画像診断Q&A

レジデントノート 2015年1月号掲載
【解答・解説】関節リウマチにて治療中に,乾性咳嗽,呼吸困難で受診した60歳代女性

Answer

メトトレキサート(MTX)による薬剤性肺障害の1例
(アダリムマブによる肺障害も完全には否定できない)

  • A1:両肺に広範なすりガラス陰影を認める(図1).
  • A2:薬剤性肺障害,ニューモシスチス肺炎を疑い,薬剤使用歴の聴取,気管支鏡検査,気管支肺胞洗浄(bronchoalveolar lavage:BAL)を行う.

解説

本症例は,MTXによる薬剤性肺障害の症例と判断される.

MTX内服中に乾性咳嗽,呼吸困難などの症状,画像上両肺にびまん性に広がるすりガラス陰影などより本症を疑う.また生物学的製剤投与中であり,ニューモシスチス肺炎(Pneumocystis pneumonia:PCP)も鑑別として考える.

近年MTXや,TNF-α阻害薬をはじめとする生物学的製剤の導入により,多くのRA患者に劇的な病状の改善がもたらされた.しかし,その一方で,副作用としてさまざまな呼吸器合併症が問題となっている.RA患者は年齢層も高く,また基礎疾患としてさまざまな呼吸器疾患をもつ.慢性に経過する間質性肺炎(interstitial pneumonia:IP)はRA患者の約2割でみられるとの報告もある.本症例のようなびまん性のすりガラス陰影を認める場合,もともとのIPの急性増悪,MTX,生物学的製剤などによる薬剤性肺障害,PCPの鑑別が問題となる.鑑別のポイントは,過去の画像を参照することで,既存のIPがない場合,IPの急性増悪は否定してよい.薬剤使用歴も重要で,生物学的製剤の薬剤性肺障害は投与開始後2~6カ月に集中する.MTXによる薬剤性肺障害は,60%が6カ月以内,80%が2年以内に発症するが,ときに数年~十数年後での発症もみられるので注意が必要である.CT画像では汎小葉性のすりガラス陰影が特徴である(図2).

日和見感染症のPCPとの鑑別も重要である.一般的に喀痰からのPneumocystis jiroveciiの検出は困難であるので,鑑別診断のためには気管支鏡検査,気管支肺胞洗浄は不可欠である.BAL液でのディフ・クイック染色やグロコット染色による菌体の検出を試みるが,陽性率は低いので,疑わしい場合はPCR検査もオーダーする.また血液検査ではβ-Dグルカン測定が有用である.

本症例では,基礎疾患として慢性のIPはなく,IPの急性増悪は否定的であった.胸部CT(図2)では,両肺に広範な汎小葉性のすりガラス陰影を認め,MTXによる薬剤性肺障害とPCPが鑑別として考えられた.β-Dグルカンは4.9 pg/mLと上昇なく,BALの結果ディフ・クイック染色やグロコット染色で菌体は認めず,P. jiroveciiのPCR検査も陰性であった.細胞数22.0×105 /mL,細胞分画ではリンパ球72%,CD4/8比8.81と,リンパ球主体の細胞増多を認めた.以上の結果よりMTXによる薬剤性肺障害と診断した.治療としてステロイドパルス療法およびステロイド内服にて改善が得られた.

なお,生物学的製剤による薬剤性肺障害に関しては,RAの場合,生物学的製剤に併用してMTXが使用されることが多いため,どちらが原因薬剤かの鑑別は難しい.しかし生物学的製剤単独投与下での発症報告もあり,原因薬剤の1つとして考える必要がある.

図1 胸部単純X 線写真
図2 胸部CT(肺野条件)

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プロフィール

笠井 昭吾(Shogo Kasai)
東京山手メディカルセンター 総合内科
徳田 均(Hitoshi Tokuda)
東京山手メディカルセンター 呼吸器内科
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