画像診断Q&A

レジデントノート 2014年1月号掲載
【解答・解説】発熱,慢性咳嗽,労作時呼吸困難を主訴に来院した70歳代男性

Answer

ニューモシスチス肺炎(Pneumocystis pneumonia:PCP)

  • A1:胸部単純写真(図1)では,明らかな異常陰影は指摘し難い.
    胸部HRCT(図2)では,全肺野に濃度の均一な淡いすりガラス影を認める.
    左肺底部では正常濃度の部分が残存し(),モザイク状に濃淡が認められる.
  • A2:PCP のほかに薬剤性肺炎,ウイルス性肺炎,急性好酸球性肺炎などを考え,気管支鏡検査,血清β -D-Glucan の測定を行う.

解説

胸部単純写真では右下肺野の透過性がやや低下しているが,横隔膜の位置が高く,吸気不十分でも説明可能であり,明らかな異常があるとはいえない.

胸部HRCT では一見すると肺野の濃度は均一で,異常はないようにみえるが,肺野の濃度と比較して気管支の内腔が明らかに黒く認識される(図2 A:通常,前者はほとんど空気,後者は空気そのものなので,濃度差はごく僅か).これは“dark bronchus sign” と呼ばれており1),肺野のびまん性すりガラス影の存在を示唆する所見である.また左肺底部では一部正常濃度の小葉が残存し,すりガラス影との間にモザイク状の濃淡を形成しており(図2 B),ここからも病変の存在が認識可能である.

このようなびまん性の肺野濃度上昇をきたす疾患としては,感染症ではPCP がまず鑑別にあがる.本例では薬剤(メサラジン)の内服中であり,薬剤性肺炎も否定できない.ほかにウイルス性肺炎,急性好酸球性肺炎も鑑別としてあがるが,本例の経過は亜急性なので鑑別の順位は下がる.

入院後の検査では,HIV 抗体が陽性,CD4 陽性リンパ球は54/ μ L と低下しており,血清β -D-Glucan は600 pg/mL 以上と著明に上昇していた.このためHIV に伴うPCP(HIV-PCP)を疑い,直ちにmPSL 500mg/ 日 3 日間を投与,ST 合剤 9錠/ 日を開始した.呼吸不全はすみやかに軽快した.入院3日目に施行した気管支鏡検査で,気管支肺胞洗浄液のGrocott 染色にてPneumocystis jirovecii が検出され,PCP との確定診断を得た.その後治療途中にST 合剤による肝障害が出現したためアトバコン内服に変更したものの経過は順調であり,第22 病日に退院,外来でART(antiretroviral therapy:抗レトロウイルス療法)を導入した.

HIV-PCP は通常両側びまん性のすりガラス影を呈するが, 胸部単純写真のみでは異常所見を指摘できない症例が少なからず存在する.ある研究では93 例の胸部単純写真のうち39 %の症例が放射線科医によって正常と読影された2).これに対しHRCT は感度・特異度ともに優れており,PCP の診断,除外診断に広く使用されている.しかしHRCT をもってしても,本例のように完全に均一なすりガラス影を呈する症例の場合,健常肺との比較が困難で,見落とす危険がある.このような場合も,肺野と気管支内の濃度の差異,肺野のごく一部にみられる濃淡などに着目した慎重な読影により,異常所見を見出すことができる.今回のような亜急性の呼吸器症状,呼吸困難など臨床的に呼吸器疾患の存在が疑われる症例では,すりガラス影の有無についての判断は慎重に行うべきである.

図1 胸部単純X 線正面像
図2 胸部HRCT 肺野条件

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文献

  1. High - Resolution CT of the Lung 4t hed.(Webb, W. R., et al. ),Lippincott Williams & Wilkins, 2008
  2. Opravil, M., et al.:Shortcomings of chestradiography in detecting Pneumocystis cariniipneumonia. J Acquir Immune Defic Syndr, 7(1):39-45, 1994

プロフィール

砂金 秀章(Hideaki Isago)
社会保険中央総合病院 呼吸器内科
徳田 均(Hitoshi Tokuda)
社会保険中央総合病院 呼吸器内科
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