画像診断Q&A

レジデントノート 2015年8月号掲載
【解答・解説】抗菌薬が効かない重症腸炎?

Answer

劇症型アメーバ性腸炎

  • A1:第6病日のCTでは,盲腸から横行結腸脾弯曲部,直腸まで腸管壁の著しい肥厚を認める(図1〜3 [1][2][3]).壁の造影効果は一部途絶しており,腸管の壊死や潰瘍を考えたい.一方で,末梢の血管は保たれており,重症非閉塞性虚血性腸炎やアメーバ性を含む壊死性腸炎が鑑別にあがる.本症例ではCTの読影結果をうけて,再度,内視鏡検査時の生検標本を見直したところ,アメーバ嚢腫が見つかり,腸管の全層性壊死をきたした劇症型アメーバ性腸炎の診断となった.
  • A2:劇症型アメーバ性腸炎の治療はメトロニダゾールの投与が基本であり,かつその投与の有無が予後を大きく左右する可能性が示唆されている.

解説

アメーバ症は,主にEntamoeba histolyticaの嚢子に汚染された飲食物などの経口摂取によって,感染が成立する.感染者のうち4〜10%が有症状となり,肝膿瘍型と腸炎型に大別される.全世界で年間5,000万人が発症し,日本でも男性同性愛者の人口増加などにより,年々感染頻度が増加している1)

アメーバ性腸炎の好発部位は,直腸,S状結腸,盲腸,上行結腸である.通常型のアメーバ性腸炎のうち,3%が劇症型に移行し,急性壊死性大腸炎や中毒性巨大結腸症となり,穿孔することもある(図4).さらに,多臓器不全への移行や外科的加療による負荷も相まって,死亡率は65〜100%に至るとも言われている2).ところが,アメーバ症の診断は,便鏡検などでの虫体の証明や血清抗体検査のように診断率が必ずしも高くない検査によるところがあり3),まずは画像所見からアメーバ性腸炎を鑑別にあげることで,迅速な診断と予後の改善につながると思われる.

内視鏡所見では正常粘膜内に孤立性に散在するフラスコ型の潰瘍が特徴だが,劇症型では多彩な所見を示すことがある2)

CTでは,腸管の浮腫性変化による壁肥厚を認めるが,これは腸炎全般にみられる所見である.劇症型アメーバ性腸炎においては,加えて壁内ガス像がみられることが多いが3),依然として全層壊死をきたすほかの多くの重症腸炎との鑑別を要する.ただしそのなかでも,全結腸にわたり病変が進行する疾患は限られるため,潰瘍性大腸炎の全結腸型,全層壊死を伴う偽膜性腸炎,MRSA(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などの重症感染性腸炎などとともに,難治性の重症壊死性腸炎の原因として劇症型アメーバ性腸炎も鑑別にあげることが大切である.

図1 第6病日 腹部造影CT
図2 第6病日 腹部造影CT(図1より尾側)
図3 第6病日 腹部造影CT 冠状断
図4 第32病日 腹部造影CT

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文献

  1. Nagata N, et al:Risk factors for intestinal invasive amebiasis in Japan, 2003-2009. Emerg Infect Dis, 18:717-724, 2012
  2. 太田 竜,他:全大腸壊死をきたした劇症型アメーバ性大腸炎の治療経験.日本大腸肛門病会誌,65:393-398, 2012
  3. 加藤 昇,他:CTで著明な壁肥厚と壁内ガス像を示した劇症型アメーバ性大腸炎の1例.日救急医会誌,19:1107-1112, 2008

プロフィール

水島 圭(Kei Mizushima)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
松本 俊亮(Shunsuke Matsumoto)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
陣崎 雅弘(Masahiro Jinzaki)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
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