心拡大があり,右のCP angleがdullで胸水を疑います….
胸部単純写真では右肺門部にX線不透過の境界明瞭な結節を認める(図1A,B○).陳旧性結核の所見としての肺門リンパ節の石灰化との鑑別が問題となる.結節は右下葉気管支入口部に一致して存在している.また,右下葉の含気低下,右胸水,心拡大を認める(図1A▶).
胸部CTでは,気管支内腔に強いアーチファクトを伴うX線不透過の構造物を認め(図2○)形状と存在部位より,気管支異物と確認された.
気道に停留した外来性の固形物のことを気道異物と総称し,部位により上気道 (鼻腔,咽頭,喉頭) 異物,下気道(気管,気管支)異物に分けられ,さらにその存在部位で,例えば気管支異物などと呼称する.本症の発生は全年齢を通じ二峰性分布を示す.幼小児では,豆類などの食物(特にピーナッツ)が多い.ピーナッツでは,分解産物の遊離脂肪酸が粘膜を刺激して炎症を起こすことが知られている.一方,成人では歯科関連異物,食物などが多く,嚥下困難,脳血管障害,精神障害,麻痺を伴う高齢の患者に多い1,2).
気道異物では発症直後に,咳嗽,喘鳴,呼吸困難,チアノーゼなどの症状を急性に示すことがあるが,本例のように症候が少なく気づかれない場合もあり,無気肺,閉塞性肺炎,反復性肺炎,膿胸などを契機に発見されることもある.
本例ではこの後,気管支ファイバースコープにて異物(歯冠)を除去した.本例の気管支異物誤嚥発生の時期は不明だが,気管支内に肉芽の形成がみられ(図3A→),ある程度日数が経過したものと思われた.抗菌薬を投与し,約1週間後に撮影した胸部単純X線写真では右胸水の消失がみられた.
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