画像診断Q&A

レジデントノート 2016年2月号掲載
【解答・解説】発熱,胸痛を主訴に来院した20歳代男性

ある1年目の研修医の診断

発熱,胸痛を伴い,胸部単純X線写真にて左下葉に浸潤影を伴うことから,細菌性肺炎,胸膜炎と診断する.血液培養や痰培養の採取を行う.

Answer

抗リン脂質抗体症候群に伴う肺梗塞

  • A1:胸部単純X線写真にて左下肺野に浸潤影を認める(図1).陰影は横隔膜とシルエットサイン陽性で肋骨横隔膜角に及ぶことから,病変は肺底区全体に広がっていることがわかる.APTT単独延長,尿タンパク(3+)より,基礎疾患に抗リン脂質抗体症候群(anti-phospholipid antibody syndrome:APS)〔特にSLE(systemic lupus erythematosus:全身性エリテマトーデス)に伴う続発性APS〕の存在が背景に示唆される.肺炎+胸膜炎をまず考えるが,発熱に先行する胸痛や労作時呼吸困難などの病歴や血栓素因の存在を疑うことから,肺梗塞を鑑別すべきである.
  • A2:次に必要な検査は造影CTである.胸部造影CTにて左下葉に浸潤影を認め,左下葉の肺動脈の造影欠損が明らかである(図23).末梢に浸潤影を伴い肺梗塞に至っていると思われた.その後追加の血液検査にて,lupus anticoagulant陽性が判明し,抗リン脂質抗体症候群に伴う肺梗塞であることが判明した.

解説

前日に当直の研修医が診察し,当直帯では単純X線写真のみであったため,肺炎,胸膜炎との診断で翌日筆者の外来に紹介となった患者である.あらためて病歴をとり直してみると2週間前から胸部の違和感や労作時呼吸困難が先行し,その後しばらくして胸痛,発熱をきたしていることが判明した.細菌性の胸膜炎であれば発熱,胸痛が先行しその後に労作時呼吸困難が出現することが多いことや,若年者であれば,比較的数日の経過で急激に病状が完成することが多いことから,症状の出現順序や,やや経過が長い点に違和感をもった.肺梗塞も鑑別にあげ,造影CTを撮影したところ,左下葉の肺動脈の造影欠損を確認し肺梗塞の診断に至った.

肺梗塞と診断した場合は,基礎疾患の検索が必要である.AT-Ⅲ(antithrombin Ⅲ)欠損症やproteinC,proteinS欠損症,抗リン脂質抗体症候群などの血栓素因の検索や直近の外傷歴の聴取を追加し,場合によっては悪性腫瘍の検索が必要となる場合がある.本症例は後日さらなる検索にてSLEに伴う続発性抗リン脂質抗体症候群であることが判明した.抗凝固療法と膠原病科にてステロイド導入が図られ,血栓は溶解し,経過良好である.

図1 胸部単純X線写真
図2 胸部造影CT肺野条件
図3 胸部造影CT縦隔条件

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プロフィール

北村 淳史(Atsushi Kitamura)
聖路加国際病院 呼吸器内科
山口 哲生(Tetsuo Yamaguchi)
新宿海上ビル診療所
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