PTLDは移植後患者に発生するリンパ腫である.移植後の免疫不全状態を基盤に発生し,EBウイルスの関与も報告されている1).移植後1年以内の発生が多いが,5年以上の晩発例も含まれる.晩発例には薬剤による二次的リンパ腫も含まれるとされる2).PTLDの発生率は心・肺,腸管移植後で約10%,腎移植後で約1%と報告されている.肝移植後の発生率は1〜3%で,部位は消化管が約25%であり,そのうち小腸が50%,右結腸/回腸末端部が31%と報告されている1).消化管PTLDの症状は,腹痛が最も多く,慢性下痢,消化管出血が続くが,特異的な症状はなく,本症例のように発熱のみで発見されることもある.免疫抑制薬の中止や減量,抗CD20モノクローナル抗体や化学療法への治療反応が高いとされる.稀に腸閉塞,消化管穿孔,消化管出血をきたし,緊急手術を要する例もある1).
癌では癌細胞が浸潤する際に間質で線維芽細胞等が増生する(desmoplastic reaction)ため,狭窄をきたす3).本症例では腸閉塞を認めず,拡張(aneurysmal dilatation)を認めた.悪性リンパ腫では,粘膜下腫瘤が壁肥厚をきたした後,軟らかいため最終的に決潰することによって,内腔が拡張するとされている(図4)4).ほか,自律神経叢への腫瘍浸潤が原因という説もある5).aneurysmal dilatationを認めた場合は,悪性リンパ腫を鑑別にあげることが重要である.ほかのびまん性浸潤性病変では非特異的腸管壁肥厚を呈し,癌との鑑別が困難である.
aneurysmal dilatationを認めた場合は悪性リンパ腫を鑑別にあげ,移植後にはPTLDという合併症があることを知っておきたい.
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