画像診断Q&A

レジデントノート 2016年3月号掲載
【解答・解説】腹痛を主訴に受診した60歳代女性

Answer

左傍十二指腸ヘルニア(left paraduodenal hernia)

  • A1:左側腹部に一塊となった拡張した小腸を認める.小腸は嚢状の構造物(sac:図12に相当)に包まれているように見え,sacの腹側には下腸間膜静脈〔(inferior mesenteric vein:IMV),図1〕が存在する.つまり拡張した小腸は下行結腸間膜の背側に潜り込んでいることがわかる.
  • A2:拡張した腸管の右側には腸間膜脂肪織や脈管が収束している様子を認め,この部分をヘルニア門(図12)として下行結腸間膜の背側(閉鎖腔)に脱出していることがわかる.典型的な左傍十二指腸ヘルニアの所見と考える.

解説

腹膜もしくは間膜の裂隙,陥凹部,腹膜の欠損部を介して腹腔内臓器(主として腸管)が脱出する現象を内ヘルニアとよぶ1).脱出する解剖学的部位により,数種類に分類されている.小腸イレウスの原因のうち6%以下ではあるが,自然な解除が期待しにくいという点で重要2)である.

Dr.Meyersの著書によると,内ヘルニア中では左傍十二指腸ヘルニアは最多(40%)と報告されている2).原因は胎生期に生じた十二指腸・下行結腸間膜・壁側腹膜の癒合不全によりLandzert窩とよばれる腹膜欠損部が生じ,それをヘルニア門として腸管が脱出することである(図33).この欠損孔は,下行結腸間膜根部の背側にあるため,この病態ではIMVは腹側に圧排されて見える.

本疾患のCTでの特徴は以下の3つである.

  • ①拡張した腸管全体がヘルニア嚢に包まれている(sac-like appearance)
  • ②IMV(もしくは左結腸動脈の上行枝でもよいが,通常はIMVの方が同定しやすい)の背側に存在する
  • ③ヘルニア門と思われる脈管の収束像(vascular pedicle)を認める

治療としては手術によりヘルニア内容の整復およびヘルニア門の閉鎖を行う.以前は開腹手術で行っていたが,最近は腹腔鏡下での整復についての報告も多い4).本症例では当院にて緊急腹腔鏡下小腸整復術+ヘルニア門縫縮術が施行され,腸管切除をすることなく手術を終え,合併症なく退院となった.急性腹症全般にいえることではあるが,CTでの正確かつ迅速な術前診断により,腸切除の回避につながる.

図1 来院時腹部単純CT 軸位断
図2 来院時腹部単純CT 冠状断
図3 左傍十二指腸ヘルニア模式図

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文献

  1. 竹山信之,他:消化管閉塞 2.内ヘルニア.「特集 消化管救急疾患の画像診断」,画像診断, 32:1403-1415, 2012
  2. Meyers MA:Internal Abdominal Hernias. 「Meyer’s Dynamic Radiology of the Abdomen; Normal and Pathologic Anatomy. 6th ed.」(Meyers MA, et al, eds.),pp381-409, Springer, 2011
  3. Martin LC, et al:Review of internal hernias:radiographic and clinical findings. AJR Am J Roentgenol, 186:703-717, 2006
  4. Finck CM, et al:A novel diagnosis of left paraduodenal hernia through laparoscopy. Surg Endosc, 14:87, 2000

プロフィール

遠山 兼史(Kenji Toyama)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
松本 俊亮(Shunsuke Matsumoto)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
陣崎 雅弘(Masahiro Jinzaki)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
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