画像診断Q&A

レジデントノート 2016年6月号掲載
【解答・解説】卵巣がん治療中に労作時呼吸困難を主訴に来院した60歳代女性

ある1年目の研修医の診断

胸部単純X線写真にて両側下肺野に浸潤影を認める.肺炎を疑う.次に必要な検査は喀痰や血液などの培養検査である.場合によってはCTを撮影する.

Answer

PTTM(pulmonary tumor thrombotic microangiopathy)

  • A1:胸部単純X線写真にて両側下肺野に横隔膜とシルエットサイン陰性となる浸潤影を認める(図1).右乳房切除術後でエキスパンダーが入っている.症状の出現が2カ月前と比較的亜急性である点や発熱などの感染症状を欠いていることから,感染性肺炎ではなく,そのほかの疾患も鑑別に入れる必要がある.
  • A2:次に必要な検査は胸部CT検査である.胸部CTにて左右下葉に浸潤影と周囲にスリガラス影を認め,特に右下葉は楔状影となっていた(図2).薬剤性肺障害(器質化肺炎パターン)などの間質性肺炎や,転移性肺腫瘍を鑑別にあげ,組織検査が必要と考えられたため,気管支鏡検査を予定した.

解説

気管支鏡にて右B9より行った経気管支肺生検の病理写真を図3に示す.低分化adenocarcinoma を認め,carcinoma周囲に肉芽が形成されており血管腔を閉塞していた.adenocarcinomaは血管内にあり腫瘍塞栓が考えられた.周囲の血管内に肉芽がみられることから,pulmonary tumor thrombotic microangiopathy(PTTM)が考えられた.免疫染色の結果,卵巣がんからの転移と診断され,CTで認められた肺野の楔状影は腫瘍塞栓による肺梗塞であった可能性が示唆された.

PTTMは1990年にHerbayらによって提唱された比較的新しい疾患概念である.血管内を腫瘍が塞栓することによりさまざまな凝固因子などを介し,血管内膜を線維性に肥厚させ,肺高血圧が進行する病態である.剖検ではじめて見つかることも多く,予後不良である.本症例は心エコーにて肺高血圧は認められなかったが,全身状態より抗悪性腫瘍薬の適応になく,患者の希望もあり,在宅酸素を導入し自宅退院となった.

図1 図2 図3

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プロフィール

北村淳史(Atsushi Kitamura)
聖路加国際病院 呼吸器内科
山口哲生(Tetsuo Yamaguchi)
新宿海上ビル診療所
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