画像診断Q&A

レジデントノート 2016年4月号掲載
【解答・解説】若年女性の下腹部痛

Answer

異所性妊娠(右卵管)破裂

  • A1:右付属器領域に,辺縁に強い造影効果を伴う低吸収(図1図2 )を認め,胎嚢と思われる.周囲に経時的に広がる造影剤漏出(図1図2 )も伴っている.骨盤内にとどまらず,肝表面まで及ぶ大量の高吸収の腹水を認め,血性腹水(図3)と考えられる.子宮内膜は肥厚しており(図4 ),妊娠によるものと考えられる.
  • A2:妊娠反応陽性,ショック状態であることと合わせて右卵管妊娠の破裂による大量の腹腔内出血と考えられた.緊急手術で右卵管峡部妊娠の破裂が確認された.

解説

異所性妊娠とは子宮体部内膜以外の場所で起こる妊娠のことをさし,自然妊娠の1〜2%に生じる.そのうち98 %が卵管妊娠(卵管膨大部妊娠:73%,峡部妊娠:23%,間質部妊娠:4%)である1).そのほか,子宮頸管や腹膜に生じることもある.

生殖補助医療下では異所性妊娠が全体の4%程度に生じると言われており,自然妊娠の約2〜3倍となる.稀に子宮内外同時妊娠もあり,自然妊娠では0.003~0.007%に対して,生殖補助医療による妊娠では0.15~1%前後が子宮内外同時妊娠になると報告されている.そのため生殖補助医療による妊娠の場合は子宮腔内に妊娠を確認しても異所性妊娠の合併を否定できない点に注意が必要である2,3)

異所性妊娠の画像診断のポイントとしては,妊娠反応陽性と子宮内に胎嚢がないことを前提に,以下を確認することが重要である.

  • 子宮内膜肥厚や腹腔内出血は異所性妊娠を示唆する.妊娠可能な女性の急性腹症で腹腔内出血を認めた場合,卵巣出血との鑑別が重要となるが,卵巣出血では子宮内膜肥厚は認めない
  • 卵管着床後,絨毛膜絨毛と栄養膜が卵管壁に侵入する際に卵管出血が生じるので,卵管留血腫を認めた場合,卵管に胎嚢を認めなくても,卵管妊娠を疑う4)
  • 胎嚢の絨毛組織は血流が豊富であり早期に濃染されるので,CTやMRIを行うときは胎嚢が同定しやすくなるようdynamicで造影検査を施行する5,6)

異所性妊娠は急性腹症を呈す可能性がある婦人科領域の救急疾患のなかで代表的なものであり,妊娠可能な女性の腹痛をみたら本疾患を疑う必要がある.異所性妊娠の破裂では大量出血で妊婦死亡を招く可能性があるので,画像所見を熟知し,迅速に対応する必要がある.

図1 腹部造影CT 早期 図2 腹部造影CT 平衡相 図3 腹部造影CT 平衡相 冠状断像 図4 腹部造影CT 平衡相 矢状断像

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文献

  1. 「産婦人科の画像診断」(田中優美子/著),金原出版,2014
  2. Clayton HB, et al:Ectopic pregnancy risk with assisted reproductive technology procedures. Obstet Gynecol, 107:595-604, 2006
  3. Svare J, et al:Heterotopic pregnancies after in-vitro fertilization and embryo transfer--a Danish survey. Hum Reprod, 8:116-118, 1993
  4. Parker RA 3rd, et al:MR imaging findings of ectopic pregnancy:a pictorial review. Radiographics, 32:1445-1460, 2012
  5. 「腹部のCT 第2版」(平松京一/監,栗林幸夫,他/編),メディカル・サイエンス・インターナショナル,2010
  6. Yamashita Y, et al:Unruptured interstitial pregnancy:a pitfall of MR imaging. Comput Med Imaging Graph, 19:241-246, 1995

プロフィール

榎本悠里(Yuri Enomoto)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
松本俊亮(Shunsuke Matsumoto)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
陣崎雅弘(Masahiro Jinzaki)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科

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