページ ウェブGノート 実験医学online 教科書・サブテキスト 広告出稿をお考えの方へ 広告出稿の案内