画像診断Q&A

レジデントノート 2016年8月号掲載
【解答・解説】1カ月前から続く咳嗽と左胸痛を主訴に 来院した60歳代男性

ある1年目の研修医の診断

胸部単純X線写真にて左中下肺野縦隔側に空洞を伴う病変を疑う.胃泡の影響か左横隔膜の挙上を認める.肺炎などの感染症を疑うため,次に必要な検査は喀痰や血液などの培養検査である.場合によってはCTを撮影する.結核も鑑別にあげる必要があるので喀痰抗酸菌塗抹結果が判明するまで空気感染対策を講じる必要がある.

Answer

有瘻性膿胸,肺膿瘍(Streptococcus anginosus感染症)

  • A1:胸部単純X線写真にて左肺野縦隔側に空洞性病変を認める(図1).左下肺野にairを認める(図1).次に必要なのは病変の局在の確認や病態把握のためのCTである.
  • A2:胸部単純X線写真でのに相当する箇所にCTにて左S6の肺内に空洞を伴う病変(図2図4)と,胸腔内に胸水(図3図4)とair(図3図4)を確認した.単純X線写真のair(図1)は図3図4でのに相当する. 胸腔穿刺にて膿性の胸水を確認し,膿胸の診断となった.図2図4は肺内であり,肺膿瘍が疑われた.胸水中にair(図3図4)があることから,おそらく糖尿病を背景とした,急性の気道感染症状を伴っていたため,肺膿瘍が胸腔内に穿破し,有瘻性膿胸をきたしたものと考えられた.喀痰の抗酸菌塗抹は陰性であった.

解説

Streptococcus anginosusStreptococcus milleri groupに属する菌であり,呼吸器感染症においても肺炎,肺膿瘍および膿胸などの起炎菌となることが知られている.喫煙者,基礎疾患を有する患者および免疫力の低下した患者に発症しやすく,嫌気性菌との混合感染が多い,といった臨床的特徴が報告されている.本症例も糖尿病を背景として発症した.

胸水中にairが認められる時点で,肺内(気管内)と胸腔内の瘻孔があるものとしてよい.直ちに胸腔穿刺で胸水の性状を確認し,膿胸であれば有瘻性膿胸の診断となる.有瘻性膿胸は迅速な対応を要する緊急疾患である.胸腔内の膿性の内容物が瘻孔を介し健側肺に大量に流れ込んだ場合には,急激な酸素化低下を伴いARDS(acute respiratory distress syndrome:急性呼吸窮迫症候群)となって挿管,人工呼吸管理が必要となる場合がある.

本症例は,胸腔穿刺で膿性の胸水を確認した後,直ちに胸腔ドレーンを挿入し排液した.抗菌薬投与を継続し,幸い第7病日でドレーンからの気漏は停止し,瘻孔は塞がったものと判断した.排液の減少と炎症所見の改善が得られたため,第14病日にドレーンを抜去とした.経過にて気漏が停止しない場合は,気管支内視鏡下で気管内から気漏の責任気管支に塞栓子を挿入したり,外科的に気漏を閉鎖したりする処置が必要となる場合がある.

図1 胸部単純X 線写真(座位 AP 像) 図2 胸部単純CT 図3 胸部単純CT(図2 より尾側) 図4 胸部単純CT(冠状断像)

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プロフィール

北村淳史(Atsushi Kitamura)
聖路加国際病院 呼吸器内科
山口哲生(Tetsuo Yamaguchi)
新宿海上ビル診療所
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