画像診断Q&A

レジデントノート 2016年5月号掲載
【解答・解説】発熱,乾性咳嗽,呼吸困難で受診した20歳代女性

ある1年目の研修医の診断

両肺に広範な浸潤影があって,炎症反応も高いので,肺炎球菌性肺炎でしょうか?

Answer

急性好酸球性肺炎の一例

  • A1:両肺に広範なすりガラス陰影を認め,右胸水貯留が疑われる.右中下肺野胸膜側にKerley B line(図1)を認める.
  • A2:急性好酸球性肺炎を疑い,喫煙歴に関しての詳細な医療面接,胸部CT,気管支鏡検査・気管支肺胞洗浄を行う.

解説

急性好酸球性肺炎(acute eosinophilic pneumonia:AEP)の典型例である.喫煙歴を有する若年成人,3日という急性の経過での発症,胸部単純X線での広範なすりガラス陰影と胸水貯留などより,AEPを第一に疑う.

AEPは,1989年にAllenらにより提唱された疾患概念である.発熱・呼吸困難を初発症状として,高度の低酸素血症を呈し,胸部単純X線写真では広範なすりガラス陰影あるいは浸潤影,Kerley A,B line,胸水貯留が特徴であり,CTではすりガラス陰影に加え,小葉間隔壁の肥厚が特徴である.診断基準は,① 1週間以内の急性の発熱,② PaO2 60 Torr未満の低酸素血症,③ 胸部単純X線写真上のびまん性陰影,④ 気管支肺胞洗浄(bronchoalveolar lavage:BAL)にて好酸球比率25%以上,⑤ 寄生虫,真菌その他の感染症がない,⑥ 気管支喘息,その他アレルギー疾患の既往がない,⑦ ステロイドが奏効する,とされる.

発症原因として喫煙との関連が多く報告されている.10歳代後半〜20歳代の若者に多く,喫煙開始あるいは禁煙後喫煙再開1カ月以内に発症する症例が多い.喫煙以外の原因としては,火災現場での煙の吸入,受動喫煙,線香の煙の吸入による発症報告などもある.

末梢血好酸球数は,発症初期は正常範囲であることが多く,無治療の場合1週間ほど遅れて増加がみられる.治療後の再発は通常みられないとされるが,喫煙再開にて再発が確認された例もみられる.なお,薬剤性肺障害の1病型としてAEPと同様の病像を呈するパターンがあるが,厳密にはAllenの疾患概念には含まれないため,「AEP様の薬剤性肺障害」などと表現するのが一般的である.

本症例では,発症の10日ほど前に喫煙を開始していたことが医療面接で判明した.胸部CT(図2)では広範なすりガラス陰影と小葉間隔壁の肥厚()が目立ち,両側胸水()も認める.AEPを強く疑いBALを施行した結果,細胞数6.5×105/mL,細胞分画にて好酸球60%と好酸球増加を認めた.短期間のステロイド治療で改善が得られ,禁煙を指導し,その後の再発はみられていない.

図1 図2

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プロフィール

笠井昭吾(Shogo Kasai)
東京山手メディカルセンター 総合内科
徳田 均(Hitoshi Tokuda)
東京山手メディカルセンター 呼吸器内科
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