画像診断Q&A

レジデントノート 2014年12月号掲載
【解答・解説】突然の腹痛.覚えておきたい疾患です.

Answer

十二指腸憩室炎

  • A1:十二指腸憩室炎
  • A2:十二指腸憩室炎から憩室穿孔をきたした.

解説

十二指腸憩室は消化管憩室のなかでは結腸についで頻度が高く,健診の上部消化管造影検査では5〜10%,剖検では22%の頻度とされている.先天性の真性憩室は少なく,多くは筋層を欠く仮性憩室であり,加齢とともに頻度が増加する.十二指腸憩室自体の多くは治療対象とならないが,出血や炎症,穿孔,膵胆管の圧迫(Lemmel症候群)などの合併症を生じると治療適応となる.十二指腸憩室は結腸憩室と比較して炎症をきたす頻度が少なく,その原因として憩室のサイズが大きいことや食物通過が速いこと,相対的に細菌数が少ないことなどが考えられている.

穿孔は稀であるが重篤な症状をきたす.穿孔の原因としては憩室炎が最も多くついで腸石,医原性,潰瘍,外傷,異物が続く.臨床症状としては腹痛が最も多いが,その部位もさまざまで特異な症状はなく腹膜刺激症状を認めないことも多い.胆嚢炎や膵炎,十二指腸潰瘍などに症状が類似するため,診断において画像検査(特にCT)の果たす役割は大きい.

本症例はBillroth II法再建術後であった.Billroth II法再建術後の輸入脚では腸内容の鬱滞から細菌数が増加し,腸石も発生しやすい環境であると推測されている.本症例では腸石の存在は明らかでないが,憩室炎から穿孔に至った原因として以前に施行された再建術が一因となった可能性も考えられる.

十二指腸憩室穿孔の治療はこれまで手術が多く行われていた.基本の術式は憩室切除,縫合閉鎖に加えて後腹膜ドレナージを行うことである.炎症が高度である場合は縫合不全のリスクが高くなるため縫合部への大網充填術,被覆術を追加する.十二指腸憩室はファーター乳頭部の近傍に生じることが多く,手術時には胆管損傷・感染合併に最大限の注意を払う必要がある.

近年では経皮的後腹膜ドレナージを併用しつつ保存的に治療する報告も増えているが,敗血症や腹膜刺激症状をきたしている症例は可及的すみやかに手術を行うことが望ましいとされ,保存的に治療を行う場合も注意深い経過観察が必要である.

図1 受診2年前に撮影された上部消化管造影
図2 腹部造影CT(初診時)
図3 腹部単純CT(図2 撮影の8時間後)

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<症例のポイント>

炎症や腸管外ガスの局在,広がりを正しく認識し,原因となった病変を同定する.

憩室穿孔は稀だが重篤となりうる疾患であり,すみやかな診断が重要である.

プロフィール

田村 謙太郎(Kentaro Tamura)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
陣崎 雅弘(Masahiro Jinzaki)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
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