画像診断Q&A

レジデントノート 2012年10月号掲載
【解答・解説】若年女性に好発する婦人科急性腹症の1つです

Answer

右卵巣広汎性浮腫(massive ovarian edema)

子宮背方のDouglas窩の腫瘤は腫大した右卵巣である (図2).T2強調像にて,被膜下に多数の小嚢胞を認める.腫瘤の中心部は高信号であり,浮腫性の変化を疑う.T1強調像にて中心部はやや高信号を呈し出血の合併を示唆する (図1).腫瘤中心部に造影効果は認められるものの弱い(図3).出血性浮腫と造影効果不良から,卵巣茎捻転による循環障害が疑われる.矢状断像で腫瘤に連続して結節が認められ,捻転茎自体と考えられ (図4),卵巣広汎性浮腫 (massive ovarian edema) と診断した.左卵巣は,小嚢胞が充満しており多嚢胞性卵巣が疑われた (図2).

解説

卵巣広汎性浮腫(massive ovarian edema:以下MOE)は,『正常の卵胞構造とは別に間質の浮腫性変化が片側または両側の卵巣に起こり,卵巣の腫大を認めるもの』と定義されている.浮腫性変化は,慢性的・間歇的な茎捻転による,血液・リンパ液の鬱滞が原因として考えられている. 10~30歳代の若年に好発し,右側卵巣発症の報告が多く,症状としては急性の腹痛や子宮付属器の触知が一般的だが,ときに,月経不順,男性化(程度に差あり),性的早熟を認める.

MOEの画像所見は,MOEが卵巣の慢性的・間歇的な茎捻転であることから,病変の時期と程度により異なる.多くは出血を認めない卵巣の浮腫による腫大を特徴とするが,茎捻転が進行すると本症例のように流出静脈閉塞による出血性梗塞の所見を呈する.捻転茎は同定されない場合もある.また,本症例のように被膜下に多発する卵胞が認められることがある.

本症例では右付属器摘出術が施行され,右卵巣が時計方向に720° 捻転しているのが確認された.

図1 骨盤部MRI T1 強調像 図2 骨盤部MRI T2 強調像
図3 骨盤部MRI造影 脂肪抑制T1強調像 図4 骨盤部MRI T2強調矢状断像

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<症例のポイント>

MOEの報告例は未だ少ないが,若年女性に好発する婦人科急性腹症の1つとして認知しておくべき疾患である.本症例でも認められた,被膜直下の多数の卵胞がMOEの特徴的な所見の1つと言われているが,画像所見は多彩で卵巣癌と鑑別困難なことも稀でない.急性腹症の原因として卵巣腫瘍の茎捻転はよく知られているが,正常の卵巣にも捻転が起こりうることを認識し,浮腫や造影効果不良,捻転の結び目(結節)など捻転に共通する所見に注目することが診断の端緒となると思われる.

〔 2007年度当院放射線科研修医 石橋麻奈美先生作成ティーチングファイルを改変しました〕

プロフィール

松岡 陽治郎(Yohjiro Matsuoka)
国立病院機構長崎医療センター 放射線科
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