画像診断Q&A

レジデントノート 2012年5月号掲載
【解答・解説】CTで異常所見が指摘できますか?

Answer

右中大脳動脈領域の超急性期脳梗塞

  • A1:出血はない.右中大脳動脈領域の皮髄境界が不明瞭で,脳溝の狭小化が認められる(左側と比較するとよくわかる)(図2).超急性期脳梗塞の際に認められるearly CT signと考える.また,右中大脳動脈は高吸収を呈し,いわゆるhyperdense MCA sign(動脈内の新鮮血栓が高吸収に見える)であった(図1).直後に撮像された脳MRI拡散強調像(図3)にて,低吸収域に一致した高信号があり(),MRA(図4)にて,右中大脳動脈起始部閉塞が疑われた().以上から,右中大脳動脈領域脳梗塞と診断した.
  • A2:early CT signが認められた領域は,すでに不可逆性の梗塞に陥っていると考えられる.本症例のように広範なearly CT signが認められた場合の血栓溶解療法は出血性梗塞のリスクが増すために適応外である.

解説

図1 頭部単純CT 図2 頭部単純CT 図3 頭部MRI 拡散強調像 図4 頭部MRI MRA

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超急性期脳梗塞には,まず脳出血との鑑別のためにCTが第一に施行されることが多い.CTでは出血の除外とearly CT signの有無の確認を迅速かつ的確に行う必要がある.

early CT signとは,① 皮質・白質の境界消失(皮髄境界消失)(図2),② シルビウス裂の狭小化,脳溝の狭小化・消失(図2),③ レンズ核の不明瞭化,を伴う所見であり,超急性期脳梗塞(発症後1~24時間,多くは6時間以内)に認められる.これらの所見は,ラクナ梗塞ではなく,塞栓性の中大脳動脈閉塞または内頸動脈閉塞で出現することが多い.early CT signの有無や発現時間は,閉塞血管部位,閉塞機序,側副血行の多寡,虚血の程度によって影響される.early CT signの多くは細胞傷害性浮腫により生じた皮質吸収値低下を反映し,一般に不可逆性と考えられ,完成した梗塞を示す.

しばしばearly CT signと同時に認められ,広義でのearly CT signにも含まれる所見としてhyperdense MCA signがある(図1).これはMCA(middle cerebral artery:中大脳動脈)にひっかかった塞栓性血栓による所見であり,① どの血管と比較しても高吸収である,② 石灰化ではない,と定義される.しかし,この所見は偽陽性が多く,これが単独でしか認められないときに軽々しく梗塞と判定すべきではない.

t-PA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)経静脈投与をはじめとする血栓溶解療法の適応を決定するにあたり,画像診断の果たす役割は大きい.これまで複数の治療ガイドラインが示されているが,中大脳動脈領域の1/3を超えるような広範なearly CT signを認める症例では出血の危険が高まるため,血栓溶解療法の適応外となる点では共通している.現時点では,血栓溶解療法の適応の有無を考慮する際,必ずしもMRIの評価が必須とされているわけではない.したがって,early CT signは非常に重要で,見逃してはいけない所見である.これらの所見は軽微であることが多く,脳梗塞を疑うような身体所見を認めた場合には,early CT signを念頭におき,対側と比較して丹念に読影することが重要である.

<症例のポイント>

early CT sign:① 皮質・白質の境界消失(皮髄境界消失),② シルビウス裂の狭小化,脳溝の狭小化・消失,③ レンズ核の不明瞭化,は超急性期脳梗塞において認められる所見で,血栓溶解療法の適応を決定するにあたり,重要かつ見逃してはいけない所見である.これらの所見は軽微であることが多く,脳梗塞を疑う場合にはearly CT signを念頭におき,対側と比較して丹念に読影することが重要と考えられる.

〔 2010年度当院放射線科研修医 桑野 貴美子先生作成ティーチングファイルを改変しました〕

プロフィール

松岡 陽治郎(Yohjiro Matsuoka)
国立病院機構長崎医療センター放射線科
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