画像診断Q&A

レジデントノート 2014年6月号掲載
【解答・解説】レジオネラ肺炎に伴う一過性の脳病変

Answer

レジオネラ肺炎に伴う一過性脳梁膨大部病変

  • A1:脳梁膨大部にT2WI/FLAIRにて卵円形の淡い高信号を認める(図1A).DWIでは著明な高信号を呈する(図1C).
  • A2:レジオネラ肺炎に合併した一過性脳梁膨大部病変(transient splenial lesion).

解説

一過性脳梁膨大部病変は,以下に記すようなさまざまな病態,病因によって生じる比較的稀な所見で,MERS(clinically mild encephalitis/encephalopathy with a reversible splenial lesion:可逆性脳梁膨大部病変を有する脳炎・脳症)とも呼ばれ,原因不明だが比較的予後良好の疾患群である.

具体的な病因としては,薬剤性(抗痙攣薬,化学療法)や,感染(インフルエンザ,サルモネラ,結核,O-157大腸菌,レジオネラ,パラチフス,麻疹,ロタウイルス,HHV-6,EBウイルス,HIVなど)が多いとされる.特に抗痙攣薬休薬後の24時間〜数週間で出現することがよく知られている.ほかには,アルコール中毒,低血糖・低栄養などの代謝異常,全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE),腎不全,電解質異常(高ナトリウム血症),外傷や痙攣重積などの病態でも報告されている.

臨床症状は発熱,頭痛,痙攣や意識障害,せん妄などであるが,無症状のことも多い.一般に可逆性であることが多く,数日以内に画像所見は消失し臨床症状も1カ月以内に消失するとされる.

画像上,CTでは脳梁膨大部に淡い低吸収域を認めるが,コントラストがつかず,実際に指摘することは難しい.MRIではT2WI,DWIにおいて脳梁膨大部に卵円形で内部均一な高信号を認める.T1WI(T1強調画像)では低信号で造影効果は認めない.ADC(apparent diffusion coefficient:みかけの拡散係数)の低下がみられる点で,PRES/RPLS(posterior reversible encephalopathy/ reversible posterior leukoencephalopathy syndrome:可逆性後頭葉白質脳症)にみられるような血管性浮腫と区別される.同様にADCの低下がみられる脳梗塞(細胞性浮腫)と異なり可逆性の病変であることは興味深い.ADCの低下の原因として髄鞘内浮腫や炎症細胞浸潤などが推測されているが明らかではない.

鑑別疾患として急性散在性脳脊髄炎(acute disseminated encephalomyelitis:ADEM)や多発性硬化症(multiple sclerosis:MS),Marchiafava-Bignami病なども白質病変が脳梁膨大部に及ぶことがあるが,病変の主座や臨床経過などから鑑別に苦慮することは少ないものと思われる.

図1 入院時頭部MRI A)T2W1 C)DWI

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<まとめ>

  • DWI 高信号 = 脳梗塞(急性期)ではない!
  • 一過性脳梁膨大部病変は稀だが予後のよい疾患であり,さまざまな病態に随伴して生じる.
  • MRIでこの所見をみたときは既往歴や背景疾患の検索を行って病因を同定し,必要以上の侵襲的な検査や治療を避けることが重要である.

参考文献

  1. 「よくわかる脳MRI 第3版」(青木茂樹,他/編著),学研メディカル秀潤社,2012
  2. Takanashi J, et al:Differences in the time course of splenial and white matter lesions in clinically mild encephalitis/encephalopathy with a reversible splenial lesion(MERS).J Neurol Sci, 292:24-27, 2010

プロフィール

宮澤 雷太(Raita Miyazawa)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
田村 謙太郎(Kentaro Tamura)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
陣崎 雅弘(Masahiro Jinzaki)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
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