画像診断Q&A

レジデントノート 2012年2月号掲載
【解答・解説】嚥下時違和感を主訴とする30歳代女性

Answer

縦隔発生のHodgkin リンパ腫の1例

  • A1:右上縦隔に接して巨大な塊状影を認める.
    • ① 気管が左方に偏位(①→)している.
    • ② 腫瘍は鮮明な辺縁があり,肺内に突出し,縦隔への滑らかな移行がみられる(②→)ことから肺内ではなく縦隔腫瘍であることが判断できる(胸膜外徴候).
    • ③ 気管が左方に偏移しており側面像も合わせると上・中縦隔に腫瘍が位置(④→)していること
    がわかる.
  • A2:造影CT 検査にて右鎖骨上窩リンパ節の腫大(⑤→)があり,縦隔リンパ節が多発して腫大していた.一部で上大静脈を圧迫しほぼ閉塞(⑥→)していた.
    来院時に認められた嚥下時違和感は右鎖骨上窩リンパ節腫大に伴う症状,労作時呼吸困難感は上大静脈症候群と考えられた.肺外・肺内リンパ節腫大と可溶性IL-2 レセプターの上昇より悪性リンパ腫の可能性が高いと考えられた.右鎖骨上窩リンパ節生検にて悪性リンパ腫の診断がついた.
  • A3:組織診断にてHodgkin リンパ腫と診断がつき,ABVD 療法(アドリアマイシン,ブレオマイシン,ビンブラスチン,ダカルバジンにて治療中である.

解説

図1 胸部X 線像 A)正面像,B)側面像

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【縦隔腫瘍の発生部位】側面像により縦隔の部位を分類する.本症例は主に上縦隔と中縦隔に主座をもつ悪性リンパ腫である.

  • 上前縦隔○①)(胸骨柄と第4胸椎を結ぶ線より上方部および心外膜より前方の部位):甲状腺腫,胸腺腫,悪性リンパ腫,転移性縦隔腫瘍,腕頭動脈の蛇行
  • 中前縦隔○②):胸腺腫,上行大動脈瘤,胸骨腫瘍,胚細胞性腫瘍
  • 下前縦隔○③):心膜嚢胞,Morgagni 孔ヘルニア,脂肪沈着
  • 中縦隔(前縦隔と後縦隔の間:):悪性リンパ腫,転移性縦隔腫瘍,気管支嚢胞,大動脈瘤
  • 後縦隔(心外膜より後方の部位:):大動脈瘤,食道アカラシア,神経腸嚢胞,食道裂孔ヘルニア,Bochdalek孔ヘルニア,神経原性腫瘍,脊椎カリエス,転移性脊椎腫瘍,悪性リンパ腫

【縦隔腫瘍の発生頻度】悪性リンパ腫以外では以下の5つの頻度が高い.

  • 胸腺腫:前縦隔より発生し,胸腔内へ突出する辺縁の平滑な腫瘤として認められる.
  • 神経原性腫瘍:後縦隔の傍脊椎部に発生し,神経鞘腫・神経線維腫などの末梢線維由来のものと神経節細胞腫や神経芽細胞腫などの神経節に由来するものに分けられる.
  • 胚細胞性腫瘍:前縦隔に発生するものが多い.腫瘍内に歯牙や骨があると診断に役立つ.
  • 先天性嚢胞:気管支嚢胞,心膜嚢胞,消化管嚢胞の順でみられる.
  • 甲状腺腫:上縦隔の気管周囲に存在し,本来の甲状腺と連続性をもつものと,分離して異所性に存在するものがある.内部にしばしば石灰化を伴う.

【縦隔腫瘍の診断の手順】

造影CT が第一選択となる.病変内部の石灰化像や脂肪組織などが同定できれば,鑑別に役立つ.また,造影CT は大動脈瘤との鑑別にも役立つ.

嚢胞性病変の場合,充実性腫瘤性病変との鑑別にMRI が重要となる.

一方,組織診断のためのアプローチが難しい.透視下,CT ガイド下,エコーガイド下での細胞診を行う.気管や食道に接する場合は内視鏡的に吸引細胞診(TBAC:transbronchial needle aspiration cytology)を行う.以上の検査で診断つかない場合,VATS(video assisted thoracoscopic surgery,ビデオ補助下胸部手術)下の生検や開胸生検を考慮する.胸腺腫では赤芽球癆,低γ-グロブリン血症を合併することがあるため,採血上異常値を示すことがある.

腫瘍マーカーとしては,悪性の胚細胞腫瘍では約80 %がhCG やAFP の上昇を認める.悪性リンパ腫では可溶性IL-2レセプターの上昇を認める.

図2 頸部造影CT 像 図3 造影CT 像;上大静脈の狭窄あり(図2より尾側)

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プロフィール

竹島 英之(Hideyuki Takeshima)
JR 東京総合病院呼吸器内科
山口 哲生(Tetsuo Yamaguchi)
JR 東京総合病院呼吸器内科
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