画像診断Q&A

レジデントノート 2011年11月号掲載
【解答・解説】3週間前からの発熱,咳嗽,呼吸困難で受診した40歳代男性

Answer

HIV陽性者のニューモシスチス肺炎(Pneumocystis pneumonia:PCP)

  • A1:胸部単純X線写真では,両側全肺野に広範なすりガラス陰影を認める.また,男性であるが,豊胸術を施行しており,両下肺野のすりガラス陰影はその影響で増強されている(図1).CTでは両肺に濃淡むらのあるすりガラス陰影を認める(図2).
  • A2:PCPを考え,HIV抗体,β-Dグルカン検査を行い,診断確定のために気管支鏡検査を行う.

解説

図1 胸部単純X線写真 両側全肺野に広範なすりガラス陰影を認める.
図2 胸部CT(肺野条件) 両肺に濃淡むらのあるすりガラス陰影を認める.

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本症例は,HIV陽性者のPCPの典型例である.約1カ月の慢性の経過での発症,広範かつ濃淡むらのあるすりガラス陰影から本症を疑う

PCPは,AIDSの最も重要な標識疾患の1つである.AIDS以外の患者では,血液疾患や固形癌,また各種免疫抑制剤治療も基礎疾患の1つとして重要である.

HIV陽性患者と非HIV患者のPCPは,臨床像が大きく異なる.非HIV患者のPCPは,進行が急速であることが多く(通常1週間以内),より重症で予後も悪いとされる.一方HIV陽性患者のPCPは,進行が緩徐であることが多く(1週間~2カ月),予後は比較的良好である.

血液検査所見は,LDH,KL-6,β-Dグルカン高値が特徴である.CD4陽性リンパ球数は200個/μL以下である場合が多い.画像所見は,両側に広範に広がるすりガラス陰影で,浸潤影の要素は少なく,濃淡のむらが特徴である.そのむらは小葉構造とは関連をもたない.診断は,気道検体からのPneumocystis jirovecii の証明であるが,通常喀痰検査では検出困難であり,気管支鏡による気管支肺胞洗浄(bronchoalveolar lavage:BAL)が診断に有用である.Diff-Quik染色やGrocott染色で菌体を確認すれば診断確定である.ニューモシスチスのPCR法も有用ではあるが,あくまでも補助診断である.

本症例では,患者はMSM(Men who have Sex with Men)であった.血液検査では,HIV抗体陽性,β-Dグルカン58.4 pg/mLと高値,CD4陽性リンパ球数12個/μLと減少していた.ウエスタンブロット法による確認試験も陽性であった.BALを施行,BAL液のDiff-Quik染色にて菌体を認め,HIV陽性者のPCPと診断した.ST合剤の内服を3週間行い,低酸素血症を伴うためプレドニゾロン内服も併用し順調に改善が得られた.その後HAART療法(Highly Active Anti-Retroviral Therapy)を開始した.なおPCPにはサイトメガロウイルス肺炎を合併する場合があるが,本症例ではBALでウイルスは認めず,血液検査にてサイトメガロウイルス抗原は陰性であり,合併はなかった.

プロフィール

笠井 昭吾(Shogo Kasai)
社会保険中央総合病院内科
徳田 均(Hitoshi Tokuda)
社会保険中央総合病院内科
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