画像診断Q&A

レジデントノート 2013年4月号掲載
【解答・解説】メトトレキサート使用下の関節リウマチ患者に生じた発熱を伴う急性呼吸不全

ある1年目の研修医の診断

免疫抑制薬使用下の肺炎ですね 真菌性肺炎かな?

Answer

ニューモシスチス肺炎 (Pneumocystis pneumonia:PCP),薬剤性肺炎 (MTX肺炎)

  • A1:胸部単純X線写真(図1):両側全肺野に濃淡のむらを伴うすりガラス陰影を広範囲に認める.胸部HRCT(図2):モザイク状(汎小葉性)に分布するすりガラス陰影を認める.
  • A2:解説に詳細を記す.

解説

MTX使用下のRA患者に生じた急速進行性の呼吸不全である.また,入院後の検査でβ-Dグルカンの高値 (66.5 pg/mL) が判明した.CT所見 (図2) では,すりガラス陰影がモザイク状に広がっている.健常肺との境界は直線であり(),これは小葉間隔壁に相当する.すなわち,病変の強さが小葉ごとに異なっていることをこの所見は示している (汎小葉性).びまん性のすりガラス陰影でこのような分布は比較的珍しく,RA患者でこの所見を見た場合はPCPおよびMTX肺炎を強く疑う.これら画像所見と,比較的急速な臨床経過,検査成績,特にβ-Dグルカンの高値とを総合してPCPと診断した.なお,喀痰は誘発しても採取されず,全身状態が不良であり気管支鏡検査も施行できなかったため,Pneumocystisの菌体は検出できなかった.ST合剤 (9錠/日) とステロイド製剤(メチルプレドニゾロン125 mg/日) による治療を開始したところ,すみやかに呼吸不全から離脱し,画像所見も改善した.臨床像からはMTX肺炎も鑑別にあがり,RA患者では両者の鑑別は困難であるが,本例においては,治療でβ-Dグルカンが低下した経過 (治療6週後は陰性化) からもPCPと考えてよい.

MTXはRA治療の中心的薬剤であり,RA患者の半数以上に広く使われるようになった.しかしながら重篤な副作用も稀ではなく,なかでも肺合併症が重要である.MTX肺炎とPCPである.

PCPは従来HIV感染者における日和見肺炎として広く知られてきたが,近年はHIV感染以外の種々の病態,例えば免疫抑制薬使用下の膠原病や悪性腫瘍患者におけるPCP (まとめてnon-HIV PCPと呼ぶ) がクローズアップされている.HIV感染者におけるPCPは,強い免疫低下状態において生じ,肺組織における菌体量は多いが,炎症所見は軽度であり,死亡率も低い (10~20%).これに対して,non-HIV PCPにおいては,免疫状態が必ずしも低下しておらず,菌体量は少ないが,強い炎症が起こり,死亡率が高い (30~50%).Non-HIVのPCPにおいては,少量のPneumocystis菌体に対する宿主の過剰な免疫応答と,その結果生じる組織障害が重症化に関与しているとの理解が国際的に定着している.したがってnon-HIV PCPの治療においては,抗菌薬とともに,十分量のステロイド製剤を早期に投入することが肝要となる.

RA患者治療中に発症するPCPは,MTX投与下,そして最近はTNF-α阻害薬などの生物学的製剤投与下において,少なからぬ頻度で認めるようになった.近年進歩したRA治療を“光”とすればいわば“影”の問題であり,このようなことが起こりうるとの認識と,遭遇した場合の早期の適切な対応が望まれる.

図1 胸部単純X線写真
図2 胸部HRCT

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文献

  1. 徳田 均:非AIDS症例におけるニューモシスチス肺炎.「ニューモシスチス肺炎update」,日本胸部臨床,69:112-123, 2010
  2. 森 俊輔 ほか:関節リウマチ治療に伴うニューモシスティス肺炎―早期診断と発症予防.呼吸,31:409-417, 2012

プロフィール

萩原 清文(Kiyofumi Hagiwara)
JR 東京総合病院リウマチ・膠原病科
徳田 均(Hitoshi Tokuda)
社会保険中央総合病院呼吸器内科
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