画像診断Q&A

レジデントノート 2013年10月号掲載
【解答・解説】稀な疾患ですが,覚えておきたい急性腹症の1つです

Answer

Henoch-Schönlein紫斑病

  • A1:十二指腸水平部から空腸近位にかけて壁肥厚が認められる(図A~C).粘膜の異常濃染と粘膜下浮腫を示唆する低吸収(図C)も認められる.腸間膜には多数の腫大したリンパ節が認められる(図B~C).非特異的な小腸の炎症性変化である.
  • A2:下肢の紫斑を考慮するとHenoch-Schönlein紫斑病(Henoch-Schönlein purpura:HSP)が最も疑われる所見である.

解説

図 腹部造影CT

クリックして拡大

Henoch-Schönlein紫斑病(HSP)は成人よりは小児に好発する全身性の小血管炎を主徴とする疾患である.手に触れる紫斑 (palpable purpura) が特徴的で,下肢に生ずることが多いが上肢や体幹部にみられることもある.皮膚病変はほとんどすべての患者にみられる.皮膚病変に引き続き,関節や消化管,腎に病変が生じるとされるが,腹痛や関節症状が皮疹に先行することもあり,小児では急性腹症の鑑別の1つとして念頭におく必要がある.

他の血管炎と区別するため,アメリカリウマチ協会から以下の4項目中2項目以上を満たせばHSPと診断するという診断基準が提唱されている.

  1. 20歳以下での発症
  2. 手に触れる紫斑(palpable purpura)
  3. 腹痛
  4. 生検での細動脈,細静脈の血管壁への好中球浸潤

腸管病変の所見としては腸管壁の肥厚や内腔の狭小化,潰瘍形成などが報告されている.強い症状のわりに腸管穿孔や閉塞は少なく,通常は2週間程度で後遺症を残さず治癒する.

腹部CTで腸管において複数カ所の腸管壁肥厚(スキップ病変),腸間膜の浮腫,血管の怒張,リンパ節腫脹があればHSPを考慮する必要があるとする報告もあるが,残念ながらHSPに特徴的,特異的な所見はない.このため紫斑に先行する腸管病変をきたしたHSPはしばしば診断に苦慮することとなるが,その際はD-Dimerや第ⅩⅢ因子等の血管炎指標が診断の一助となる.

本症例では下肢の皮疹(紫斑)の存在が診断の決め手となった.画像上はループス腸炎やアニサキス症,好酸球性腸炎なども鑑別にあげられる.

<症例のポイント>

急性腹症の診療時には小腸にも注意して観察しよう.

また,皮疹の所見が急性腹症の診断の決め手になることもあり,身体所見を十分にとること,その情報を読影医と共有することが望ましい.

プロフィール

田村 謙太郎(Kentaro Tamura)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
陣崎 雅弘(Masahiro Jinzaki)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
サイドメニュー開く

TOP