画像診断Q&A

レジデントノート 2013年9月号掲載
【解答・解説】発熱,胸痛,呼吸困難で受診した30歳代男性

Answer

敗血症性肺塞栓症の1例

  • A1:左中下肺野に結節影が多発している(図1).右下肺野の胸膜肥厚を認める(図1).右鎖骨下静脈より中心静脈カテーテルが挿入されている.
  • A2:敗血症性肺塞栓症を疑い,カテーテル刺入部の発赤などの有無の確認,血液培養,胸部CT,心臓超音波検査,β-Dグルカン測定を行う.

解説

敗血症性肺塞栓症の典型例である.中心静脈カテーテル挿入中に,高熱・胸痛・呼吸困難があり,胸部単純X線写真にて多発結節影を認めることから本症を疑う

敗血症性肺塞栓症は,敗血症に伴う菌塊が塞栓子となり末梢肺動脈に塞栓をきたす疾患である.感染性心内膜炎や感染性静脈炎が原因となることが多いが,近年はカテーテルや心臓ペースメーカー感染による発症の増加が指摘されている.診断には2セット以上の血液培養が必須で,それに加えてカテーテル刺入部の塗抹培養や,抜去カテーテルの培養を積極的に行う.起因菌は,黄色ブドウ球菌が50~80%を占めるとされるが,中心静脈カテーテル感染ではカンジダもときに起因菌となり,その場合カンジダ眼内炎の併発に注意を要する.カンジダ血症ではβ-Dグルカンが正常の数十倍まで上昇することが多いので,カテーテル感染が疑われる場合は必ずβ-Dグルカンを測定しておく.本症例の胸部単純X線写真 (図1) では左中下肺野に多発結節影を認める ().右下肺野に胸膜肥厚を認めるが (),これは既往の胸膜炎後の変化である.胸部CT (図2) では,両肺胸膜側優位に不整型結節影が多発しており (),血行性の分布が考えられる.鑑別として,転移性肺腫瘍,肺クリプトコッカス症,多発血管炎性肉芽腫症 (granulomatosis with polyangiitis:GPA) /Wegener肉芽腫症などがあげられるが,急性の経過,発熱などの症状,中心静脈カテーテル挿入中であることから,敗血症性肺塞栓症を第一に考えた.カテーテル挿入部の発赤はなかったが,直ちにカテーテルは抜去,血液培養・カテーテル先の培養を行い,結果メチシリン感受性黄色ブドウ球菌 (MSSA) が検出され診断が確定した.カテーテル抜去後,4週間の抗菌薬治療で改善が得られた.

なおβ-Dグルカンは陰性でカンジダは検出されず,心臓超音波検査にて感染性心内膜炎は否定され,胸部造影CT上は肺動脈内の血栓を認めなかった.

敗血症性肺塞栓症のCT画像の特徴は,Kuhlmanらの検討1)では,5~35 mm大の末梢の結節83%,肺動脈の末梢に結節や空洞がみられるfeeding vessel sign 67%,空洞50%,胸膜結節陰影50%,気管支透亮像28%とされている.

原因疾患として,頻度は少ないが麻薬常習者で薬物注射による発症や,扁桃炎など耳鼻科系感染症から内頸静脈に血栓性静脈炎をきたし本症に至るLemierre症候群(若者に多い) は知っておくとよい.麻薬常習者では腕の注射痕の存在,Lemierre症候群では先行する上気道炎症状に続いて胸鎖乳突筋に沿った圧痛を認めることが多い.

図1 来院時胸部単純X線写真
図2 胸部CT

クリックして拡大

参考文献

  1. Kuhlman, J. E., et al.:Pulmonary septic emboli:Diagnosis with CT. Radiology, 174:211-213, 1990

プロフィール

笠井 昭吾(Shogo Kasai)
社会保険中央総合病院 呼吸器内科
徳田 均(Hitoshi Tokuda)
社会保険中央総合病院 呼吸器内科

TOP