画像診断Q&A

レジデントノート 2015年10月号掲載
【解答・解説】腹痛を主訴に受診した50歳代男性.腹痛の原因は?

Answer

大網捻転(omental torsion)

  • A1:一見すると腸間膜の限局的な脂肪織混濁のように見えるが,頭側から尾側方向に追うと,脂肪織の内部を胃大彎側から連続する血管(大網枝)が通過していることに気づく(図1図2).病変は大網に存在している.
  • A2:その血管を取り巻く大網脂肪織は頭側から尾側のスライスにかけて回転しており,冠状断では認識しやすい(図3).大網脂肪織は捻転により梗塞,炎症をきたしていると考えられる.典型的な大網捻転と診断し,腹腔鏡下で壊死した大網の一部を切除した.患者は合併症なく退院となった.

解説

大網捻転は有名な疾患ではあるが,実際に見かけることは意外に少ない.一方で,一度見たら忘れないであろう,強烈な印象を与えてくれる.ディスプレイ上で連続画像を上下にスクロールすると,腹腔内にあたかも台風が現れたかのように「グルグル」と血管や脂肪織が回転して見えるからである.誌面掲載での限られた枚数ではわかりにくく,その点はご容赦いただきたい.

この所見自体は腸間膜軸捻転症や一部の絞扼性イレウスなど,その他の「捻転」を生じる疾患でも認められ,whirl signと呼ばれる有名なCT所見である.大事なことは「何が捻れているか」,すなわち血管の連続性を丁寧に追うことで,それが大網だと気づくことである.

大網捻転には特発性と続発性があり,後者の原因として鼠径ヘルニア,虫垂炎,Meckel憩室炎,種々の癒着を形成する病態,凝固亢進状態,右心不全に伴う静脈うっ滞などが報告されている1).肥満,咳嗽・腹部伸展などの運動が起因とも言われている2).本症例では大網の左鼠径ヘルニアを合併していたが(画像非掲載),術中所見では同部位に癒着はなく,原因ではないと判断された.

ピットフォールとして,大網が局所的に捻転するタイプは右下腹部に発症することが多いことを知っておく必要がある.その場合は臨床的には虫垂炎や憩室炎と,CT所見では腹膜垂炎と似ているため,注意深い読影を要する.局所の大網捻転の原因としては大網の形態異常や,肥満による大網脂肪織の分布異常が指摘されている2)

大網捻転の治療方針については多少議論があるようだが,少なくとも有症状の,ほぼ全体が捻転するタイプに対しては大網切除術が推奨されている3)現在であれば腹腔鏡下にて短時間で大網切除が可能であるため3),早期に適切な診断をすることですみやかな治療につなげたい.

図1 来院時腹部造影CT 軸位断(A からD へ尾側)
図2 来院時腹部造影CT 矢状断
図3 来院時腹部造影CT 冠状断

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文献

  1. 一色彩子, 佐藤秀一:捻転の画像診断 消化管・大網. 臨床画像, 29:1159-1186, 2013
  2. Park TU, et al:Omental infarction:case series and review of the literature. J Emerg Med, 42:149-154, 2012
  3. Nubi A, et al:Primary omental infarct:conservative vs operative management in the era of ultrasound, computerized tomography, and laparoscopy. J Pediatr Surg, 44:953-956, 2009

プロフィール

遠山 兼史(Kenji Toyama)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
松本 俊亮(Shunsuke Matsumoto)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
陣崎 雅弘(Masahiro Jinzaki)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
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