画像診断Q&A

レジデントノート 2015年2月号掲載
【解答・解説】喘息症状で発症し,発熱をきたした60歳代女性

Answer

原発性インフルエンザウイルス肺炎(primary influenza virus pneumonia)と,それを契機に発症した気管支喘息発作

  • A1:両側肺門部近傍に淡い斑状陰影,網状陰影を認める(図1).
  • A2:迅速インフルエンザ抗原検査.
  • A3:原発性インフルエンザウイルス肺炎を契機に喘息発作をきたしたと考え,インフルエンザ治療とともに,副腎皮質ステロイドホルモン,気管支拡張薬などで喘息発作に対する治療を行う.

解説

本例は,入院時のインフルエンザ(Flu)迅速検査にてFluA型陽性であり,Fluウイルス感染により,ウイルス性肺炎と喘息発作をきたしたと考えた.肺炎については抗Flu薬にて3日目に解熱し,肺炎像も改善した.喘息発作についても,デキサメサゾン点滴,気管支拡張薬/ステロイド薬吸入,抗ロイコトリエン(LT)薬を用いて喘鳴の消失と酸素化の改善を認め,5日目に退院した.

Fluに合併する胸部陰影を認めた場合,① Fluウイルスそのものによる“原発性インフルエンザウイルス肺炎”,② Fluウイルス感染に伴う“二次性細菌性肺炎”,③ ①と②の“混合性肺炎”の病態が一般的に鑑別にあがる1).本例の肺炎は,Flu発症から短期間での発症であることや両肺の斑状網状陰影の画像所見より①と考えた.胸部CT画像でも両肺にスリガラス影や小葉内網状影を認め(図2),局所の浸潤影が目立つとされる細菌性肺炎よりもウイルス性肺炎を想定させる陰影であった.

喘息発作の契機となるウイルス感染として,RSウイルスやライノウイルスと並んでFluウイルスが報告されており,本例はFluウイルス感染が発作の契機であると思われる.また本例のFluウイルスの亜型の確認はできていないが,当時の流行から考慮して2009年に新型FluとされたA(H1N1)pdm09であった可能性が高い.A(H1N1)pdm09ウイルスは,気道の受容体への親和性の違いから,その他の季節性ウイルスより末梢気道~肺胞への親和性が高い2).A(H1N1)pdm09ウイルスでは,急速に下気道で増殖したウイルスが肺炎を呈し,それが粘液栓を産生し気道閉塞を生じさせ,ときに粘膜浮腫や気管支平滑筋の攣縮により喘息様症状をきたす可能性も示唆される.本例でもこのような機序が喘息発作の経過に加わっていたかもしれない.

治療については,本例では抗Flu薬を用い改善を認めたが,細菌の混合感染も想定される場合には抗菌薬を併用する.またウイルス感染に合併した喘息の治療において吸入ステロイドを用いると,一時的に局所のウイルス量は増加することが報告されているが,ウイルス感染契機の喘息発作においてもステロイドが第一選択とされる.また,ウイルス感染時には局所のLT産生酵素の発現が増加し,LTが気道中に増加することが報告されており,本例でも抗LT薬を併用した.

図1 入院時胸部X 線正面像
図2 入院時胸部CT 画像

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文献

  1. 藤倉雄二,川名明彦:インフルエンザ肺炎,94:2281-2287,2005
  2. Bautista E, et al:Clinical aspects of pandemic 2009 influenza A(H1N1)virus infection. N Engl J Med, 362:1708-1719,2010

プロフィール

田中 健介(Kensuke Tanaka)
JR東京総合病院呼吸器内科
山口 哲生(Tetsuo Yamaguchi)
JR東京総合病院呼吸器内科
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