画像診断Q&A

レジデントノート 2015年12月号掲載
【解答・解説】咳嗽を主訴とした60歳代男性

Answer

肺非結核性抗酸菌症(Mycobacterium gordonae)の一例

  • A1:胸部X線像では右上肺野に壁の肥厚した空洞影がみられる(図1).胸部CT像では右上葉に空洞影がみられ,空洞壁は肥厚している(図2).
  • A2:抗酸菌を含めた喀痰検査を行う.診断がつかない場合には気管支鏡検査を行う.結核菌,非結核性抗酸菌の検査,アスペルギルスなどの血清抗体検査を施行する.
  • A3:多剤併用抗菌薬治療,手術による治療を行う.

解説

肺の基礎疾患がある患者で,長引く呼吸器症状を呈し,画像所見の増悪,炎症性マーカーの上昇を認め,一般抗菌薬に反応しない症例は,呼吸器疾患の診療でしばしば遭遇する.このような場合は慢性感染症をきたす疾患,つまり抗酸菌感染症,アスペルギルスをはじめとする深在性真菌症,あるいは悪性腫瘍を鑑別にあげる必要がある.

本症例では,転院後喀痰培養検査をくり返し行い,気管支鏡検査を施行した.気管支洗浄液培養と喀痰培養でM.gordonaeが同定され,肺非結核性抗酸菌症と診断した.抗アスペルギルス沈降抗体検査は陰性であり,培養検査でアスペルギルスが同定されなかったことから,アスペルギルス感染の合併はないと判断した.

近年,肺非結核性抗酸菌症は増加しており,本邦の罹患率は人口10万人対6人以上と推定され,国際的に最も高い水準である.起因菌はM.avium complex(MAC)が約8〜9割を占め,次にM.kansasiiが1〜2割,M.gordonaeを含めたそのほかの菌は稀である.結核菌と異なり非結核性抗酸菌は環境中に常在する菌であり,ヒトの検体から一度検出したからといって直ちにそれを起因菌として確定診断することは問題である.肺感染症と診断するには喀痰での複数回の培養陽性,もしくは気管支洗浄液での培養陽性を必要条件としている.最近では肺MAC症の補助診断として抗MAC抗体の測定も行われる.

肺非結核性抗酸菌症の治療は薬物療法が基本であり,クラリスロマイシン,リファンピシン,エタンブトールの多剤併用療法を軸に,重症例ではアミノグリコシド系抗菌薬を加えるというのが国際的に一致した見解である.しかし,薬剤感受性のよいM.kansasii以外の菌種が起因菌の大半を占めているために,治療に難渋することはしばしばある.薬物療法に抵抗性の症例に対しては,外科的治療を組合わせる集学的治療が重要とされ,日本結核病学会も外科治療指針を発表している1).薬物療法によって菌の陰性化が得られる場合は6カ月以内のことが多いが,その期間で菌の陰性化が得られない場合や画像上病巣の悪化を認める場合,排菌が停止しても空洞性病巣や気管支拡張病変が残存して再発再燃が危惧される場合などでは外科的治療を考慮すべきである.本症例ではクラリスロマイシン1回400mg 1日2回,リファンピシン1回450mg 1日1回,エタンブトール1回625mg 1日1回の多剤併用療法を6カ月間行った後も,排菌はなくなったものの壁の肥厚を伴う空洞影が残存した.再発再燃が危惧されたため,他院で右上葉切除を行った.術後経過は良好である.

図1 xxxxxxxx
図2 xxxxxxxx

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文献

  1. 日本結核病学会非結核性抗酸菌症対策委員会:肺非結核性抗酸菌症に対する外科治療の指針.結核,83:527-528, 2008

プロフィール

芳賀 高浩(Takahiro Haga)
日産厚生会玉川病院 呼吸器科
山口 哲生(Tetsuo Yamaguchi)
新宿海上ビル診療所
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