画像診断Q&A

レジデントノート 2014年7月号掲載
【解答・解説】膵炎と黄疸をきたす,一度おさえておきたい疾患です

Answer

IgG4関連疾患

  • A1:腹部造影CT(図1)において膵は腫大し,分葉状の構造は不明瞭で辺縁は平滑になっている.膵辺縁に被膜様構造(図1)を認め,自己免疫性膵炎の所見である.
    MRCP(図2)では,主膵管の不整な狭小化を認める(図2).膵内胆管は狭小化し(図2),それより上位の胆管拡張を認める.IgG4関連硬化性胆管炎の所見である.
  • A2:自己免疫性膵炎は全身疾患であるIgG4関連疾患との強い関連性をもつ疾患で,血清IgG4の測定が診断の要点となる.本例はIgG 1,833 mg/dL,IgG4 380 mg/dLと異常高値であり,自己免疫性膵炎の診断が確定した.

解説

自己免疫性膵炎は,臨床的特徴として,上腹部不快感,胆管狭窄による閉塞性黄疸,糖尿病を認めることが多い.急性膵炎や慢性膵炎の急性増悪時にみられるような強い腹痛を認めることは少なく,腹痛はあっても軽度かほとんど認めないことが多い.長期予後は不明であるが,膵石合併の報告がある.リンパ球と形質細胞の高度な浸潤と線維化を組織学的特徴とし,ステロイドに劇的に反応することを治療上の特徴とする.

本邦より発信された疾患概念であり,原因は不明であるが,高γグロブリン血症,高IgG血症,高IgG4血症や自己抗体の存在,ステロイド反応性などより,その病態に自己免疫機序の関与が考えられてきた.血清IgG4 の上昇とIgG4 陽性形質細胞の著しい浸潤を伴う膵外病変〔硬化性胆管炎,硬化性唾液腺炎,後腹膜線維症,腹腔・肺門リンパ腺腫大,慢性甲状腺炎,間質性腎炎など〕が特徴であり,今ではIgG4 関連疾患(IgG4-related disease)の膵病変と考えられている.病理組織学的には,① 導管周囲を中心とする,著しいリンパ球および形質細胞の浸潤,② 特徴的な花筵状線維化,③ 閉塞性静脈炎,④ 多数のIgG4 陽性形質細胞浸潤の4点を特徴とするlymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis(LPSP)を呈し,LPSPはわが国の自己免疫性膵炎のほとんどを占める.

画像的には,① 主膵管狭細像,② 膵臓表面の凹凸が消失し,sausage-like appearanceといわれるびまん性あるいは限局性膵腫大,③ capsule-like rim(被膜様構造)と呼ばれる膵周囲の被膜様変化が特徴的とされる.被膜様構造は膵周囲の線維化によるものと考えられ,早期には造影不良であるが,平衡相にかけて緩徐に増強され,MRIでは低信号を呈する.

限局性病変の場合には,膵癌との鑑別が最も重要であるが,脂肪抑制T1強調像もしくは造影早期相において病変内部の正常膵実質と同程度の点状高信号,および造影CTや造影MRI後期相で病変内部が均一な濃染を示す所見は,自己免疫性膵炎に特異的である.

自己免疫性膵炎はときに腫瘤を形成し,膵癌との鑑別が問題となる疾患である.特徴的な画像所見を呈し,膵外病変を含めて本疾患の鑑別に画像が果たす役割は大きい.近年では造影超音波検査の有用性も報告されている.非典型的な膵炎をみた場合は本疾患を疑い,血清IgG4測定を含めた適切な追加検査を行うことで,過大な侵襲を避けるようにしたい.

図1 来院時腹部造影CT
図2 来院時MRCP

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参考文献

  1. 「肝胆膵の画像診断―CT・MRIを中心に―」(山下康行/編著),pp322-323,学研メディカル秀潤社,2010
  2. 日本膵臓学会・厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班:報告 自己免疫性膵炎臨床診断基準2011. 膵臓, 27:17-25,2012

プロフィール

須田 麻子(Asako Suda)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
西村 亜希子(Akiko Nishimura)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
田村 謙太郎(Kentaro Tamura)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
陣崎 雅弘(Masahiro Jinzaki)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
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