画像診断Q&A

レジデントノート 2013年1月号掲載
【解答・解説】Dirty mass?

Answer

特発性S状結腸穿孔

  • A:S状結腸は大きく右に迂回している(図1).右下腹部に認められるS状結腸壁の部分的な欠損があり(図1),S状結腸穿孔を疑う.穿孔部と連続した腸管壁に囲まれないair bubbleを伴う腫瘤がみられ (dirty mass sign:図1),腸管外に漏出した糞便そのものと考える.再構成冠状断像(図2)でもS状結腸 () に連続する腸管外に漏出した糞便 (dirty mass sign:) が明らかである.

解説

下部消化管穿孔の原因としては外傷・異物・絞扼性イレウス・悪性腫瘍・炎症性腸疾患・虚血・憩室炎・潰瘍などがあるが,当症例では緊急手術の結果,原因となりうる病変は指摘しえず,特発性S状結腸穿孔と診断した.本症例には当てはまらないが,ステロイド長期服用者や長期透析患者では腸管壁の脆弱性により特発性穿孔をきたしやすいとの報告がある.下部消化管穿孔における病態は,細菌性腹膜炎による敗血症性ショックが主体である.原因菌はグラム陰性桿菌などの嫌気性菌が多い.身体所見において,ショックやイレウス症状,腹膜刺激症状の有無は予後や治療方針を決定するうえで重要である.

画像検査では腹部CTが最も有用である.腹腔内遊離ガスの検出も単純X線写真に比べてはるかに優れている.ほかにもair bubbleを伴い腸管壁に囲まれない低吸収の腫瘤像は“dirty mass sign”と呼ばれ,腹腔内に漏出した糞便を示す.大腸内の宿便は漏出後も腹腔内で拡散せずにそのままの形状を保ったまま穿孔部付近に存在するのであろう.

下部消化管穿孔は緊急手術の絶対的適応であり,早期診断の重要性については言を待たない.

図1 来院時腹部造影CT
図2 冠状断再構成CT

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<症例のポイント>

下部消化管穿孔は敗血症性ショックに陥りやすく,緊急手術の絶対的適応であり,早期診断が重要である.

本症例では来院時CTで“dirty mass sign”が認められ,大腸穿孔の診断に有用であった.しかし,dirty mass signの有無に留意して読影しなければ,ただの腸管内に存在する通常の便塊と誤認されがちである.便塊らしい,しかし,どことなく不自然な分布を示すair bubbleを認めた場合には,腸管との連続性や腸管壁の欠如などに着目して,注意深く読影することが必須である.

〔2008年度当院放射線科研修医 渡辺健人先生作成ティーチングファイルを改変しました〕

プロフィール

松岡 陽治郎(Yohjiro Matsuoka)
国立病院機構長崎医療センター放射線科
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