画像診断Q&A

レジデントノート 2015年7月号掲載
【解答・解説】腹痛で受診した60歳代女性.右鼠径部腫脹の原因は?

Answer

De Garengeot’s hernia(虫垂の大腿ヘルニア)

  • A1:軸位断像(図1)では,右大腿動静脈の内側,恥骨筋の前面に大腿ヘルニアを認め,ヘルニア嚢内には管腔構造(図1)を認める.冠状断像(図2)で,管腔構造は盲腸から連続し,盲端となって終わっていることから,管腔構造は虫垂と同定できる.
  • A2:De Garengeot’s hernia

解説

鼠径部ヘルニアは,部位や発生機序によって外鼠径ヘルニア,内鼠径ヘルニア,大腿ヘルニアに分類される(図3).

  • 外鼠径ヘルニア:内鼠径輪から鼠径管を通って,外鼠径輪から鼠径部皮下に脱出する(図3).
  • 内鼠径ヘルニア:Hesselbach三角(下腹壁動静脈の内側の横筋筋膜)から直接外鼠径輪を通って鼠径部皮下に脱出する(図3).
  • 大腿ヘルニア:大腿輪(恥骨櫛靱帯,外腸骨静脈で囲まれた間隙)から大腿管内側を通り鼠径靱帯より下方の大腿側に脱出する(図3).

大腿ヘルニアは鼠径部ヘルニアの約5%を占め,中年以降の女性に多い.また,ヘルニア門となる大腿輪が狭く,強固な裂孔靱帯や鼠径靱帯に囲まれているため,嵌頓例が多いことが特徴である.

診断はCTや超音波検査にて行うが,大腿ヘルニアと内・外鼠径ヘルニアとの鑑別が難しい場合もある.鑑別には,大腿ヘルニアは鼠径靱帯の下を通ることやヘルニア内容による大腿静脈の圧排を認めることが多い1)ことが参考になる.

嵌頓内容としては小腸や大網が多く,虫垂は稀である.虫垂が嵌頓した大腿ヘルニアは,René-Jacques Croissant de Garengeotによって1731年にはじめて報告されたため,De Garengeot’s herniaという名前がつけられている2).鼠径ヘルニアに虫垂が嵌頓した場合は,Amyand’s herniaと呼ばれ,区別されている2).大腿ヘルニアでの虫垂嵌頓の素因としては,巨大盲腸,移動盲腸等が知られている3).CTでは冠状断や矢状断などMPR(multiplanar reconstruction)像の作成により,ヘルニア嚢内の虫垂の同定が容易になる.嵌頓した虫垂は膿瘍形成を起こすことがあり,造影CTで嵌頓した虫垂を注意深く確認することが重要である.

大腿ヘルニアの治療は鼠径ヘルニアに準じた手術を行う.嵌頓例で腸管切除を要する場合などは,自己組織で後壁補強を行う術式(McVay法など)を選択する.膿瘍を伴う場合はドレナージを優先し,その後で虫垂切除術とヘルニア根治術を行うこともある4)

大腿ヘルニアの嵌頓を診た際は,稀ではあるが虫垂が嵌頓することもありうることを念頭において画像診断をすることで,より正確な診断や治療が可能になると考えられる.

図1 来院時腹部・骨盤部造影CT(軸位断)
図2 来院時腹部・骨盤部造影CT(冠状断)
図3 大腿ヘルニアの発生部位

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文献

  1. Suzuki S, et al:Differentiation of Femoral Versus Inguinal Hernia:CT Findings. AJR Am J Roentgenol, 189:W78-W83, 2007
  2. Chung A & Goel A:Images in clinical medicine. De Garengeot's hernia. N Engl J Med, 361:e18, 2009
  3. Zissin R, et al:CT diagnosis of acute appendicitis in a femoral hernia. Br J Radiol, 73:1013-1014, 2000
  4. Watkins RM:Appendix abscess in a femoral hernial sac-case report and review of the literature. Postgrad Med J, 57:306-307, 1981
  5. Jamadar DA, et al:Sonography of inguinal region hernias. AJR Am J Roentgenol, 187:185-190, 2006

プロフィール

堤 啓(Kei Tsutsumi)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
松本 俊亮(Shunsuke Matsumoto)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
鈴木 孝司(Koji Suzuki)
けいゆう病院 放射線科
陣崎 雅弘(Masahiro Jinzaki)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
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