画像診断Q&A

レジデントノート 2013年12月号掲載
【解答・解説】くり返す肺炎の診断で受診した20歳代男性

Answer

夏型過敏性肺炎の1例

  • A1:単純X線写真では両肺に広範なすりガラス陰影を認め(図1),CTではびまん性に小葉中心性の粒状影,小結節影を認める(図2).
  • A2:過敏性肺炎などの外因性因子に対するアレルギー性肺炎を考え,生活環境の詳細を医療面接にて聴取し,血液検査で抗Trichosporon抗体検査,ほかに気管支鏡検査などを行う.

解説

本症例は,夏型過敏性肺炎の典型例である.帰宅後に再燃がみられたこと,両肺に広範な小葉中心性の粒状影を認めること,発症が夏季(4月~11月)であることから本症を疑い,居住環境・職業・鳥飼育歴などの詳細な医療面接を行うことが診断のカギとなる.

過敏性肺炎は真菌胞子,異種タンパクなどの有機じん埃を反復吸入することにより感作されて起こるアレルギー性肺炎である.わが国では「夏型」が最も頻度が高く,約70%を占め,農夫肺・換気装置肺炎・鳥飼病がついで多い(それぞれ5%前後とされる).発症環境としては,高温多湿な夏季,日当たりの悪い古い日本家屋での発症が多い.専業主婦に多く,男女比は1:2とされる.家カビの1つであるTrichosporon属のT. asahiiT. mucoidesが原因抗原である.診断には,居住環境の医療面接(日当たり,湿気,カビの有無など)が重要であり,詳細な検査として免疫学的検査にて抗Trichosporon抗体陽性,気管支鏡検査では,気管支肺胞洗浄(bronchoalveolar lavage:BAL)にてリンパ球主体の細胞増多とCD4/8比の低下,経気管支肺生検(transbronchial lung biopsy:TBLB)にてリンパ球浸潤による胞隔炎と類上皮細胞肉芽腫などを認めれば診断が確定する.画像所見では,典型例では本症例のごとく広範な粒状影,小結節影(図2)を認める.粒状影は胸膜,血管から一定の距離(2~3mm)をおいて規則正しく並んでいることから,病変の首座が小葉中心(=細気管支周囲)に存在すると読める(図3).

本症例では,鉄筋ではあるが築30年の古いアパートに居住,北向きで日当たりは悪いとのことであった.家庭訪問を行ったところ,台所や風呂場は湿気が多くカビ臭い環境であった.血清の抗T. asahii抗体は0.83と陽性(基準値0.15未満),BALにて細胞数6.7×105/mL(Ly 85%)とリンパ球主体の細胞増多,CD4/8比0.23と低下,TBLBにて類上皮細胞肉芽腫を認め,夏型過敏性肺炎と診断した.前医では肺炎の診断で入院し,抗菌薬で軽快したと判断されたが,実際は入院したことで抗原回避され自然軽快,しかし自宅に戻ったことで再発したというわけである.正しく診断されないと今回のようにいたずらに入院をくり返すことになるので,びまん性陰影を呈する呼吸器疾患の診断においては,居住環境などの医療面接がいかに重要であるかがわかるであろう.患者さんには転居を勧め,自宅ではなく実家へ退院とし,その後再発はない.

図1 胸部単純X線写真
図2 胸部CT(肺野条件)
図3 胸部CT(肺野条件,図2と別スライス)

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プロフィール

笠井 昭吾(Shogo Kasai)
社会保険中央総合病院 呼吸器内科
徳田 均(Hitoshi Tokuda)
社会保険中央総合病院 呼吸器内科
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