画像診断Q&A

レジデントノート 2013年9月号掲載
【解答・解説】短期間で出現・消失する胆石

Answer

偽胆石症

A:術前にはみられなかった胆石が,5日間という短期間のうちに出現している(図3).CTRXが高用量投与されていることから,偽胆石症と考えられる.明らかな胆嚢炎の所見は認められずWBCの上昇は説明しづらいが,γ-GTP上昇の原因となりうる.

経過観察し,2カ月後の腹部エコーで胆石の消失が確認された(図4).

また,術後5日目のCTでは腹腔内にfree air(図3)が出現している.上部消化管内視鏡検査では消化管穿孔の所見を認めず原因は不明であったが,経過観察にて消失した.

解説

CTRXは第3世代セフェム系抗菌薬で,幅広い抗菌スペクトラムや良好な組織移行性を有することから現在頻用されている薬剤の1つである.血中半減期が6~9時間と長いことが特徴で,セフェム系抗菌薬で唯一1日1回投与が認められている.CTRXの副作用には肝機能障害,発疹,下痢が多いが,他剤にみられない特有の副作用として偽胆石症(biliary pseudolithiasis)がある.

CTRXは血中で血清アルブミンと結合して組織に移行し,未変化体のまま尿および胆汁とともに排泄される.CTRXはカルシウムイオンとの親和性が高く,胆汁中で結合して沈殿物を形成すると考えられている.この物質は画像検査において胆石に類似した所見を示すが,早期に自然消失する特徴から偽胆石と呼ばれる.

偽胆石症の発症時期はCTRX投与開始後2~42日,頻度は10~57%と報告により幅がある.2g/日または100mg/kg/日以上の高用量投与で発症率が高いと言われている.多くは無症候性で,腹痛・嘔気・嘔吐など症状を呈するのは0~19%に限られる.偽胆石は砂状であり自然に少しずつ胆嚢から排泄されるため,治療は基本的にCTRXの投与中止・経過観察のみでよい.ほとんどは投与中止後半年以内に消失する.ただし稀ではあるが,総胆管への嵌頓,急性胆嚢炎,急性膵炎などの合併症も生じうるので留意が必要である.また,偽胆石のほかに腎・尿路結石の発生も報告されている.

偽胆石症の画像所見は非特異的なものである.上述のように偽胆石はカルシウム結石であり,CTでは高吸収結石として認められる.腹部エコーでは高エコーを示し,強い音響陰影を伴う.これらの所見は一般的な胆石と同様であり,画像所見のみでの鑑別は難しい.過去画像との比較,服薬歴の確認が重要となる.

本症例では,術後のCTで胆嚢内に高吸収を認め胆石と考えられるが,術前のCTでは確認されない点が通常の胆石の経過とは異なる.このように短期間のうちに胆石が出現した場合は偽胆石症を疑い,服薬歴を確認するとよい

図3 腹部造影CT(術後5日目,図2の拡大)
図4 腹部エコー(2カ月後)

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プロフィール

荒井 学(Manabu Arai)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
田村 謙太郎(Kentaro Tamura)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
陣崎 雅弘(Masahiro Jinzaki)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
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