body packerとは,大麻やヘロイン,コカインなどをコンドームやラテックス,セロファンなどで包み,経口的,経腟的に体内に入れて運搬する人である.包装の大きさは経口的では 2cm以下であり,経腟的では4〜6cmと大きくなる1,2). 本症例の来院時腹部単純CT(図1→,図2→)では,包装された薬物が上行結腸~直腸内に楕円状の高吸収域として多数認められる. 診断に有用な検査としては,まず腹部単純X線写真があげられる.検査は簡易であり,感度は85〜90%と高い.ただし,便が多いと包装された薬物との境界が不明瞭になって偽陰性となる可能性がある1).次に腹部CTがあげられる.感度は95.6〜100%と高く,腹部単純X線写真では陰性だが体内の薬物が強く疑われる場合に施行される1).
腹部単純X線写真や腹部CTでは包装された薬物が楕円状の特徴的な像で描出され,tic-tac signといわれる(tic-tacとは世界的に発売されているラムネ菓子).
CTでは,一見便のように見えてもCTのウインドウレベル・ウインドウ幅を変えることによって包装された薬物と区別することができる1).また,薬物のdensityが不均一であることや外形が不整であることから包装のruptureを鑑別できることがある2).
腹部超音波検査も侵襲性が低く,簡易に施行でき陽性的中率は97.6%と高い.超音波検査では前方に包装による多層性の弓状高エコーを認め,後方へのacoustic shadowを認める.一方,便の場合は表面が不整である1,2).
治療方針は,薬物中毒症状がなければ基本は経過観察である.中毒症状があれば,胃内で摘出可能な場合は内視鏡による摘出を,そうでない場合は対応する拮抗薬投与,腸管洗浄を行う.重症の中毒の場合は開腹手術を行う3).
このように,麻薬犯罪が増加するなか,body packerに特徴的な画像所見を知ることは社会的,法医学的に重要である.
クリックして拡大