画像診断Q&A

レジデントノート 2016年1月号掲載
【解答・解説】肝移植後の発熱

Answer

移植後リンパ増殖性疾患(post-transplant lymphoproliferative disorder:PTLD)

  • A1:回腸末端から回盲弁付近まで壁肥厚を認める(図1図2図3).壁肥厚は腫瘤様であるが,軟らかいため腸閉塞はきたさず,拡張している(aneurysmal dilatation).周囲脂肪織の混濁から炎症の合併を考える.
  • A2:aneurysmal dilatationを認めるため,癌ではなく悪性リンパ腫を疑う.下部内視鏡下で生検し,悪性リンパ腫と診断された.肝移植後であることからPTLDと考えられた.

解説

PTLDは移植後患者に発生するリンパ腫である.移植後の免疫不全状態を基盤に発生し,EBウイルスの関与も報告されている1).移植後1年以内の発生が多いが,5年以上の晩発例も含まれる.晩発例には薬剤による二次的リンパ腫も含まれるとされる2).PTLDの発生率は心・肺,腸管移植後で約10%,腎移植後で約1%と報告されている.肝移植後の発生率は1〜3%で,部位は消化管が約25%であり,そのうち小腸が50%,右結腸/回腸末端部が31%と報告されている1).消化管PTLDの症状は,腹痛が最も多く,慢性下痢,消化管出血が続くが,特異的な症状はなく,本症例のように発熱のみで発見されることもある.免疫抑制薬の中止や減量,抗CD20モノクローナル抗体や化学療法への治療反応が高いとされる.稀に腸閉塞,消化管穿孔,消化管出血をきたし,緊急手術を要する例もある1)

癌では癌細胞が浸潤する際に間質で線維芽細胞等が増生する(desmoplastic reaction)ため,狭窄をきたす3).本症例では腸閉塞を認めず,拡張(aneurysmal dilatation)を認めた.悪性リンパ腫では,粘膜下腫瘤が壁肥厚をきたした後,軟らかいため最終的に決潰することによって,内腔が拡張するとされている(図44).ほか,自律神経叢への腫瘍浸潤が原因という説もある5).aneurysmal dilatationを認めた場合は,悪性リンパ腫を鑑別にあげることが重要である.ほかのびまん性浸潤性病変では非特異的腸管壁肥厚を呈し,癌との鑑別が困難である.

aneurysmal dilatationを認めた場合は悪性リンパ腫を鑑別にあげ,移植後にはPTLDという合併症があることを知っておきたい.

図1 来院時腹部造影CT軸位断
図2 来院時腹部造影CT冠状断
図3 来院時腹部造影CT矢状断
図4 aneurysmal dilatation

クリックして拡大

文献

  1. Cruz RJ Jr, et al:Surgical management of gastrointestinal posttransplant lymphoproliferative disorders in liver transplant recipients. Transplantation, 94:417-423, 2012
  2. 「最新・悪性リンパ腫アトラス(第1版)」(菊池昌弘,森 茂郎/著),p295,文光堂,2004
  3. 木村隆輔,藤盛孝博:DR(desmoplastic reaction).胃と腸,47:825,2012
  4. 「腹部CT診断学(第2版)」(藤田信行/著),pp376-383,中外医学社,2000
  5. Maizlin ZV, et al:Case of the season:aneurysmal dilatation of the small bowel (not only lymphoma). Semin Roentgenol, 41:248-249, 2006

プロフィール

大山 景子(Keiko Oyama)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
松本 俊亮(Shunsuke Matsumoto)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
陣崎 雅弘(Masahiro Jinzaki)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
サイドメニュー開く

TOP