画像診断Q&A

レジデントノート 2015年5月号掲載
【解答・解説】約半年の乾性咳嗽,呼吸困難で受診した40歳代男性

<ある1年目の研修医の診断>

両側胸膜側優位に網状影を認め,特発性肺線維症が疑われます.CT検査を行い,気管支鏡検査を行います.

Answer

鳥関連の慢性過敏性肺炎の1例

  • A1:両側上肺野胸膜側優位に網状影を認める.
  • A2:生活空間内にある何らかの吸入性抗原へのアレルギー反応で起こる慢性過敏性肺炎を疑い,生活歴の詳細な聴取,気管支鏡検査を行う.

解説

本症例は,鳥関連(おそらく羽毛布団使用による)慢性過敏性肺炎の症例である.

感染症は経過が緩慢であることから否定される.両側胸膜側優位に網状影を認めるが,分布が上肺野優位であり,間質性肺炎のなかでは特発性肺線維症(下肺野優位)とは分布が異なることが重要である.そこから慢性過敏性肺炎を疑い,居住環境・職業歴・鳥飼育歴などにつき詳細な医療面接を行うことが診断のカギとなる.

過敏性肺炎は真菌胞子,異種タンパクなどの有機じん埃を反復吸入することにより感作されて起こるアレルギー性肺疾患で,Ⅲ型・Ⅳ型アレルギー機序で発症する.急性型と慢性型に分類され,急性型については本邦では夏型過敏性肺炎が多い.一方,慢性型は鳥関連過敏性肺炎が多く,鳥飼育に加え近隣の鳩や羽毛布団使用による発症もみられる.以前は鳥飼病といわれたが,必ずしも鳥飼育中に限らず発症することから,近年は「鳥関連過敏性肺炎」と表現するのが一般的である.慢性過敏性肺炎では炎症所見が軽度であることが多く,抗核抗体やリウマトイド因子が3~4割の症例で陽性となるため,膠原病肺との鑑別も問題となる.

画像所見は,胸部X線写真において上肺野優位,胸膜側優位の不整型の浸潤影や網状影を認め,進行すると容積縮小を伴う. また,CTでは,斑状影が上肺野から下肺野まで散在性に,主として気道に沿って認められる.その他,すりガラス影や浸潤影,蜂巣肺が認められることも多い.これらの所見は特発性肺線維症でも認められるが,気道に沿った病変分布に着目することで鑑別が可能となる.ただし進行例で蜂巣肺が広範囲な場合には,特発性肺線維症との鑑別は困難である.

本症例の胸部X線写真(図1)では,両肺胸膜側優位に網状影を認める.陰影は下肺野のみではなく上肺野にも分布している.横隔膜ラインは明瞭であり,肺底部には病変は乏しいことがわかる(シルエットサインの原理).胸部CT(図2)では,上肺野の胸膜直下に不整形の浸潤影や蜂巣肺を認め,一部は気道に沿って散在性に存在している.これらの所見から,慢性過敏性肺炎を疑い精査を進めた.

気管支肺胞洗浄(bronchoalveolar lavage:BAL)では細胞数4.2 × 105/mL(リンパ球13%,好中球1%,肺胞大食細胞86%),CD4/8比0.82と,細胞数増多を認めるもののリンパ球増多は認めなかった.診断確定のために胸腔鏡下肺生検(videoassisted thoracic surgery:VATS)を施行.その結果,リンパ球主体の細胞浸潤と線維化を小葉中心性に認め,一部肉芽腫形成もみられた.また特異抗体測定ではハトIgA 抗体5.81μg/mL(ImmunoCAP®:カットオフ値1.9μg/mL)と陽性であり,鳥関連慢性過敏性肺炎と診断した.羽毛布団破棄など環境整備を指導し,ステロイド治療を開始,現在外来にて治療継続中である.

図1 来院時胸部X 線写真
図2 来院時胸部CT(肺野条件)

クリックして拡大

プロフィール

笠井 昭吾(Shogo Kasai)
東京山手メディカルセンター 総合内科
徳田 均(Hitoshi Tokuda)
東京山手メディカルセンター 呼吸器内科
サイドメニュー開く

TOP