画像診断Q&A

レジデントノート 2015年11月号掲載
【解答・解説】下腹部痛で受診した20歳代男性.原因は?

Answer

小腸アニサキス症

  • A1:魚介類の生食歴.本症例では2日前に寿司を食べていた.
  • A2:来院時造影CTでは小腸の拡張(図1)と比較的大量の腹水(図2)を認める.拡張した腸管を肛門側に注意深く追っていくと,回腸に限局性の浮腫を伴った壁肥厚(図3)を認め,そこから口側腸管が拡張していることがわかる.CT所見と,魚介類の生食歴から小腸アニサキス症を疑い,後の採血で好酸球上昇,抗アニサキス抗体(IgG,IgA)陽性が確認され診断が確定された.

解説

消化管アニサキス症は虫体の中間宿主であるサバ,イカ,サケ,イワシ等の魚介類を生食したことで発症する消化管幼虫移行症である.感染源はサバが最も多い.

2001~2005年に行われた第2回全国集計報告1)では,消化管アニサキス症のうち最も罹患頻度が高い部位は胃(約93%)であり,ついで小腸が多いが比較的稀(約2.6%)である.

臨床的には,① Ⅲ型アレルギーが関与するとされる「劇症型」,② 死滅虫体を中心に肉芽腫を形成した「緩和型」の2つに分類される.「緩和型」は無症候性で偶然発見されることが多く,「劇症型」は腹痛・嘔気・腹部膨満感といった症状を呈する.小腸アニサキス症は内視鏡での虫体検出が困難であるため,血液検査による抗アニサキス抗体の検出が有用であるが,結果が出るまで数週間かかる.小腸アニサキス症は保存的加療で治癒することが多いが,疑われていないと絞扼性イレウスなどと診断され,手術に至る場合もある2).身体所見や画像所見から小腸アニサキス症を疑い,数日間の魚介類の生食歴を聴取することが重要となる.

小腸アニサキス症のCT所見は,① 腸管の限局性・全周性粘膜下浮腫(肥厚),② 小腸狭窄による口側腸管拡張,③ 比較的大量の腹水が特徴的3)である.これらの所見は,虫体が腸管に刺入し,粘膜下層に好酸球が浸潤するⅢ型アレルギーの機序4)を反映しているとされる.

小腸狭窄という点では腫瘍との鑑別を要するが,腫瘍では壁の層構造が破壊される傾向にあるのに対し,炎症では浮腫状の肥厚のため,壁の3層構造は保たれ,粘膜下層の浮腫により腸管壁中間層の低吸収域が全周性に厚くなるという像を呈する.

ほかの原因によるイレウスとの鑑別も難しいが,小腸の限局性・全周性粘膜下浮腫(肥厚)と腸管拡張,比較的大量の腹水を認め,症状のわりには炎症所見が軽微な場合は,魚介類の生食歴を聴取することが小腸アニサキス症の診断につながる.

図1 来院時腹部造影CT(冠状断像)
図2 来院時腹部造影CT(横断像)
図3  来院時腹部造影CT(横断像)

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文献

  1. 唐澤洋一,他:最近の消化管アニサキス症について―第2回全国集計報告―.日本医事新報,4386:68-74,2008
  2. 窪田忠夫,他:腸アニサキス症の早期診断について―5症例の検討から―.診断と治療,95:1099-1103,2007
  3. 田口奈留美, 他:消化管の画像診断.「わかる! 役立つ! 消化管の画像診断」(山下康行/編著),pp144-145,学研メディカル秀潤社,2015
  4. 石倉 肇:炎症性腸疾患の診察のポイント アニサキス症.臨牀消化器内科,6:1052-1060,1991

プロフィール

髙橋 侑那(Yukina Takahashi)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
松本 俊亮(Shunsuke Matsumoto)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
鈴木 孝司(Koji Suzuki)
けいゆう病院 放射線科
陣崎 雅弘(Masahiro Jinzaki)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
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