胸部単純X線写真にて両側下肺野に浸潤影を認める.肺炎を疑う.次に必要な検査は喀痰や血液などの培養検査である.場合によってはCTを撮影する.
気管支鏡にて右B9より行った経気管支肺生検の病理写真を図3に示す.低分化adenocarcinoma を認め,carcinoma周囲に肉芽が形成されており血管腔を閉塞していた.adenocarcinomaは血管内にあり腫瘍塞栓が考えられた.周囲の血管内に肉芽がみられることから,pulmonary tumor thrombotic microangiopathy(PTTM)が考えられた.免疫染色の結果,卵巣がんからの転移と診断され,CTで認められた肺野の楔状影は腫瘍塞栓による肺梗塞であった可能性が示唆された.
PTTMは1990年にHerbayらによって提唱された比較的新しい疾患概念である.血管内を腫瘍が塞栓することによりさまざまな凝固因子などを介し,血管内膜を線維性に肥厚させ,肺高血圧が進行する病態である.剖検ではじめて見つかることも多く,予後不良である.本症例は心エコーにて肺高血圧は認められなかったが,全身状態より抗悪性腫瘍薬の適応になく,患者の希望もあり,在宅酸素を導入し自宅退院となった.
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