春の研修医応援企画ドリル祭り2020

症例:自宅で倒れていた若年男性2

24歳男性が自宅のソファーで横たわり倒れているところを帰宅した母親が発見し救急要請.

救急隊到着時のバイタルサイン:意識 JCS 30,血圧134/84 mmHg,心拍数90回/分,呼吸数18回/分,SpO2 96%(room air),体温36.5℃,瞳孔径3.0/3.5 mm,対光反射 +/+.

母親の話によると,救急車を呼んでから徐々に反応がみられるようになっている.発見した際には,右手が背中の下に入り込むようにして倒れていた.

病院到着時には意識はさらに改善傾向にあった.

問題5:てんかんと確定診断する際に,必須の検査はどれか?
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解答

ⓓ 脳波

● 問題5の解説:てんかんの確定診断

ERにおいてどのような患者さんでてんかんを疑うかは問題4で理解できたと思います.それでは診断を確定させるためにはどのような検査が必要でしょうか.

患者さんの年齢,認める症状や経過から必須の検査は多少異なるものの,脳波はどのような患者さんであっても必須の検査です.てんかん患者だとしても脳波施行時に必ずてんかん波を認めるとは限りません.実際に一度の脳波で診断できるのは30%程度です.疑ったら検査をくり返し,または刺激を与えての評価,睡眠時,長い時間かけて脳波を施行することもあります.細かなことはここでは割愛しますが,脳波が重要であることは覚えておいてください.

ERではてんかんを以前に指摘され抗てんかん薬を内服している,という患者さんもしばしば来院します.この際必ず確認してほしいことがあります.それが『脳波は施行しましたか?』ということです.原因が精査されずに一度の痙攣で“てんかんの疑い”となっている患者さんをときに経験します.痙攣の原因がてんかんとは限らないことは前述の通りであり,さらに必須の検査である脳波が施行されていない場合には診断そのものが不確かなものとなります.てんかん以外に片頭痛,喘息,Ménière病,自律神経失調症など,診断のためには症状をくり返していること,必須の検査で除外すべき疾患が否定されていること,診断するための精査が行われていることを確認すべき疾患はERではしばしば遭遇します.患者さんの訴えに耳を傾けることは大切ですが,なんでもかんでも鵜呑みにしてはいけません.

(2020/4/1公開)

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