画像診断Q&A

レジデントノート 2015年11月号掲載
【解答・解説】高熱,咳嗽,喀痰を主訴に受診した60歳代男性

ある1年目の研修医の診断

右下肺野に腫瘤影があり,空洞を伴っているので肺癌が疑われます.CT検査や気管支鏡検査を行います.

Answer

肺化膿症

  • A1:右下肺野に辺縁不明瞭な浸潤影を認める(図1).内部にニボー(液面形成)を認め(),空洞の存在が疑われる.
  • A2:肺化膿症,肺癌,肺結核症などを鑑別として考え,喀痰検査や胸部CTを施行,また喀痰の性状や,齲歯の有無などを確認する.

解説

本症例は,肺化膿症の一例である.発熱・膿性痰などの自覚症状,空洞とニボーを伴う浸潤影が本症を疑うカギとなる.

空洞を伴う浸潤影あるいは腫瘤影を呈する疾患の鑑別として,肺化膿症,肺癌,肺結核症,肺クリプトコッカス症,多発血管炎性肉芽腫症(Wegener肉芽腫症)などがあげられるが,各種腫瘍マーカーは陰性で,インターフェロンγ遊離試験(T-SPOT® TB),ANCA,クリプトコッカス抗原はいずれも陰性であった.以上の結果に,空洞内にニボーを伴うことを併せると,肺化膿症を第一に考える.

肺化膿症は,細菌性化膿性炎症により肺実質が壊死をきたし,空洞を形成し空洞内に膿の貯留を認める疾患である.感染経路は,① 経気道感染:口腔内常在菌の誤嚥,② 血行性感染:感染性心内膜炎や感染性静脈炎などからの血行性播種,③ 隣接臓器からの炎症の波及,の3つの経路があるが,①が大部分を占める.起炎菌は嫌気性菌が多く,その他ブドウ球菌,大腸菌,肺炎桿菌や,口腔内常在菌であるStreptococcus milleri groupなどが分離頻度が高い.危険因子として,糖尿病,歯周病,アルコール多飲,上部消化管手術,反復する誤嚥などがあげられる.症状は,発熱,咳嗽,喀痰,胸痛などがみられ,空洞形成時には膿性痰や血痰を伴い,嫌気性菌感染では腐敗臭のある喀痰を認める.空洞をきたす疾患として肺癌,なかでも扁平上皮癌,また肺結核症との鑑別が重要であるが,陰影の周囲の変化や空洞内の読影が鑑別の手がかりとなる.周囲に散布性の粒状影を伴う場合は肺結核症を疑い,腫瘤の辺縁にnotch,spiculaなどがみられ,空洞内壁に凹凸が目立つ場合は肺癌を疑う.内壁が比較的平滑で,ニボーを伴う場合は肺化膿症を考える.ただし肺癌などの空洞内に細菌感染を合併した場合もニボーを伴うので注意を要する.

本症例の胸部CT(図2)では,右中葉に心膜に広く接して浸潤影を認め,その周囲にはすりガラス影,内部には空洞を伴っている.空洞内にニボーがみられ,空洞内壁は比較的平滑である.周囲には散布性の粒状影は認めない.

喀痰検査は常在菌のみで,細胞診検査も異常なしであった.糖尿病の既往や飲酒歴はなく,誤嚥のエピソードもないが,未治療の齲歯を有していた.肺化膿症と診断し,スルバクタム・アンピシリン投与を開始,順調に改善が得られた.

図1 来院時胸部単純X 線写真
図2 胸部CT(肺野条件)

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プロフィール

笠井 昭吾(Shogo Kasai)
東京山手メディカルセンター 総合内科
徳田 均(Hitoshi Tokuda)
東京山手メディカルセンター 呼吸器内科
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